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第四話

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……ここ……私の部屋だ……。

無地のカーペットに普通のシングルベッドと勉強机。
白と木の色でまとまったシンプルな部屋だ。

──きゃまたんはポップだったし、夢の国は青と白の世界だったし、なんかやっぱり木の色がなくちゃ落ち着かないもんだな。

少し机の上などを見渡して、思い出す。

──そうだ!今日中に誰にお別れを言うか決めなきゃ!

たった一人にしか言えないお別れ。
親か友達か、初恋の人か先生か、それとも……言わないか。

でもやっぱり……。

階段をかけ降りて、リビングへと向かう。
──やっぱりお母さんしかいない!

「お母さん!」
「……? どうしたの甘夏。
 今日は早起きね。日曜よ?」

 お母さんは、食器を洗っていた。

「……かんな。」

ぼそっと繰り返してみると、なじみのある響きだ。
ドライカレーじゃない。甘夏だ。

「なに?甘夏でしょ?なんでぼうっとしてるのよ。」
「あのね、今日ちょっと話したいことが……あってね。」

お母さんは驚いた顔のまま、ふっと笑った。

「とりあえず座りましょ。」

時計はぴったり朝の七時を指していた。
座ったはいいものの、どこから話せばいいかわからない。

「あのね。……私、たぶん……たぶんなんだけど、今日か明日に死んじゃうの。」
「……死んじゃう?」

 お母さんは顔を暗くしていたが、まだ理解できず信じられないという顔だった。

「私ね、今日、オカマみたいな妖精にあったんだ。」
「え……」

あ、うん。わかってる。
たぶん頭大丈夫かって思われてる。
自分でも大丈夫だと思えないけど……。

「とりあえず、その妖精に、『あなたは明日死にますよ』って言われて、その妖精のあとついていったら、ビッグフェアリーって妖精にあって、転生後決めてもらって、お別れを言うためにここに来たの。」
「……あはは……それで、甘夏の転生後はなんなの?」
「魔女の弟子。」

とりあえず真顔でこたえるけれど、たぶん……つうじてないなこれ。

「ごめん、お母さん。これ冗談。 さっき見てた夢。」
「あ、そ、そうよね!よかったー驚かせないでよ!」

駄目だ……お母さんに言っても無駄だ。

私は父の仏壇の前に座って手を合わせる。
チーンと鳴り響く。

──お父さん……あの世は本当にあったんですね。
もうじき、そっちにいきますが、今は最後の一日を楽しみたいと思います。

……お母さんにお別れは言えなそうだし、誰にしよう。

ふと浮かんだのは、一年前、高校に入学してはじめてできた友達の顔だった。

小竹 結夏璃。
皆から、『ゆかりん』だの『ゆかりり』だの呼ばれていて、良い意味で皆の中心で、優しくて、面白くて、可愛くて……大好きな親友。

──行ってみるか……。
会わないで泣くより
会って泣いたほうが良い。
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