【完結】【R18】あなたがわたしの推しだから~幸薄いアラサー処女の不器用すぎるオフィスラブ~

月狂 紫乃/月狂 四郎

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最悪な日曜日

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 日曜日。わたしは惰眠をむさぼっている。というか、昨日のショックから立ち直れない。

 カフェから立ち去って、まっすぐ家に帰って来た。

 電話が何回も震えて、LINEのメッセージもたくさん来ている。見る気にならなかった。見てしまえば、つらい現実に引き戻されてしまう。

 ほんの束の間だけ手に入れた幸せ。それが自分の手から滑り落ちていった瞬間を見るのはあまりにもつらい。

 どうしよう。明日出勤できるのかな。

 失恋で出社拒否みたいな話を聞いた時、「そんないい加減な人が社会に出ちゃだめだよ」と思っていたけど、今では自分のバカにしていた人たちの気持ちが分かる気がする。なるほど、たしかにこれは何もできないほどつらい。

 ああ、カフェで大騒ぎしてしまった。わたし、三十代に突入したのに……。恥ずかしい。恥ずかしくて死にそう。もうあのカフェ使えないじゃん。あああああ。

 失恋のショックと自己嫌悪の混ざり合った最悪の感情が二日酔いみたいにわたしの脳内でグルグル回っている。

 なにこの地獄。これが失恋ってやつなの?

 いや、知ってたんだけどさ、この年になると心の耐久力が落ちているから、ダメージが深すぎる。

 ううう、ああああ。

 ボディーブローで倒された噛ませ犬のボクサーみたいにフローリングで転がり回る。失うことが、ここまでつらいものだなんて……。

 思考停止して、考えたくなくて、自分のスイッチを切る。フローリングに変な体勢で転がったまま、スリープモードになった。

 ピンポーン。

 本当に空気の読めないタイミングでドアフォンが鳴る。無視。というか、わたしは動けない。そう、わたしはスリープモード。意識はあって無い。電源を入れないと、わたしの状態は戻らない。

 ピンポーンピポピポピンポーンポピンポピンポーンピンポーンピンポーンピンポピンピンポーン。

 ……うるせえな。

 鳴らされまくるピンポンに怒りが沸いてくる。

 ああ、もしかしてレイ君か。ヤダ。絶対出てやんね。

 さっきまで失恋の苦しみに悶えていたわたしは、渦巻く後悔をすっかりと忘れて、乱打されるピンポンを無視した。

 ピンポーンピポピポピンポーンポピンポピンポーンピンポーンピンポーンピンポピンピンポーンピンポーンピポピポピンポーンポピンポピンポーンピンポーンピンポーンピンポピンピンポーンピンポーンピポピポピンポーンポピンポピンポーンピンポーンピンポーンピンポピンピンポーンピンポーンピポピポピンポーンポピンポピンポーンピンポーンピンポーンピンポピンピンポーン。

「しつこいよ!」

 怒って玄関に出たわたし。気が立っているのもあって、普通にキレて出て来てしまった。

 ――あ、しもた。

 ドアを開けてから思った。だけど、もう遅い。

 玄関に立っていたのはレイ君……じゃなくて、木下羅魅亜嬢だった。

「あ、やっと出てきた」

 木下さんは怒鳴られたことなんて全く気にせずに笑った。

「……なんで?」

 その三文字が、わたしの思考を現す全てだった。
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