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第九話

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 きのこの生い茂る森。
それも、自分の背を越えるくらいに大きなぶどう色のきのこや、小指の爪くらいの血色きのこなど、気味の悪いものばかり。

「なにこのじめじめした森! 怖ぃー!」
「そんなこと言わないでよ、きゃまたん。私だって怖いんだから。」

そんな気味の悪い森を歩いているというのに、前を行くのは私。
──一応きゃまたん、心は乙女だからね。

「だいたいー! 『きのこの森』なんて転生先を決めちゃうビッグフェアリーもなんなのよ!」

この後も小一時間、きゃまたんは愚痴を私にぶつけてきた。
私はとにかく相槌だけ打つことにした。

──こんなのずっときいてたらもたないからね。



 もう十キロ以上歩いただろう、というところで森を出る。

「きゃまたん! 森を出たよ!」
「ホントー! はぴはぴるんるんだわぁ!」

森を抜けたそこには、草原が広がっていた。

「森を抜けたら今度は草原ー? ありえなーい!」
「……あ! でも向こうに小さい街が見えるよ!」
「ホント! じゃああそこで、グレートウィッチの城の情報を集めましょ!」

──本当に調子がいいんだから。




 草原は思っていたより広くて、もう一時間以上は歩いているというのに、大して近くなっていない。

「……もう……きゃまきゃまエネルギーが……」

──おかしいな……

 ふと横をみるときゃまたんはレジャーシートを魔法で出し、ピクニックのように広げている。

「とりあえず腹ごしらえよ……」

きゃまたんは心なしか声が低くなっている。
というか、男化してる……いや、男戻りか。

「じゃあ魔法で、おにぎらず出すねー!」
「……おにぎらず?」
「えぇー! 知らないの? 元日本人なのに?」

きゃまたんは、あらやだぁ、と魔法のスティックを振る。

──ティラリィラリィン……

「はい! おにぎらずぅー!」
「これ、ただのおにぎりじゃない?」
「ノンノン! お・に・ぎ・ら・ず!」

その少し見慣れない『おにぎらず』には、コロッケが挟まれていた。

「それにしても……なんで向こうの街にたどり着けないんだろう……」
「あぁぁぁぁぁぁぁ! きゃまたんわかっちゃった!」
「えっ! なに?」

 きゃまたんは、ふふっと笑っている。

──こっわ……
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