18 / 171
16話
しおりを挟むここは私達が拠点とする場所から少し離れた森
まあ私がよく薬草採取のクエストを受けたら必ず来る場所だ
ギルドマスターのロキシーさんに一言挨拶すると肩慣らしに森に行って薬草採取をしながらゴブリンでも駆除してくると言ってギルドを出ていった。
そして今、私はよくあるバーベキューセットをインベントリから出すと火をつけ肉と野菜を焼く準備をしていた。
「こういう物を扱う時に変装スキルは使えるよね
私はご飯を作るからツキカゲは説明書を見ながらテーブルと椅子を組み立ててね」
事前に調味料に漬け込んだ肉を取り出し強火で一気に焼くと香ばしい香りが余計にお腹を空かせる
やはりバーベキュー料理はこういうガツンとしたやつがいいよな。
焼けた肉や野菜を皿に盛り付けてツキカゲが組み立ててくれたテーブルの上に置くと、彼はヨダレを垂らして待てないといった様子を見せてきた。
こいつ伝説のドラゴン暗黒竜なんだよね?
威厳も何もないじゃないか…。
「はあ…まだスープが出来てないけどこれだけ食べちゃいましょうか」
「おう、この腹を空かせる匂いがたまらん!」
椅子に座り2人で合掌をしていただきますと言うと一言も喋ることなく食事に集中した。
美味すぎて箸が止まらない
喋る時間があればこの肉汁が溢れる肉を早く口に運んでいたいくらいだ。
気づけば大量にあった肉と野菜はほとんどツキカゲが平らげてしまい盛り付けに使った皿だけになってしまった。
「さてとスープを飲みながら落ち着いて話しますか…」
トマトの水分を使って作ったトマトスープは甘味もあって美味である
心が落ち着いていつの間にか幼女の姿に戻ってしまっていた
それほど心も気持ちも緩めてしまう恐ろしいスープだ。
「ふう…じゃあ教えてもらうわよ」
「…なにがだ?」
こいつ冗談で言っているのならぶっ飛ばしてやろうか?
「あのね…なんのためにここでご飯を食べていると思ってんのよ!
この森なら滅多に人も来ないから色々と話しやすいでしょ?
だから話してもらうわよ!」
あの赤いドラゴンのことやクエストをクリアしたのか否か
そこまで言うとツキカゲは真剣な表情になってわかったと答えた。
「まずはじめにあのとき現れた赤いドラゴンについて説明しよう…
簡単に言えばあいつは俺様と同じ伝説のドラゴンに入り個体名を真紅の竜と呼ばれ多くの人間が恐れていたらしい」
おいおい今さらっととんでもないことを言ったなこのドラゴン
というかなんだ?
この世界には何体の伝説のドラゴンがいるんだ?
実際私の目の前にいる人間の容姿をした彼は伝説のドラゴンだしな。
するとツキカゲは私をじっと見つめてなにか思い出したような表情をした。
「そうだった…カナにはこの世界の常識を教えておかないとだな…。
この世界においての当たり前…それは伝説のドラゴンと呼ばれる存在だ。
俺様達伝説のドラゴンは普通のドラゴンとは比べ物にならないほどの圧倒的力を持つ異色の存在といえばいいか?
そんな力を持つ俺様達に人間は恐れ、そしてある条約を結んだ。
それは…」
_____決して互いに攻撃をしてはいけない…そうすればそれなりの反撃をする
なるほど…そうでもしないと人間も安心できないしドラゴンもうるさい虫が近寄らなくてすむからいい条約かもしれない。
しかし…真紅の竜を倒してしまったことは大丈夫なのだろうか?
「人間と俺様達が交わした約束もそうだがそれよりも問題であるのは真紅の竜を倒してしまったことだな…。
現時点で確認されてる伝説のドラゴンは全部で6体いるが、先日俺達が真紅の竜を倒したから5体になるな。
さっきも言ったが伝説のドラゴンは圧倒的な力を持つ奴らだそんなのが倒されるなんて異例の事態ってことになる」
つまり…
「私達は」
「確実に」
「「世界中から注目を浴びてしまう」」
そうなれば私達の自由は奪われてしまうかもしれない
あの赤いドラゴン倒して世間が大騒ぎするなんてとんでもない出来事と捉えるべきだ。
そうなるとこれからは正体を隠して生きていくしかないのか
しかし赤いドラゴンか…
「ねえツキカゲ…私夢で変な人にあったのよ
草原を走っていたら何かにつまずいて転んでなんだと思って見たら夕日のように赤い髪の青年が話しかけて…きて……!」
待てよ…仮にその夢が本当は夢じゃないとしたら?
そしたら赤毛の青年は私に向かって何故あんなことを言ってきたのだろう。
____俺を倒したうえに蹴るなんてな
____もう二度とこの世界に来るんじゃない
まさかそんなありえない事があるのだろうか?
いやしかしそんなありえない事がありえるのが異世界だ。
そう考えればあの夢に出てきた赤毛の青年は…
深く考えている私に対して金色の目を光らせ睨んでくる黒髪の青年は言った
「……カナはあの世界に行ったんだな」
13
お気に入りに追加
689
あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる