16 / 44
君を想う
しおりを挟む
昔の自分探し(?)をやっていって、死んだ当時に付き合っていた菜々ちゃんとも話さないとダメかな~って気持ちになってきた。
菜々ちゃんはいわゆる有名人とかではないけど、「俺」のことを理解してくれる数少ない女性の一人だった。
ボクサーの恋人ってやっぱり価値観が変わっているんだと思う。競技の性質上ほとんどが経済的に苦しい人ばかりだし、毎日が練習ばかりだから休日は死体みたいにぐったりしている人が多い。
そんな人と付き合うのだから、女性の側は当然忍耐が要求される。
前世の「俺」は菜々ちゃんに散々苦労をかけた。
看護学校を出ているから怪我をすれば手当をしてもらったし、夜勤明けで眠いであろう時もわざわざ試合の応援に来てくれた。こんな天使みたいな人がどうして自分のことを好きになってくれたのか分からなかったけど、それでも「俺」のことを愛してくれるのであれば彼女は幸せにしなきゃと思っていた。
それなのに、「俺」は死んでしまった。
彼女が今どうしているのか、知るのが正直怖い。
なんで今まで放っておいたんだ? って言われるかもしれないけど、あたしだって彼女のことが心配じゃなかったわけではない。
菜々ちゃんはとてもよく出来た人だったし、「俺」のことをよく理解してくれている感じもした。
だからこそ絶対に幸せにしてやろうって思ったんだけど、その矢先に死んじゃって……。
なんていうか、その先を知りたくなかったというのがある。
不幸になっていても嫌だし、他の男とくっついていてもそれはそれで複雑だ。それが自分勝手な理屈なのは分かっている。だけど、それで割り切れないのも事実。だから、現実からあえて目を背けていた。
たしか色々とSNSをやっていた気がする。
でも、あんまり熱心じゃないのか、どれもほとんど更新がなされていなかった。
彼女にどうやって接触するか。
SNSで彼女に接触して「こんにちは。私はあなたの恋人の生まれ変わりです」ってメッセージでも送るのだろうか。いや、誰が見てもヤバい奴だよね、それ。
でも、住所は知っているんだよね。
どうしよう。直接会いに行っちゃおうかな?
……いや、やっぱりヤバい奴が来たって思われるよね。それ、妥当なリアクションなんだけど傷付きそう。
やっぱりあたしは今の人生を生きていくしかないのかな~。
最近だと「俺」の要素もだいぶすり減ってきた気がする。アイデンティティが統合されているのか、何なのかは知らないけど。
この問題は、あたしの中で結論が出てくるまで置いておこう。
冷静になって話せる、その時が来るまで。
菜々ちゃんはいわゆる有名人とかではないけど、「俺」のことを理解してくれる数少ない女性の一人だった。
ボクサーの恋人ってやっぱり価値観が変わっているんだと思う。競技の性質上ほとんどが経済的に苦しい人ばかりだし、毎日が練習ばかりだから休日は死体みたいにぐったりしている人が多い。
そんな人と付き合うのだから、女性の側は当然忍耐が要求される。
前世の「俺」は菜々ちゃんに散々苦労をかけた。
看護学校を出ているから怪我をすれば手当をしてもらったし、夜勤明けで眠いであろう時もわざわざ試合の応援に来てくれた。こんな天使みたいな人がどうして自分のことを好きになってくれたのか分からなかったけど、それでも「俺」のことを愛してくれるのであれば彼女は幸せにしなきゃと思っていた。
それなのに、「俺」は死んでしまった。
彼女が今どうしているのか、知るのが正直怖い。
なんで今まで放っておいたんだ? って言われるかもしれないけど、あたしだって彼女のことが心配じゃなかったわけではない。
菜々ちゃんはとてもよく出来た人だったし、「俺」のことをよく理解してくれている感じもした。
だからこそ絶対に幸せにしてやろうって思ったんだけど、その矢先に死んじゃって……。
なんていうか、その先を知りたくなかったというのがある。
不幸になっていても嫌だし、他の男とくっついていてもそれはそれで複雑だ。それが自分勝手な理屈なのは分かっている。だけど、それで割り切れないのも事実。だから、現実からあえて目を背けていた。
たしか色々とSNSをやっていた気がする。
でも、あんまり熱心じゃないのか、どれもほとんど更新がなされていなかった。
彼女にどうやって接触するか。
SNSで彼女に接触して「こんにちは。私はあなたの恋人の生まれ変わりです」ってメッセージでも送るのだろうか。いや、誰が見てもヤバい奴だよね、それ。
でも、住所は知っているんだよね。
どうしよう。直接会いに行っちゃおうかな?
……いや、やっぱりヤバい奴が来たって思われるよね。それ、妥当なリアクションなんだけど傷付きそう。
やっぱりあたしは今の人生を生きていくしかないのかな~。
最近だと「俺」の要素もだいぶすり減ってきた気がする。アイデンティティが統合されているのか、何なのかは知らないけど。
この問題は、あたしの中で結論が出てくるまで置いておこう。
冷静になって話せる、その時が来るまで。
2
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。



【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる