15 / 171
13話
しおりを挟むふらつく足に鞭を打って走り出すと嫌でもわかる段々と近づいてくこの感覚
近づく度にまた息が乱れてきた
「ツキカゲ…どんだけ周りを威圧してるのよ」
気配察知スキルを使おうとすれば確実に気絶するのはわかるので使わずに音だけを辿って来てみると出口に続いてそうな扉を見つけた。
なんとなくわかるこの感じ
「(ここにいる…!)」
勢いよく扉を開け周りの状況を確認するとさらに息が乱れて立つことすら出来なくなってしまった。
確かに外には出れた
だけどそこに居たのはツキカゲにみえたけどそうじゃない
いつもの真面目な表情から出る優しい雰囲気もドラゴンになった時も変わらない金色の瞳も光沢のある黒い鱗もそこにはなかった。
代わりにあるのは怒り狂った様子が瞳の色、鱗、オーラ全てが読み取れる
真っ赤な瞳と赤く染まった鱗
これはツキカゲじゃない
ツキカゲの威圧は相棒である私には絶対に効かないので恐怖を感じることも体調を崩すことも無い。
つまりこの目の前にいるドラゴンは相棒じゃない
呻き声をあげて地面にひれ伏した私は無力同然でやつを止めようにも止められない
なんとかやつを振り向かせて正気に戻さないとまずいのだ。
しかしどうすればいいのだろうか……
いや、そんなに悩む必要性はないのだ。
とっても簡単なこと
「私が本気であいつと戦えばいいんだ…」
それは勝っても負けてもどっちでもいい
とにかく戦いで少しでも疲れさせればいいのだから
そうすれば正気に戻るだろう。
私は手に握ったハルカゼをダガーホルダーにしまいながらふらつく足に力を入れて立ち上がるとまっすぐあいつを見つめた。
なぜ怒り狂っているのかはわからないけどそれにはちゃんとりゆうがあるはずだからそれを知っておかないと
そんな思いで深呼吸をして相手の動きをしっかりと見ると竜の威圧でこちらに視線を移させた。
ギラギラとした赤い目をこちらに向けただけで恐怖心が増してくる…だけどこれに立ち向かわなければならない。
「とにかくあんたを落ち着かせないとダメなんだ…
覚悟しなさい…!」
視線をこちらに向かせることに成功した私は深く呼吸をして落ち着かせるとスキル 竜使いのうちのひとつあるスキルを使うことにした。
「(スキル…竜化!)」
パキパキと音がなり身体が変わっていくのがわかる
このスキルは物理的に竜族になるというもの
スキル竜の鱗とは違い1部を竜の鱗で固めるのではなく全身を竜のように鱗で覆わせ尻尾と翼を生やすのだ。
ドラゴンになったツキカゲと同じ光沢のある黒い鱗が手・足・頬を包み金色の瞳が輝いた。
太い尻尾の先は刃物のように鋭く
こんなに大きな翼があれば何処へでも行けそうだ。
まだ完全にドラゴンに離れなかったが半竜人にはなれた。
私が姿を変えれば目の前にいるドラゴンは私を睨み威圧するが、全く効かない。
竜の威圧は半竜人になった私には効かないことに気づいた
きっと私が半竜人になったからだろう
とりあえずさっさと終わらせてしまおうと思い翼を大きく広げると高く跳躍して羽ばたいた。
気がつけばあっという間に地上にいるドラゴンが小さくなるほどの高さまで飛んでしまいやりすぎたなと考えていると私を追いかけるように飛んでくる影が一頭。
「まじかよ…!あんな巨体で素早く動けるの!?」
ありえないスピードで私に追いつくと鋭い牙で肩に噛み付いてきた。
「あああぁぁああぁぁあ!!!?」
皮膚を破り肉を食いちぎってきて今まで感じてきた痛みの中でも1番痛い
生理的な涙を流して喉が枯れるほど叫んだ
なんとかあの口から脱出して自力で上空に留まると食いちぎられた肩を片手で抑えた
だけどドラゴンが私の肉を食いちぎったのは私の動きを止めるのが目的ではなかった
あいつの目を見ればわかる
私のことを殺すつもりなんだ
恐怖でポロポロと涙を流して多量の血が流れるのを感じて再び自分の無力さを感じた。
なんでこんなことになってしまったのか
どうしてもっと強くなれなかったのか
そして私が死ぬ瞬間を楽しんでいるのだろうか
ドラゴンは私を地面に叩きつけようと咥え勢いよく私を地面に向けて投げつけた。
風圧で力を維持出来ずに半竜人化が解けて変装スキルも解けて元の5歳児幼女の姿に戻ってしまった。
地面まであと何メートルかもわからないけどいつ背中に衝撃が来るかもわからない
だから私は全てを諦めて身体の力を完全に抜いて目を閉じた
「ごめんねツキカゲ…私、死ぬね」
その場に彼がいる訳でもないのに彼の名を呼んで勝手に死ぬと呟いた…何も変わるわけないのに勝手に謝った。
誰も許してはくれないだろうな
「ああそうだな…
特に俺様が許さない!」
突然聞こえた声にハッとなり目を開けば私は無意識に生にしがみついて風魔法を使った。
「風よ、私を受け止めて!」
呪文にもならない願い事のような言葉で風を操ると自身の体を浮かせて地面に叩きつけられるのを防いた。
ふわふわと浮かんでどうしてこんなことになったのか考えて頭がごちゃごちゃになった。
どうして今になって生きようと思ったのだろうか?
なぜ彼の声が聞こえたのか?
ぐるぐると頭の中でそんな疑問が浮かび上がってそれしか考えられなくなった。
「まさかあいつがいるなんてな…カナが死ねば俺様も死ぬことわかってんのか?」
また声が聞こえたと思えば声の主は私を抱き上げて優しく頭を撫でてくれた。
「遅くなって悪かったな…空も飛べずに人間の姿でここまで来るのはさすがに時間がかかった。」
間違いない…やっと合流できた
「もう…遅いよ……
ツキカゲ…!」
13
お気に入りに追加
689
あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる