26 / 56
3-7
しおりを挟む
先程の雑居ビル爆発後人々は大混乱に陥っていた
……わけではなくただ興味本位で少し遠くから様子を見ているのだ
こういうのが本当に腹立たしい
「ポチッ…!」
ただ自分を見てくれる存在が消えてしまうのではないかと心配で胸が苦しい
いや、今はそんなことしている場合では無い
なんのために準備したと思ってるんだ
震える脚を何度も叩いて震えを無理やり止めると真っ直ぐ半壊したビルを見つめる
戦闘もダメ獣人化もダメ
なら方法はこれしかない
脚に力を入れ、腕を思い切り振って自分が出せる速さでその場を駆け抜けた。
後ろからは止まれとか行くなとか私を制止しようもする声が聞こえてくるけど関係ない
こんな所で止まって現場を見ていられるほど私はバカじゃないんだ
匂いがする
少し前の私と同じ匂い
瓦礫の陰に隠れながら周りの気配を確認する
足音は聞こえない…だけど上の階から派手な音が聞こえる
急がないとダメだと思い陰から出てきて階段を探していると外で何かが動いた気がした
「えっ…
ポチッ!!」
窓から見えたのは何かがものすごいスピードで落ちる影
この身体になったおかげで動体視力も良くなった…だからその影がなんなのかすぐにわかった。
なんでポチがガキと一緒に落ちているんだ?
咄嗟に窓際走り寄ると地上を見る
そこには観客と化した人間たちが円になってポチとガキが交戦しているのを見ていたのだ
どうしよう…まだガキは獣人化していないからセーフとして、あんなに高いところから着地して無傷だった所を見られたんだ
誰かしら映像に残して遊び半分でネット上に投稿するに決まってる
…そういえばどうしてポチはキャスケットを被っていないのだろうか?
ビルから落ちた勢いで脱げたのなら地上の何処かに落ちてるはずだ
だがそれらしきものはどこにもない
「まさか上の階で脱ぎ捨てた?」
ポチのことだからありえないことも無い
いつも帽子を被るのはあまり好きではないと…視界が制限されるから戦う時は必ず帽子を脱ぐのだ。
私は周りを見て階段を探した
途中床に倒れ伏す義獣人を見たけど今は無視
階段を登って壊れた扉とその近くに落ちてる青いキャスケット
珍しい青の入った銀色の髪の毛を隠すために青色の帽子を被るんだ
だから私もそれを真似して赤系の帽子を被るか赤色のパーカーを着てフードを被る
「近くには大きなおっさんが倒れてる…こいつもポチがやったんだ」
やっぱりポチはすごい
再び大きく開いた穴に近づいて地上を見るともう既にガキを取り押さえていた
さっきまで交戦していたかと思って目を離したその数秒でことを終わらせてしまうのだから
私は将来…ポチのように生きることはできるのだろうか
どうやったらあんなに力強い大人になれるのだろうか
「どうすれば強くなれるのかな…?」
ふとそんなことを考えてしまうんだ
私の憧れる人物は篠原満月ただ一人なのだと自覚してしまう
今の心情は明らかに自分の親になってくれた彼女のようになりたいという願いがある
なんてことを考えてしまうからの
「なら本能のままに生きればいい…同士よ」
刹那
本能的に感じ取り脳が避けろと命令した時にはもう遅い
気づいた時には私の体は壁にぶつかって視界が歪んだ
「かはっ……!?」
背中を強打しただけど問題はない
確認すべきなのは誰が私を壁まで吹き飛ばしたかだ。
無理やり目を擦り視界を戻すとそこには上半身が赤い毛で覆われた大柄な男がふらついた足で立っていた。
「あの野郎よくも俺の腹に電撃を…!
復讐せねば!強くならねば!
そのために本能のままに生きよ!!」
頭に響くその叫び
完全なる獣になってしまった者の末路がこれだと言うのか?
そう感じると恐ろしくなってしまった
体の震えが止まらない…止めなきゃいけないのに
今この場から立ち上がり逃げなきゃダメなんだ
それなのに私の体はピクリとも動きやしない
一歩一歩近づいてくる気配に怯えながらも必死に脳は命令する
動け
動け
逃げろ
動かないと逃げられない
その一瞬私が見たものは私を掴もうとする大きな手
潤む視界と掠れた声で私は最後に何を言ったのか
「助けて…ポチ…!」
全く記憶になかったのだ。
……わけではなくただ興味本位で少し遠くから様子を見ているのだ
こういうのが本当に腹立たしい
「ポチッ…!」
ただ自分を見てくれる存在が消えてしまうのではないかと心配で胸が苦しい
いや、今はそんなことしている場合では無い
なんのために準備したと思ってるんだ
震える脚を何度も叩いて震えを無理やり止めると真っ直ぐ半壊したビルを見つめる
戦闘もダメ獣人化もダメ
なら方法はこれしかない
脚に力を入れ、腕を思い切り振って自分が出せる速さでその場を駆け抜けた。
後ろからは止まれとか行くなとか私を制止しようもする声が聞こえてくるけど関係ない
こんな所で止まって現場を見ていられるほど私はバカじゃないんだ
匂いがする
少し前の私と同じ匂い
瓦礫の陰に隠れながら周りの気配を確認する
足音は聞こえない…だけど上の階から派手な音が聞こえる
急がないとダメだと思い陰から出てきて階段を探していると外で何かが動いた気がした
「えっ…
ポチッ!!」
窓から見えたのは何かがものすごいスピードで落ちる影
この身体になったおかげで動体視力も良くなった…だからその影がなんなのかすぐにわかった。
なんでポチがガキと一緒に落ちているんだ?
咄嗟に窓際走り寄ると地上を見る
そこには観客と化した人間たちが円になってポチとガキが交戦しているのを見ていたのだ
どうしよう…まだガキは獣人化していないからセーフとして、あんなに高いところから着地して無傷だった所を見られたんだ
誰かしら映像に残して遊び半分でネット上に投稿するに決まってる
…そういえばどうしてポチはキャスケットを被っていないのだろうか?
ビルから落ちた勢いで脱げたのなら地上の何処かに落ちてるはずだ
だがそれらしきものはどこにもない
「まさか上の階で脱ぎ捨てた?」
ポチのことだからありえないことも無い
いつも帽子を被るのはあまり好きではないと…視界が制限されるから戦う時は必ず帽子を脱ぐのだ。
私は周りを見て階段を探した
途中床に倒れ伏す義獣人を見たけど今は無視
階段を登って壊れた扉とその近くに落ちてる青いキャスケット
珍しい青の入った銀色の髪の毛を隠すために青色の帽子を被るんだ
だから私もそれを真似して赤系の帽子を被るか赤色のパーカーを着てフードを被る
「近くには大きなおっさんが倒れてる…こいつもポチがやったんだ」
やっぱりポチはすごい
再び大きく開いた穴に近づいて地上を見るともう既にガキを取り押さえていた
さっきまで交戦していたかと思って目を離したその数秒でことを終わらせてしまうのだから
私は将来…ポチのように生きることはできるのだろうか
どうやったらあんなに力強い大人になれるのだろうか
「どうすれば強くなれるのかな…?」
ふとそんなことを考えてしまうんだ
私の憧れる人物は篠原満月ただ一人なのだと自覚してしまう
今の心情は明らかに自分の親になってくれた彼女のようになりたいという願いがある
なんてことを考えてしまうからの
「なら本能のままに生きればいい…同士よ」
刹那
本能的に感じ取り脳が避けろと命令した時にはもう遅い
気づいた時には私の体は壁にぶつかって視界が歪んだ
「かはっ……!?」
背中を強打しただけど問題はない
確認すべきなのは誰が私を壁まで吹き飛ばしたかだ。
無理やり目を擦り視界を戻すとそこには上半身が赤い毛で覆われた大柄な男がふらついた足で立っていた。
「あの野郎よくも俺の腹に電撃を…!
復讐せねば!強くならねば!
そのために本能のままに生きよ!!」
頭に響くその叫び
完全なる獣になってしまった者の末路がこれだと言うのか?
そう感じると恐ろしくなってしまった
体の震えが止まらない…止めなきゃいけないのに
今この場から立ち上がり逃げなきゃダメなんだ
それなのに私の体はピクリとも動きやしない
一歩一歩近づいてくる気配に怯えながらも必死に脳は命令する
動け
動け
逃げろ
動かないと逃げられない
その一瞬私が見たものは私を掴もうとする大きな手
潤む視界と掠れた声で私は最後に何を言ったのか
「助けて…ポチ…!」
全く記憶になかったのだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
異世界の叔父のところに就職します
まはぷる
ファンタジー
白木秋人は21歳。成績も運動もいたって平凡、就職浪人一歩手前の大学4年生だ。
実家の仕送りに釣られ、夏休暇を利用して、無人の祖父母宅の後片付けを請け負うことになった。
そんなとき、15年前に失踪したはずの叔父の征司が、押入れから鎧姿でいきなり帰ってきた!
異世界に行っていたという叔父に連れられ、秋人もまた異世界に行ってみることに。
ごく普通な主人公の、普通でない人たちとの異世界暮らしを綴っています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
以前にアルファポリス様で投稿していた処女作です。
物語の大筋は変わっていませんが、文体を完全な一人称に、誤字脱字と文章修正を行なっています。
小説家になろう様とカクヨム様でも投稿している物の逆輸入版となります。
それなりに書き溜め量があるので、さくさく更新していきます。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
転生少女の奴隷生活は主人が可愛くて割としあわせなようです
みのりすい
ファンタジー
主従百合バトルファンタジー。
前世は最強の特級呪術師、今世で憐れな売れ残り…。
やっと買ってくれた人は可愛い女の子。まあ、どうせ奴隷なんだけど。
でもなんか優しくしてくれるし……。あれ、これ、当たり……?
呪術も魔法も妖魔もいる世界で、固く結びあわされた二人の魂の絆の物語。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる