42 / 44
最悪な日曜日
しおりを挟む
日曜日。わたしは惰眠をむさぼっている。というか、昨日のショックから立ち直れない。
カフェから立ち去って、まっすぐ家に帰って来た。
電話が何回も震えて、LINEのメッセージもたくさん来ている。見る気にならなかった。見てしまえば、つらい現実に引き戻されてしまう。
ほんの束の間だけ手に入れた幸せ。それが自分の手から滑り落ちていった瞬間を見るのはあまりにもつらい。
どうしよう。明日出勤できるのかな。
失恋で出社拒否みたいな話を聞いた時、「そんないい加減な人が社会に出ちゃだめだよ」と思っていたけど、今では自分のバカにしていた人たちの気持ちが分かる気がする。なるほど、たしかにこれは何もできないほどつらい。
ああ、カフェで大騒ぎしてしまった。わたし、三十代に突入したのに……。恥ずかしい。恥ずかしくて死にそう。もうあのカフェ使えないじゃん。あああああ。
失恋のショックと自己嫌悪の混ざり合った最悪の感情が二日酔いみたいにわたしの脳内でグルグル回っている。
なにこの地獄。これが失恋ってやつなの?
いや、知ってたんだけどさ、この年になると心の耐久力が落ちているから、ダメージが深すぎる。
ううう、ああああ。
ボディーブローで倒された噛ませ犬のボクサーみたいにフローリングで転がり回る。失うことが、ここまでつらいものだなんて……。
思考停止して、考えたくなくて、自分のスイッチを切る。フローリングに変な体勢で転がったまま、スリープモードになった。
ピンポーン。
本当に空気の読めないタイミングでドアフォンが鳴る。無視。というか、わたしは動けない。そう、わたしはスリープモード。意識はあって無い。電源を入れないと、わたしの状態は戻らない。
ピンポーンピポピポピンポーンポピンポピンポーンピンポーンピンポーンピンポピンピンポーン。
……うるせえな。
鳴らされまくるピンポンに怒りが沸いてくる。
ああ、もしかしてレイ君か。ヤダ。絶対出てやんね。
さっきまで失恋の苦しみに悶えていたわたしは、渦巻く後悔をすっかりと忘れて、乱打されるピンポンを無視した。
ピンポーンピポピポピンポーンポピンポピンポーンピンポーンピンポーンピンポピンピンポーンピンポーンピポピポピンポーンポピンポピンポーンピンポーンピンポーンピンポピンピンポーンピンポーンピポピポピンポーンポピンポピンポーンピンポーンピンポーンピンポピンピンポーンピンポーンピポピポピンポーンポピンポピンポーンピンポーンピンポーンピンポピンピンポーン。
「しつこいよ!」
怒って玄関に出たわたし。気が立っているのもあって、普通にキレて出て来てしまった。
――あ、しもた。
ドアを開けてから思った。だけど、もう遅い。
玄関に立っていたのはレイ君……じゃなくて、木下羅魅亜嬢だった。
「あ、やっと出てきた」
木下さんは怒鳴られたことなんて全く気にせずに笑った。
「……なんで?」
その三文字が、わたしの思考を現す全てだった。
カフェから立ち去って、まっすぐ家に帰って来た。
電話が何回も震えて、LINEのメッセージもたくさん来ている。見る気にならなかった。見てしまえば、つらい現実に引き戻されてしまう。
ほんの束の間だけ手に入れた幸せ。それが自分の手から滑り落ちていった瞬間を見るのはあまりにもつらい。
どうしよう。明日出勤できるのかな。
失恋で出社拒否みたいな話を聞いた時、「そんないい加減な人が社会に出ちゃだめだよ」と思っていたけど、今では自分のバカにしていた人たちの気持ちが分かる気がする。なるほど、たしかにこれは何もできないほどつらい。
ああ、カフェで大騒ぎしてしまった。わたし、三十代に突入したのに……。恥ずかしい。恥ずかしくて死にそう。もうあのカフェ使えないじゃん。あああああ。
失恋のショックと自己嫌悪の混ざり合った最悪の感情が二日酔いみたいにわたしの脳内でグルグル回っている。
なにこの地獄。これが失恋ってやつなの?
いや、知ってたんだけどさ、この年になると心の耐久力が落ちているから、ダメージが深すぎる。
ううう、ああああ。
ボディーブローで倒された噛ませ犬のボクサーみたいにフローリングで転がり回る。失うことが、ここまでつらいものだなんて……。
思考停止して、考えたくなくて、自分のスイッチを切る。フローリングに変な体勢で転がったまま、スリープモードになった。
ピンポーン。
本当に空気の読めないタイミングでドアフォンが鳴る。無視。というか、わたしは動けない。そう、わたしはスリープモード。意識はあって無い。電源を入れないと、わたしの状態は戻らない。
ピンポーンピポピポピンポーンポピンポピンポーンピンポーンピンポーンピンポピンピンポーン。
……うるせえな。
鳴らされまくるピンポンに怒りが沸いてくる。
ああ、もしかしてレイ君か。ヤダ。絶対出てやんね。
さっきまで失恋の苦しみに悶えていたわたしは、渦巻く後悔をすっかりと忘れて、乱打されるピンポンを無視した。
ピンポーンピポピポピンポーンポピンポピンポーンピンポーンピンポーンピンポピンピンポーンピンポーンピポピポピンポーンポピンポピンポーンピンポーンピンポーンピンポピンピンポーンピンポーンピポピポピンポーンポピンポピンポーンピンポーンピンポーンピンポピンピンポーンピンポーンピポピポピンポーンポピンポピンポーンピンポーンピンポーンピンポピンピンポーン。
「しつこいよ!」
怒って玄関に出たわたし。気が立っているのもあって、普通にキレて出て来てしまった。
――あ、しもた。
ドアを開けてから思った。だけど、もう遅い。
玄関に立っていたのはレイ君……じゃなくて、木下羅魅亜嬢だった。
「あ、やっと出てきた」
木下さんは怒鳴られたことなんて全く気にせずに笑った。
「……なんで?」
その三文字が、わたしの思考を現す全てだった。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
二人の甘い夜は終わらない
藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい*
年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!
めーぷる
恋愛
見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。
秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。
呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――
地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。
ちょっとだけ三角関係もあるかも?
・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。
・毎日11時に投稿予定です。
・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。
・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。
契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」
突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。
冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。
仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。
「お前を、誰にも渡すつもりはない」
冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。
これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?
割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。
不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。
これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。
アダルト漫画家とランジェリー娘
茜色
恋愛
21歳の音原珠里(おとはら・じゅり)は14歳年上のいとこでアダルト漫画家の音原誠也(おとはら・せいや)と二人暮らし。誠也は10年以上前、まだ子供だった珠里を引き取り養い続けてくれた「保護者」だ。
今や社会人となった珠里は、誠也への秘めた想いを胸に、いつまでこの平和な暮らしが許されるのか少し心配な日々を送っていて……。
☆全22話です。職業等の設定・描写は非常に大雑把で緩いです。ご了承くださいませ。
☆エピソードによって、ヒロイン視点とヒーロー視点が不定期に入れ替わります。
☆「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる