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24話
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私達がこのボス部屋に入った瞬間こちらを見てきた三体のホブゴブリン
剣を持つもの、魔法の杖を持つもの、弓矢を持つもの…それぞれ自身の技能にあった武器を装備しており先程まで戦っていたゴブリンなんて比べ物にならない。
「なるほどホブゴブリンか…
あいつらは先程のゴブリンとは比べ物にならん程の知能を持つと言われているが、冷静になれば奴らの攻撃も対処出来る。
カナ、お前があの剣を持ってるやつを相手しろ」
ツキカゲはいつも相手の行動や能力、生態などをしっかりと見てその場で作戦を立てる
そしてそれは勝利のビジョンが鮮明に浮かび上がっている証拠でもあるのだ。
私はこの世界で生きている上でいつもそれに助けられている
それに従う以外に考えはない
「ツキカゲの指示なら喜んで聞く…最速で倒すわよ!」
「そんなの言わなくてもわかってる…!」
桜を連想させるハルカゼをしっかりと握り地面を蹴ると一瞬で剣を持つホブゴブリンの懐に潜り込んだ。
ゴブリンから発せられる不快な臭いに苛立ちを覚えながらもなんとか耐えて急所を狙って切りつける
ぎゃああああぁぁあああ!!
汚らしい豚のような叫び声と血の匂いに笑を零し踊るように剣を振るい相手に隙を与えないようにその体を切り刻んだ。
予想よりも呆気なく終わった戦いにため息をついてハルカゼについた血を拭き取り
周りの様子を見ればツキカゲもあの1番厄介そうな魔法使いのホブゴブリン一撃で仕留めていた。
そして若葉達は苦戦しているがなんとか押しているようだ。
ツキカゲには手を出すなと言われているし邪魔にならない部屋の隅で体育座りでもしよう。
それにしても…だ
何度も彼らのことを若葉達と呼んでいるが私もそこまで変わらないと思う
私だって冒険者になって2ヶ月経った位の若葉の中の若葉だからな。
「きゃっ…!」
「アルルッ!!」
魔法使いのアルルちゃんに向けられたホブゴブリンの強烈な一撃を庇い代わりに傷を負う狙撃手のオーラくん。
個人的にはオーラくんと弓矢を持ったホブゴブリンの狙撃対決を見たかったものだ……なんて流暢なことを言っている場合ではない。
彼らを助けなければ
遠く離れた彼らの元に飛んでいくと私はいくつもの矢を放ったホブゴブリンの姿を確認した
そして深手を負ったオーラくんの前に立ち飛んできた矢を全てハルカゼで弾いて彼らに視線を移すことなく話しかける
「まったく…自分の身を呈して好きな子を守るのはいいけどそれは時に狙撃手としての腕を落とすことになるわよ…」
私は全て見ていたのだ
彼らに出会ってから見た恋愛関係とかそういうのを
オーラくんはアルルちゃんが好きでアルルちゃんはそれに全く気づいてない様子なところだったり
先程アルルちゃんを助けようとオーラくんが前に出て攻撃を受けた時にそれが腕に当たったことだったり…。
そしてそれはキュールちゃんとエルムくんにも言えることだ。
「エルムさん!」
ほら、キュールちゃんが傷を負ったエルムくんになにも考えずに近づいて傷の手当をしようとしてるでしょ?
そういう子は1番敵に狙われるの
なにも考えずに突っ走ったキュールちゃんに気づいた後のホブゴブリンの行動は早かった。
あっという間に距離を縮め手に持つ弓を剣のように振り下ろしたのだ。
やはりゴブリンはゴブリン…知能は低くて弓を射撃以外にも使おうとするなんて
……と呑気なことを考えてる暇は無さそうだ
先程と同じようにホブゴブリンの攻撃をハルカゼで防ぐとそのまま弓を真っ二つに切り相手の喉仏を狙って蹴りをくらわせた。
「カナさん!?」
本当に君達は…冒険者向いてないよ
それを否定するならまだ経験を積めてないのが現実だろう。
誰かが助けてくれる…そんな甘い考えがキュールちゃんを動かしたのだろう。
もちろん誰かが怪我をすれば後先考えずに回復魔法を使うのが僧侶である彼女の仕事なのだろうが…
甘い、とても甘い
「結局私とツキカゲが全て片付けることになってしまった…
一撃必殺…桜突き!!」
春風乱舞のように乱れ斬りで相手を切り刻む技とは違ってこの「桜突き」は急所を狙って一突きで仕留める技なのだ。
これにてボス戦は終了
他にあるとするならこの部屋の奥にこのダンジョンを維持する魔道具があるみたいだな
それを手に入れたら今度こそ宗教国家トーマス帝国を目指すとしよう。
「あの…カナさん!」
後ろから私を呼ぶ1人の声が聞こえて振り向けば、そこには後先考えずに行動したキュールちゃんがいた。
「先程は危ないところを助けていただき感謝します!
私はまだ未熟者で愚か者だったことがよくわかりました…
迷惑をおかけしてしまい申し訳ございませんでした!」
腰を90度に折り曲げて私に感謝と謝罪をする彼女の方向を私は一度も見ずに宝の部屋に向かった。
何を言われたっていい
感じ悪いとか言われても私は凹まない
なのになんで……
「……無理にその顔を保とうとするな」
ツキカゲ…どうしてあんたはそうやって言ってくれるのよ
「……うん。
無理はしないよ
ありがとうねツキカゲ」
いつも通り笑んないといけないじゃないの…!
剣を持つもの、魔法の杖を持つもの、弓矢を持つもの…それぞれ自身の技能にあった武器を装備しており先程まで戦っていたゴブリンなんて比べ物にならない。
「なるほどホブゴブリンか…
あいつらは先程のゴブリンとは比べ物にならん程の知能を持つと言われているが、冷静になれば奴らの攻撃も対処出来る。
カナ、お前があの剣を持ってるやつを相手しろ」
ツキカゲはいつも相手の行動や能力、生態などをしっかりと見てその場で作戦を立てる
そしてそれは勝利のビジョンが鮮明に浮かび上がっている証拠でもあるのだ。
私はこの世界で生きている上でいつもそれに助けられている
それに従う以外に考えはない
「ツキカゲの指示なら喜んで聞く…最速で倒すわよ!」
「そんなの言わなくてもわかってる…!」
桜を連想させるハルカゼをしっかりと握り地面を蹴ると一瞬で剣を持つホブゴブリンの懐に潜り込んだ。
ゴブリンから発せられる不快な臭いに苛立ちを覚えながらもなんとか耐えて急所を狙って切りつける
ぎゃああああぁぁあああ!!
汚らしい豚のような叫び声と血の匂いに笑を零し踊るように剣を振るい相手に隙を与えないようにその体を切り刻んだ。
予想よりも呆気なく終わった戦いにため息をついてハルカゼについた血を拭き取り
周りの様子を見ればツキカゲもあの1番厄介そうな魔法使いのホブゴブリン一撃で仕留めていた。
そして若葉達は苦戦しているがなんとか押しているようだ。
ツキカゲには手を出すなと言われているし邪魔にならない部屋の隅で体育座りでもしよう。
それにしても…だ
何度も彼らのことを若葉達と呼んでいるが私もそこまで変わらないと思う
私だって冒険者になって2ヶ月経った位の若葉の中の若葉だからな。
「きゃっ…!」
「アルルッ!!」
魔法使いのアルルちゃんに向けられたホブゴブリンの強烈な一撃を庇い代わりに傷を負う狙撃手のオーラくん。
個人的にはオーラくんと弓矢を持ったホブゴブリンの狙撃対決を見たかったものだ……なんて流暢なことを言っている場合ではない。
彼らを助けなければ
遠く離れた彼らの元に飛んでいくと私はいくつもの矢を放ったホブゴブリンの姿を確認した
そして深手を負ったオーラくんの前に立ち飛んできた矢を全てハルカゼで弾いて彼らに視線を移すことなく話しかける
「まったく…自分の身を呈して好きな子を守るのはいいけどそれは時に狙撃手としての腕を落とすことになるわよ…」
私は全て見ていたのだ
彼らに出会ってから見た恋愛関係とかそういうのを
オーラくんはアルルちゃんが好きでアルルちゃんはそれに全く気づいてない様子なところだったり
先程アルルちゃんを助けようとオーラくんが前に出て攻撃を受けた時にそれが腕に当たったことだったり…。
そしてそれはキュールちゃんとエルムくんにも言えることだ。
「エルムさん!」
ほら、キュールちゃんが傷を負ったエルムくんになにも考えずに近づいて傷の手当をしようとしてるでしょ?
そういう子は1番敵に狙われるの
なにも考えずに突っ走ったキュールちゃんに気づいた後のホブゴブリンの行動は早かった。
あっという間に距離を縮め手に持つ弓を剣のように振り下ろしたのだ。
やはりゴブリンはゴブリン…知能は低くて弓を射撃以外にも使おうとするなんて
……と呑気なことを考えてる暇は無さそうだ
先程と同じようにホブゴブリンの攻撃をハルカゼで防ぐとそのまま弓を真っ二つに切り相手の喉仏を狙って蹴りをくらわせた。
「カナさん!?」
本当に君達は…冒険者向いてないよ
それを否定するならまだ経験を積めてないのが現実だろう。
誰かが助けてくれる…そんな甘い考えがキュールちゃんを動かしたのだろう。
もちろん誰かが怪我をすれば後先考えずに回復魔法を使うのが僧侶である彼女の仕事なのだろうが…
甘い、とても甘い
「結局私とツキカゲが全て片付けることになってしまった…
一撃必殺…桜突き!!」
春風乱舞のように乱れ斬りで相手を切り刻む技とは違ってこの「桜突き」は急所を狙って一突きで仕留める技なのだ。
これにてボス戦は終了
他にあるとするならこの部屋の奥にこのダンジョンを維持する魔道具があるみたいだな
それを手に入れたら今度こそ宗教国家トーマス帝国を目指すとしよう。
「あの…カナさん!」
後ろから私を呼ぶ1人の声が聞こえて振り向けば、そこには後先考えずに行動したキュールちゃんがいた。
「先程は危ないところを助けていただき感謝します!
私はまだ未熟者で愚か者だったことがよくわかりました…
迷惑をおかけしてしまい申し訳ございませんでした!」
腰を90度に折り曲げて私に感謝と謝罪をする彼女の方向を私は一度も見ずに宝の部屋に向かった。
何を言われたっていい
感じ悪いとか言われても私は凹まない
なのになんで……
「……無理にその顔を保とうとするな」
ツキカゲ…どうしてあんたはそうやって言ってくれるのよ
「……うん。
無理はしないよ
ありがとうねツキカゲ」
いつも通り笑んないといけないじゃないの…!
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