見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

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14話

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私を抱き上げて大きな腕で包み込んでくれている彼こそ私の大切な相棒「ツキカゲ」だ。


「お前…肩が!」


私に遅くなってすまないと詫びると私の肩を見て顔色を悪くしてそして怒りの満ちた顔へと変えた。


「ごめんね…ちょっと無理しちゃった」


5歳児のようにあざとく謝れば食いちぎられた肩に優しく手をかざして治癒魔法をかけてくれた。

ジュー…と傷が治っていく音が聞こえてツキカゲの凄さを再確認した…私はとんでもないものと契約したのだなと。


「あいつを懲らしめてくるからな…建物の影に隠れていてくれ…」


私の了承もなしにツキカゲは建物の影に私を慎重に置くと何重にも結界をかけてしまった。

それはどんな攻撃が来ても絶対に壊れることの無い最高結界魔法「竜王の結界ドラゴンシールド

名前は少しダサいけどそれなりの効果はある


「俺様とカナは一心同体…カナの痛みや苦しみは俺様にも反映される

どれほどの痛みや苦しみだったかお前にもわからせてやる!」


パキパキと音を鳴らして肌を鱗で覆い翼と尻尾を生やすとその身体は巨体となった。

私のような半端な姿ではなく完全な姿


「1発で終わらせる…!」


その発言は嘘偽りのないもので本当に1発で終わらそうとしていた。

赤いドラゴンの噛みつきも引っ掻きも一切当たることなく全て回避して的確に首を狙い噛み付くとそのまま上空に向かって羽ばたいた。


冷静になっているからわかる 

彼の呼吸や心音、感情の乱れや熱を帯びた身体

私はツキカゲでツキカゲは私なんだとわかってしまう。

そして今私も彼と一緒に戦っているんだ


「「これで決める!竜王の殺息ドラゴンブレス!!!」」


喉が焼けるように熱くなりその息を一瞬止めるとそれを一気に吐き出した。


青紫色に光るその魔法はドラゴンである私とツキカゲの心をひとつにしないと出せないもの

その一撃は赤い巨体を包み苦しめるとそれは上空に留める力を失い地上に向かって落ちて行った。

竜王の殺息ドラゴンブレスを受ければその命が完全に消えるまで消えることの無い炎でもある。



ツキカゲも赤いドラゴンが死んだことを確認すると上空から降りてきてまっすぐ私の方に走ってきた。


「…肩以外に痛むところはないか?」


結界を解除して私を抱き上げると申し訳なさそうな表情を見せて彼はそう言った。

ツキカゲがそんな表情を見せなくてもいい…いや、私がそうさせてしまったのだ。


「ごめんなさい…私が弱いせいであなたが辛い思いをしなくてすんだのに…。」


私が怪我をして痛みを感じればそれはツキカゲにも反映される

私が死ねばあなたも死んでしまう…契約とは恐ろしいものだ。

あの赤いドラゴンと戦っている時も痛かっただろうな

私が弱すぎるのにで無理にドラゴンと戦って怪我をしたからこんなことになったんだ。

それなのにあなたは


「もうすぎたことだ…今は寝ろ」


と言って私に寝るように促してきたんだ。

大きくて優しい腕の中で私はゆっくりと瞼を閉じて意識を手放したのだった。











夢を見た

そこはまるで天国のような夢のような空間…

上を見上げれば雲ひとつない真っ青な空

足元を見れば私の足はしっかりと緑の大地を踏んでいる。


右を見れば穏やかな川、左を見れば花達が咲いていた。


「ここは…どこなの?」


何も考えずに変化を求めて歩き続けてもあるのは自然のみ

人工物なんてどこにもない


「本当にここは何処なの?」


私は確かクエストを受けてそしたらまさかのドラゴンがいて…

そうだ戦っても全然歯が立たなかったんだ

もうダメだって時にツキカゲが助けに来てくれて一緒に戦って勝利したんだ。


だけどその後どうなった?


段々不安になる気持ちが大きくなってきて帰らないとダメだと思うようになってきて走り出した。


皆に会いたい

まだ異世界召喚されて1年どころか半年も経ってないのにそう思えてしまうのは私が出会ってきた人達の優しさに触れたからだ。

優しさに触れて私の居場所はあるのだと改めて認識できたのだ。


だからこそ会いたい…会わなきゃダメなんだ


強く思えば思うほど走る速度は上がり息も上がってきたような気がする。

走り続けてどのくらい経ったのだろうか

空を見上げながら走っていると突然足元になにかが引っかかり視界が青色から緑と茶色に変わった。


「痛い……なんだよここだけ土でも盛り上がって…」


一体自分の身になにがあったんだと思い顔を上げて足に引っかかったものを見て目を丸くした。


「えっ…人!?」


そこに居たのは人…しかもめちゃくちゃ美形の男性だった。

透き通るように白い繊細な肌と夕日のように赤くて綺麗な髪の毛

そして襟までちゃんとボタンをつけていない白シャツの隙間から見える首筋は世の女性達をキャーキャー言わせられると思える。


「……俺を倒したうえに蹴るなんてとんでもない女だな」


目を閉じて眠っていたはずの彼の口が突然動いて私は驚きで腰を抜かして後退りしてしまった。

開けたその目を見て私はどこかで見たことあるようなと思いじっとその整った顔を見ていると彼は顔をしかめ立ち上がった。


「もう二度とこんな所に来るんじゃない…わかったな?」


赤髪の彼はそう言うと私の額に指をそえて力を込めた。

段々と意識がぼんやりとしてきて何となく時間切れだと感じ取れてしまう。

わからない…わからないけど彼から離れてはいけない気がした。


「待って…あなたの名前はっ!?」


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