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憂鬱な始業前

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 出社すると、真理ちゃんも梨乃ちゃんも休みだった。梨乃ちゃんは体調不良とでも伝えたのだろうが、その原因は俺にある。いくらかの気まずさがあるとはいえ、二人とも顔を合わせなくていいのは俺にとって都合が良かった。

 狩野との通話をふと思い出す。

 しかし、真理ちゃんと手を切れときたか。最近は話しかけても無視され続けてきたから苦労はしなさそうだが、そのままサヨナラというのもいくらか気が引ける。やはりそんな結末を俺自身が望んでいないからだろうが、復縁するとそれはそれで厄介になる。

 すでに梨乃ちゃんは俺と付き合っている認識になっているし、真理ちゃんが俺に惚れ直した場合、梨乃ちゃんと真理ちゃんの関係が微妙になる。

 女性同士の友情は独特なものがある。とても強固に見えても、あるきっかけで一気に瓦解することだってある。それを見せられていくらかトラウマになったことも……。

 俺と梨乃ちゃんが付き合うことを真理ちゃんはどう見るだろうか。時折見せる邪悪な表情を鑑みるに、逆恨みで色々と仕掛けてこなければいいが。

 ……やめよう。嫌なシミュレーションを延々繰り返すと憂鬱になるだけだ。

 今日は淡々と働いて本業もこなし、それから狩野の新情報を得る。それだけでいい。

 俺は受電用のヘッドセットを装着した。
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