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バズっていた決勝戦
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――決戦当日、会場は異様な賑わいを見せていた。
なんでもネットで決勝が空前絶後の美少女対決と話題になり、知らぬ間にあたしや天城楓花の顔写真があちこちに拡散されまくっていたらしい。
肖像権もへったくれもない気がするけど、学校の公式ホームページや校内で刊行されているスポーツ新聞などからボクシング部を紹介する写真を流用したそうなので、訴えるに訴えることも出来ない。
写真の出どころが気になるところだけど、誰が裏切り者なのかを知ったら知ったで気分が悪くなりそうなので放っておく。いずれにしても、ここまで話題になってしまうと写真を根絶するのは難しい。
あんまり目立ちたくなかったけど、そうなってしまったものは仕方がない。盛り上がってくれるなら、こっちも全力を尽くして最高の試合を見せるだけ。それは性別がどうだろうと関係ない。
会場入りすると、想像以上に観客が入っていた。
こういった競技はどうしても半数以上が関係者になる傾向があるけど、それ以上に部外者っぽい人というか、もっと言うとドルオタみたいなオッサンが増殖していた。彼らが十代の女の子を追いかけるのは本能みたいなものなのだろう。
まあいい。あたしは自分のやるべきことをやるだけだ。
あたしがリングサイドまで出てくると、あちこちから歓声が上がる。まるでアイドルのコンサートだ。肉体が女でも中身が男だって知ったらどんな顔をするんだろう、というサディスティックな興味が湧いてくる。
反対側でも大きな歓声が沸く。「楓花ちゃん派」のオッサンたちが騒いでいるようだ。関係者が苦笑いを浮かべている。
男子部員から教えてもらったけど、あたしたちが揃ってバズったのは単に美少女同士が拳で殴り合うからだけではない。
ネットでは「由奈ちゃん派」と「楓花ちゃん派」にファンが別れているそうで、きのこたけのこ戦争並みに不毛な争いが起こっているとのことだった。
ネットで起こるどちらがかわいいかの水掛け論。それを眺めている人がさらに興味を持って動画を見に行き……という流れであたしたちの人気は分不相応なくらいに膨張してしまったようだった。
周りが騒がしい中、試合の準備をする。軽くシャドウで身体を温め、ミット打ちでカウンターのタイミングを思い出す。前世でアウェーの試合も経験しているせいか、この程度の喧噪で集中力は乱されない。それは天城も同じようだった。
「さて」
佐竹先生の一言で、あたしたちはリングを見る。
いよいよインターハイの決勝だ。
別にそれが夢だったわけじゃないけど、ここで勝てば何かが変わる気がする。
運命の女神が導いた二人。それが決勝で拳を交わすことに、何らかの意味はあるはずだ。
「よっしゃいくぞ」
「はい!」
前世で果たせなかった決着。それを付けるために、あたしはリングへと上がった。
なんでもネットで決勝が空前絶後の美少女対決と話題になり、知らぬ間にあたしや天城楓花の顔写真があちこちに拡散されまくっていたらしい。
肖像権もへったくれもない気がするけど、学校の公式ホームページや校内で刊行されているスポーツ新聞などからボクシング部を紹介する写真を流用したそうなので、訴えるに訴えることも出来ない。
写真の出どころが気になるところだけど、誰が裏切り者なのかを知ったら知ったで気分が悪くなりそうなので放っておく。いずれにしても、ここまで話題になってしまうと写真を根絶するのは難しい。
あんまり目立ちたくなかったけど、そうなってしまったものは仕方がない。盛り上がってくれるなら、こっちも全力を尽くして最高の試合を見せるだけ。それは性別がどうだろうと関係ない。
会場入りすると、想像以上に観客が入っていた。
こういった競技はどうしても半数以上が関係者になる傾向があるけど、それ以上に部外者っぽい人というか、もっと言うとドルオタみたいなオッサンが増殖していた。彼らが十代の女の子を追いかけるのは本能みたいなものなのだろう。
まあいい。あたしは自分のやるべきことをやるだけだ。
あたしがリングサイドまで出てくると、あちこちから歓声が上がる。まるでアイドルのコンサートだ。肉体が女でも中身が男だって知ったらどんな顔をするんだろう、というサディスティックな興味が湧いてくる。
反対側でも大きな歓声が沸く。「楓花ちゃん派」のオッサンたちが騒いでいるようだ。関係者が苦笑いを浮かべている。
男子部員から教えてもらったけど、あたしたちが揃ってバズったのは単に美少女同士が拳で殴り合うからだけではない。
ネットでは「由奈ちゃん派」と「楓花ちゃん派」にファンが別れているそうで、きのこたけのこ戦争並みに不毛な争いが起こっているとのことだった。
ネットで起こるどちらがかわいいかの水掛け論。それを眺めている人がさらに興味を持って動画を見に行き……という流れであたしたちの人気は分不相応なくらいに膨張してしまったようだった。
周りが騒がしい中、試合の準備をする。軽くシャドウで身体を温め、ミット打ちでカウンターのタイミングを思い出す。前世でアウェーの試合も経験しているせいか、この程度の喧噪で集中力は乱されない。それは天城も同じようだった。
「さて」
佐竹先生の一言で、あたしたちはリングを見る。
いよいよインターハイの決勝だ。
別にそれが夢だったわけじゃないけど、ここで勝てば何かが変わる気がする。
運命の女神が導いた二人。それが決勝で拳を交わすことに、何らかの意味はあるはずだ。
「よっしゃいくぞ」
「はい!」
前世で果たせなかった決着。それを付けるために、あたしはリングへと上がった。
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