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酷薄な怪物
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真っ暗な部屋。突然、会議室の空気が冷え込んだ。
「クソが」
涼は悪態をつきながらブラインドを開く。まだ昼間だから、こうすれば光が届く。
「は?」
外の光景を見て思わずフリーズする。夢でも見ているみたいだ。
窓の外は昼間のはずなのに、真夜中のような暗闇が広がっている。誰もが異変に気付き、顔を見合わせた。
「何だ、この寒気……」
悠斗が呟くと同時に、彩花のスマホがけたたましく鳴り出した。
「えっ、誰!?」
彩花が慌てて画面を見ると、スマホの画面には『九奏RIPさん』の表示があった。
「ひいっ!」
彩花が思わず声を上げる。
「彩花、開くな!」涼が叫ぶが、彩花は恐怖で固まっている。まるで何かに操られてでもいるかのように、指が震えて画面をタップした。
刹那、スマホから不気味なノイズが流れ出し、会議室の照明が一斉に明滅を始める。
「うわ! なんだこの音!」
――みんなで行こうよ。
全員の背中に寒気が走る。
聞いたら死ぬ、呪いの言葉。クソリプさんの声――理不尽なロシアンルーレットが始まる。
彩花のスマホ画面に紫色の肌をした少女が映り込む。少女はケタケタと笑いながらこちらを見ていた。
「うわっ!」悠斗が腰を抜かし、彩花はスマホを落として悲鳴を上げた。
「彩花、大丈夫?」
結月が駆け寄る。その瞬間に彩花の目が真っ赤に染まり、口から血が噴き出した。
「いやあああ!」
陽菜が叫び声を上げる。蓮が血塗れの彩花を支えようとするが、彼女の体は異様な力で硬直し、首がめきめきと軋みながら不自然な方向へ捻じ曲がっていく。
「うわあ……うわあああああ!」
あまりにもおぞましい光景に蓮が絶叫する。会議室に骨のベキベキと折れていく不快な音が響く。その音を聞いただけで気絶しそうになる。
「助けて……助けて……」
彩花がかすれた声で呟いた瞬間、首が180度回転し、ガクリと力が抜けた。血だまりの中で、彼女は動かなくなった。
「彩花!」
――まだ、終わりじゃないよ。
「うわあああっ!」
会議室に再び不気味な声が響く。
「今度は、何だよ……」
悲しむ間もなく恐怖に震える悠斗。ほどなくして、ついさっき絶叫していた蓮が頭を抱える。
「ああああああああああああああ!! 痛い、痛い! 頭が痛いぃい!!」
「蓮、大丈夫か!」
翔太と涼が駆け付けるも、蓮は頭を抱えてうずくまっている。唐突に襲いかかる頭痛は、よほど深刻な痛みのようだった。
「ああっ! 痛い! 痛いいいいいいい!」
蓮とは反対側から別の絶叫が聞こえる。今度は陽菜が胸を押さえていた。
「陽菜ちゃん、どうしたの!?」
結月が駆け寄る。陽菜の口からも、夥しい量の血液が流れだしていた。
「ねえ、やめて! こんなことをして何になるの!?」
結月が天井に向かって大声で抗議する。返事はない。蓮と陽菜はひたすら苦しみ呻くだけだ。
こんな時にどうしろと言うのか。医学も科学も完全に無視した怨霊の呪い。それが仲間たちの肉体を完全にまで破壊しつくそうとしている。
「だめだ、もう……」
頭を抱えながら、土下座のような姿勢になった蓮が声を絞り出す。
「蓮……」
翔太はその先の言葉を失う。こんな時、どの神に祈ればいい。誰が救ってくれるというのか。
「みんなを……」
蓮そう言いかけた瞬間、彼の頭が破裂した。まるで脳に小型爆弾でも仕込まれていたかのように、首から上だけが綺麗に吹き飛んだ。
爆風で吹っ飛ばされた涼と翔太が、呆然とした顔で尻餅をついている。
「嘘、だろ……」
「きゃあああああ!!」
叫び声に驚いて向こうを見ると、陽菜の体が縦に真っ二つとなっていた。まるで人体模型に脳天から斧でも振り下ろしたかのように、陽菜の肉体が綺麗に分離していた。
結月がその場に這いつくばって胃の中身をぶちまける。こんなに残酷な見た目をした標本を見た後であれば、それも仕方のない話だ。
どれも現実とは思えない。戦場ですら超えていそうな惨たらしい光景に、涼たちはひたすら呆然とするしかなかった。
「クソリプさんだ……」
それまでずっと黙っていた伊藤健太郎が、呟いてから「ははは」と笑いはじめる。あまりにも異常な光景に、精神が破綻をきたしたようだった。
「クソリプさんが……クソリプさんが、俺たちを一人ずつ殺しに来てるんだ。ははははは!」
「健太郎、しっかりしろ!」
翔太が駆け寄るも、発狂した健太郎はひたすら感情を失った笑い声を上げ続けるだけだった。壊れた――端的に言って、もう戻れないところにまで精神が崩壊しているように見えた。
「畜生!」悠斗が壁を殴りつける。
「こんなところで仲間を失うなんて……!」
会議室に響いていた笑い声は、いつの間にか聞こえなくなっていた。暗闇に包まれた空も、知らぬ間に透き通るような青へと変わっている。
「俺たちはなんてバケモノに触れてしまったんだ」
涼が呆然としたまま呟く。
空は晴れたのに、目の前にはスプラッター映画さながらの光景が広がる。いっそ死体ごと悪夢が消えてくれたら、どれだけ心が安らかだったか。
確実なことは、クソリプさんの襲撃で三名の命が奪われ、あと一人は発狂したということだ。ここまでの無力感を突きつけられると、精神的に巻き返すのが難しい。
ともあれ、現実は動いている。
涼だけでなく、誰もが悪い夢を見ているだけであることを願った。
「クソが」
涼は悪態をつきながらブラインドを開く。まだ昼間だから、こうすれば光が届く。
「は?」
外の光景を見て思わずフリーズする。夢でも見ているみたいだ。
窓の外は昼間のはずなのに、真夜中のような暗闇が広がっている。誰もが異変に気付き、顔を見合わせた。
「何だ、この寒気……」
悠斗が呟くと同時に、彩花のスマホがけたたましく鳴り出した。
「えっ、誰!?」
彩花が慌てて画面を見ると、スマホの画面には『九奏RIPさん』の表示があった。
「ひいっ!」
彩花が思わず声を上げる。
「彩花、開くな!」涼が叫ぶが、彩花は恐怖で固まっている。まるで何かに操られてでもいるかのように、指が震えて画面をタップした。
刹那、スマホから不気味なノイズが流れ出し、会議室の照明が一斉に明滅を始める。
「うわ! なんだこの音!」
――みんなで行こうよ。
全員の背中に寒気が走る。
聞いたら死ぬ、呪いの言葉。クソリプさんの声――理不尽なロシアンルーレットが始まる。
彩花のスマホ画面に紫色の肌をした少女が映り込む。少女はケタケタと笑いながらこちらを見ていた。
「うわっ!」悠斗が腰を抜かし、彩花はスマホを落として悲鳴を上げた。
「彩花、大丈夫?」
結月が駆け寄る。その瞬間に彩花の目が真っ赤に染まり、口から血が噴き出した。
「いやあああ!」
陽菜が叫び声を上げる。蓮が血塗れの彩花を支えようとするが、彼女の体は異様な力で硬直し、首がめきめきと軋みながら不自然な方向へ捻じ曲がっていく。
「うわあ……うわあああああ!」
あまりにもおぞましい光景に蓮が絶叫する。会議室に骨のベキベキと折れていく不快な音が響く。その音を聞いただけで気絶しそうになる。
「助けて……助けて……」
彩花がかすれた声で呟いた瞬間、首が180度回転し、ガクリと力が抜けた。血だまりの中で、彼女は動かなくなった。
「彩花!」
――まだ、終わりじゃないよ。
「うわあああっ!」
会議室に再び不気味な声が響く。
「今度は、何だよ……」
悲しむ間もなく恐怖に震える悠斗。ほどなくして、ついさっき絶叫していた蓮が頭を抱える。
「ああああああああああああああ!! 痛い、痛い! 頭が痛いぃい!!」
「蓮、大丈夫か!」
翔太と涼が駆け付けるも、蓮は頭を抱えてうずくまっている。唐突に襲いかかる頭痛は、よほど深刻な痛みのようだった。
「ああっ! 痛い! 痛いいいいいいい!」
蓮とは反対側から別の絶叫が聞こえる。今度は陽菜が胸を押さえていた。
「陽菜ちゃん、どうしたの!?」
結月が駆け寄る。陽菜の口からも、夥しい量の血液が流れだしていた。
「ねえ、やめて! こんなことをして何になるの!?」
結月が天井に向かって大声で抗議する。返事はない。蓮と陽菜はひたすら苦しみ呻くだけだ。
こんな時にどうしろと言うのか。医学も科学も完全に無視した怨霊の呪い。それが仲間たちの肉体を完全にまで破壊しつくそうとしている。
「だめだ、もう……」
頭を抱えながら、土下座のような姿勢になった蓮が声を絞り出す。
「蓮……」
翔太はその先の言葉を失う。こんな時、どの神に祈ればいい。誰が救ってくれるというのか。
「みんなを……」
蓮そう言いかけた瞬間、彼の頭が破裂した。まるで脳に小型爆弾でも仕込まれていたかのように、首から上だけが綺麗に吹き飛んだ。
爆風で吹っ飛ばされた涼と翔太が、呆然とした顔で尻餅をついている。
「嘘、だろ……」
「きゃあああああ!!」
叫び声に驚いて向こうを見ると、陽菜の体が縦に真っ二つとなっていた。まるで人体模型に脳天から斧でも振り下ろしたかのように、陽菜の肉体が綺麗に分離していた。
結月がその場に這いつくばって胃の中身をぶちまける。こんなに残酷な見た目をした標本を見た後であれば、それも仕方のない話だ。
どれも現実とは思えない。戦場ですら超えていそうな惨たらしい光景に、涼たちはひたすら呆然とするしかなかった。
「クソリプさんだ……」
それまでずっと黙っていた伊藤健太郎が、呟いてから「ははは」と笑いはじめる。あまりにも異常な光景に、精神が破綻をきたしたようだった。
「クソリプさんが……クソリプさんが、俺たちを一人ずつ殺しに来てるんだ。ははははは!」
「健太郎、しっかりしろ!」
翔太が駆け寄るも、発狂した健太郎はひたすら感情を失った笑い声を上げ続けるだけだった。壊れた――端的に言って、もう戻れないところにまで精神が崩壊しているように見えた。
「畜生!」悠斗が壁を殴りつける。
「こんなところで仲間を失うなんて……!」
会議室に響いていた笑い声は、いつの間にか聞こえなくなっていた。暗闇に包まれた空も、知らぬ間に透き通るような青へと変わっている。
「俺たちはなんてバケモノに触れてしまったんだ」
涼が呆然としたまま呟く。
空は晴れたのに、目の前にはスプラッター映画さながらの光景が広がる。いっそ死体ごと悪夢が消えてくれたら、どれだけ心が安らかだったか。
確実なことは、クソリプさんの襲撃で三名の命が奪われ、あと一人は発狂したということだ。ここまでの無力感を突きつけられると、精神的に巻き返すのが難しい。
ともあれ、現実は動いている。
涼だけでなく、誰もが悪い夢を見ているだけであることを願った。
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