見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

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20話

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目的地であるトーマス帝国は私達がいたヘンリー王国から山を3つほど越えた先にある道を辿って歩けば着く……

なんてギルマスのロキシーさんは言ってたけど


「絶対に歩いて1週間はかかるよ…」


現在1つ目の山の頂上にいるのだが人工物どころか3つ目の山すら見えない現状だ。

大量にある魔力の消費を節約するために変装コスプレスキルを解いて幼女の姿で歩いているが…

私だって完全なるチートでは無い

ステータスに表示されるHPやMPはそんなに減ってはいないが精神的に疲れるものがある。


「いつになったら見えるのか……」


ツキカゲに肩車をしてもらい遠くを見つめるがそれでも人工物は見えなかった。

それに今は太陽がギラギラと輝いている時間帯だ。

自分の意思に反するようにお腹の虫が鳴いて栄養を求めている


「しゃーないご飯にしようか」


ツキカゲの肩から下りると丁度良い高さの木を探した。

こうも太陽の光が強いと日射病になってしまうから木陰を探さないと


「ここならいいかな?

じゃあいつも通り20歳の姿に変装コスプレ!」


こうやって子供から大人になるのも慣れたものだ。

あっという間に大人の姿になるとインベントリから調理器具とそれを置く折り畳み式のテーブルと椅子、そして今回のメインディッシュとなる食材を取りだした。


「今日はスタミナのつく料理を作りましょうか

………でも手間のかかるようなことはしたくない!」


ということで事前に準備をして後は焼いて盛り付けるだけの「うなぎの蒲焼丼」を作りましょう。

それはこの山を登る前に川で魚釣りをしていた時のこと…

たまたま釣りあげた魚がまさかのうなぎで大量に生息していたのだ。


「うげ…こんな臭い魚を食べるなんてどうかしてるぞ……」


私が大量のうなぎを釣り上げ喜んでいる隣でツキカゲはめちゃくちゃ嫌そうな顔をしてうなぎを指さしていた。

伝説のドラゴンでもこんな顔をするんだな…

確かにうなぎは臭みがあって食べたくないと言う人はいるだろう…だがそれは蒲焼丼の美味さを知らない人の意見だ。

私の腕とスキルならこのうなぎを美味しくすることが出来る!



……なんて自信満々に言ったのはいいがツキカゲがさっきからその言葉を信用してくれない。

うなぎに嫌な思い出でもあるのだろうか?


「まあ見てなさいって…

それか先にご飯を丼に盛り付けてなさい」


まるで母親のような口調でツキカゲにそう言うと、彼は捌かれたうなぎを見ながら事前に炊いてインベントリにしまっていたご飯を取りだし言われた通り丼に盛り付けていた。

後はこのうなぎを美味しく調理するだけだ。

綺麗に捌かれたうなぎに竹串を刺せば後は焼くだけ

今回は炭火焼きで作ることにした。


用意するのは私が焼き魚の料理を作る時にお世話になってる七輪

炭を入れ火をつけるとパチパチと聴いていて心が落ち着くような音が鳴りそれだけでも満足してしまいそうだ。

だが私が七輪を出したのはうなぎを炭火焼きするためだ。

網の上に竹串で固定されたうなぎを置き時々ひっくり返しながら焼き加減を見た。

確かうなぎを焼く時のポイントはしっかりと焼くことだったか?

網に身がくっつかないように焼き加減を見てはひっくり返した。


「本当に美味くなるのか…?

見たところまだ焼いているだけではないか…」


確かにツキカゲの言う通りだ…だけど心配しないで欲しい。

ココからだからな!

ここで取り出すはうなぎの蒲焼きにおいて最も重要なアイテムとも言える調味料「タレ」だ。

これをハケで満遍なく塗りながら焼いてひっくり返して塗って焼いて……

ふわりと上品かつ食欲をそそる匂いが鼻を満たした。

これは早く食べたい


「はいうなぎの蒲焼の完成だよ……ってツキカゲヨダレ!ヨダレ!」


完成した蒲焼を皿に移して振り返るとうなぎの蒲焼の香りにヨダレを垂らしているドラゴン(笑)

なんて顔をしているんだこいつは…。


「ほらご飯の上にのせるから丼をこっちに……

お前の食に関する仕事の早さだけは認めてあげるよ」


うなぎの蒲焼の乗った皿をテーブルに置くと渡されたご飯の盛り付けられた丼を受け取った。

蒲焼の身を崩さないように慎重にご飯の上に乗せれば今度こそ完成だ。


「うなぎの蒲焼丼…さあ食べましょうか!」


出来上がった2つの丼を並べ箸を添えると椅子に座って合掌した。


「じゃあ…いただきます!」


箸を持つと器用にそれを使い1口サイズに切り取る

1口それを食べただけでわかる…


「うっ………」

「美味いっ!!

これが本当にうなぎなのか!?

香りもよくふわりとした食感…どこかで別の魚にすり替えたわけでもなさそうなのに…!」


食レポをするツキカゲを見ながら食べる手を止めることなくそれをかきこむと幸福感で腹も心も満たされた。

これなら山を越えられるかもしれない…そのくらい力が湧いてくるのだ。


「よっし…このまま日が落ちるまで歩き続けるわよ!」

「予定よりも早く到着するかもな…!」


なんてお喋りをしながら私たちはポジティブな思考で次の国を目指したのだった。


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