41 / 85
第一章 異世界召喚と旅立ち
041 暗躍系主人公
しおりを挟む
■椎名誠人 SIDE
マリルちゃんたちを呼びにいった門番と別れたあと、俺は門の近くにいた人からマリルちゃんのお父さん、カロンさんがどこに運ばれたのかを聞き出す。
そして、大通りまで引き返して、すこし小道に入った場所にあるその病院に辿り着いた。
とりあえず急いでカロンさんに回復魔法をかけなければいけないのだが……
魔法を使って病室に潜入してから回復魔法やポーションを使うべきか、それとも範囲回復魔法のエリアヒールでこの辺にいる人をまるごと回復させてしまうか……恐らく後者はとても目立ってしまうので、どうにもならなかった場合の最後の手段にしたい。
冒険の書を開き、眺めながら考える。
あまり派手じゃないものが良いんだけど……お?
魔法を使う為に本を眺めていた俺は、ターゲットのネームリストに「カロン = ラロイ」という名前を見つける。
魔法のターゲット選択の範囲内(半径25m)にいる人間は、全てこの冒険の書のネームリストに表示されるので、この病院の中にカロンさんがいるのは間違いないようだ。
よし、このまま病院の外から魔法で回復させてしまおう。
周囲に誰もいないことを確認した俺は、ネームリストからターゲットを指定した状態で魔法を起動する。
「呪文詠唱:エクストラヒール」
怪我の程度がわからないので、発動させるのは最上級の回復魔法だ。
全身が輝き、体中から光の粒子が立ち上る、魔法詠唱のエフェクトが発生する。
数秒の詠唱時間を経て、魔法発動を示す様にひときわ光が強くなった後、光の粒子は空に向かって霧散した。
暗がりで使うとなかなか綺麗なものなのだが、人前で使うには目立ってしょうがない、厄介な仕様だ。
ひとまずこれでカロンさんに、エクストラヒールが発動したはずだ、あとは心配して駆けつけた知り合いのフリをしてちゃんと回復したかどうか確認だけしておこう。
「すいませーん、どなたかいますか?」
病院のドアを開けて中を覗き込むが、反応がない。
まあいい、緊急事態だし勝手に入って確認してしまおう。
病院の中に忍び込み、適当に他の部屋を覗いていき、2つ目の部屋で当たりを引いた。
パンツ一枚に剝かれて、包帯でぐるぐる巻きにされているが、この人は門の前で会った親切なオジサンで間違いない。
「念のため、魔法で調べておくか。 魔法詠唱:アナライズ」
マリルちゃんのお父さんの体に触れて、敵の状態を調べる魔法をかける。
この魔法はゲーム中でも味方に使えた魔法なのだが、女性キャラに使うと3サイズまで表示されるので、セクハラや嫌がらせで使うことが一時期流行ってしまい、人に使えなくしてくれとの嘆願があった、そんな曰く付きの禁断の魔法だ。
もちろん俺は、嫌がらせ目的で使用したことなんて殆どない。
とりあえず、マロンちゃんのお父さんの状態を調べるのには問題ないだろう。
■カロン=ラロイ 34歳 ♂
種族:ヒューム Lv7
身長:187cm
体重:94kg
HP:72/72
MP:4/4
SP:19/31
弱点:火・嫁
アナライズで調べた、カロンさんのステータスが冒険の書に表示されている。
よし、とりあえずHPは満タンになっているので、回復には成功しているようだな、SPが減っているのは、さっきまでワヒーラとかいうのと戦っていたからだろう。回復魔法でスタミナは回復しないからな。
ジョブが無いのは、異世界の人がゲームの職業システムで強くなるわけではない、ということだろうからわかるのだが……Lv7? レベルの概念はあるのか? それとも俺の解析魔法が勝手に、カロンさんの鍛えっぷりならLv7相当だろうと判断して表示しているのだろうか……このへんはそのうち調べてみる必要があるかもしれないな。
しかし、34歳か……俺とそんなに変わらない歳なのに、もうあんなに大きな子供がいるんだな……う、うらやましい。
とりあえずは怪我も治っていそうだし、一安心といったところだろうか。
しかし改めて確認してみると、結構大変な様子だ……カロンさんの寝顔は安らかで、大怪我をしている風にはみえないが、ベッドのシーツとその脇の台の上に脱がせて置いてある服は、大量の血で真っ赤に染まっている。
「これはなかなかにホラーな見た目だな。この出血量は結構な重症だったのだろうけど、それが一発で治ってしまうとは……ほんと、回復魔法さまさまだね」
そんな独り言を言っていると、誰かが近づいてくる足音がする。
一応不法侵入なのだから、見つからないに越したことはないだろう。
魔法を使って隠れよう、この室内は明るいから"インビジブル"でなんとか身を隠せるはず! そう判断し魔法を素早く発動させ、俺は身体を透明にして部屋の隅に移動する。
「はぁ、まったく嫌な仕事だ。こやつの応急処置はしたが、家族が来るまでもつかどうかじゃろうな……ん? な、なんじゃこりゃ!」
独り言を言いながら部屋に入ってきた医者は、ベッドの上の完治したカロンさんを見て絶句している。
「ちょ、ちょっと目を離した隙に怪我が治っておる! 一体どうなっておるんじゃ」
驚いていた医者のおじいさんは、暫くカロンさんの脈拍を測ったり、包帯を外して怪我がないことを確認したりしていたが、「いかん、疲れているのかのう」と呟きながら部屋から出て行った。
さてと、カロンさんの回復は確認できたし、今のうちに外に脱出して、あとはワヒーラとかいうやつが、他に悪さをしていないか見に行ってみるか。
病院から出てきた俺は、暗がりに移動し、透明化の魔法を解除した後、門の方へと歩き出した。
マリルちゃんたちを呼びにいった門番と別れたあと、俺は門の近くにいた人からマリルちゃんのお父さん、カロンさんがどこに運ばれたのかを聞き出す。
そして、大通りまで引き返して、すこし小道に入った場所にあるその病院に辿り着いた。
とりあえず急いでカロンさんに回復魔法をかけなければいけないのだが……
魔法を使って病室に潜入してから回復魔法やポーションを使うべきか、それとも範囲回復魔法のエリアヒールでこの辺にいる人をまるごと回復させてしまうか……恐らく後者はとても目立ってしまうので、どうにもならなかった場合の最後の手段にしたい。
冒険の書を開き、眺めながら考える。
あまり派手じゃないものが良いんだけど……お?
魔法を使う為に本を眺めていた俺は、ターゲットのネームリストに「カロン = ラロイ」という名前を見つける。
魔法のターゲット選択の範囲内(半径25m)にいる人間は、全てこの冒険の書のネームリストに表示されるので、この病院の中にカロンさんがいるのは間違いないようだ。
よし、このまま病院の外から魔法で回復させてしまおう。
周囲に誰もいないことを確認した俺は、ネームリストからターゲットを指定した状態で魔法を起動する。
「呪文詠唱:エクストラヒール」
怪我の程度がわからないので、発動させるのは最上級の回復魔法だ。
全身が輝き、体中から光の粒子が立ち上る、魔法詠唱のエフェクトが発生する。
数秒の詠唱時間を経て、魔法発動を示す様にひときわ光が強くなった後、光の粒子は空に向かって霧散した。
暗がりで使うとなかなか綺麗なものなのだが、人前で使うには目立ってしょうがない、厄介な仕様だ。
ひとまずこれでカロンさんに、エクストラヒールが発動したはずだ、あとは心配して駆けつけた知り合いのフリをしてちゃんと回復したかどうか確認だけしておこう。
「すいませーん、どなたかいますか?」
病院のドアを開けて中を覗き込むが、反応がない。
まあいい、緊急事態だし勝手に入って確認してしまおう。
病院の中に忍び込み、適当に他の部屋を覗いていき、2つ目の部屋で当たりを引いた。
パンツ一枚に剝かれて、包帯でぐるぐる巻きにされているが、この人は門の前で会った親切なオジサンで間違いない。
「念のため、魔法で調べておくか。 魔法詠唱:アナライズ」
マリルちゃんのお父さんの体に触れて、敵の状態を調べる魔法をかける。
この魔法はゲーム中でも味方に使えた魔法なのだが、女性キャラに使うと3サイズまで表示されるので、セクハラや嫌がらせで使うことが一時期流行ってしまい、人に使えなくしてくれとの嘆願があった、そんな曰く付きの禁断の魔法だ。
もちろん俺は、嫌がらせ目的で使用したことなんて殆どない。
とりあえず、マロンちゃんのお父さんの状態を調べるのには問題ないだろう。
■カロン=ラロイ 34歳 ♂
種族:ヒューム Lv7
身長:187cm
体重:94kg
HP:72/72
MP:4/4
SP:19/31
弱点:火・嫁
アナライズで調べた、カロンさんのステータスが冒険の書に表示されている。
よし、とりあえずHPは満タンになっているので、回復には成功しているようだな、SPが減っているのは、さっきまでワヒーラとかいうのと戦っていたからだろう。回復魔法でスタミナは回復しないからな。
ジョブが無いのは、異世界の人がゲームの職業システムで強くなるわけではない、ということだろうからわかるのだが……Lv7? レベルの概念はあるのか? それとも俺の解析魔法が勝手に、カロンさんの鍛えっぷりならLv7相当だろうと判断して表示しているのだろうか……このへんはそのうち調べてみる必要があるかもしれないな。
しかし、34歳か……俺とそんなに変わらない歳なのに、もうあんなに大きな子供がいるんだな……う、うらやましい。
とりあえずは怪我も治っていそうだし、一安心といったところだろうか。
しかし改めて確認してみると、結構大変な様子だ……カロンさんの寝顔は安らかで、大怪我をしている風にはみえないが、ベッドのシーツとその脇の台の上に脱がせて置いてある服は、大量の血で真っ赤に染まっている。
「これはなかなかにホラーな見た目だな。この出血量は結構な重症だったのだろうけど、それが一発で治ってしまうとは……ほんと、回復魔法さまさまだね」
そんな独り言を言っていると、誰かが近づいてくる足音がする。
一応不法侵入なのだから、見つからないに越したことはないだろう。
魔法を使って隠れよう、この室内は明るいから"インビジブル"でなんとか身を隠せるはず! そう判断し魔法を素早く発動させ、俺は身体を透明にして部屋の隅に移動する。
「はぁ、まったく嫌な仕事だ。こやつの応急処置はしたが、家族が来るまでもつかどうかじゃろうな……ん? な、なんじゃこりゃ!」
独り言を言いながら部屋に入ってきた医者は、ベッドの上の完治したカロンさんを見て絶句している。
「ちょ、ちょっと目を離した隙に怪我が治っておる! 一体どうなっておるんじゃ」
驚いていた医者のおじいさんは、暫くカロンさんの脈拍を測ったり、包帯を外して怪我がないことを確認したりしていたが、「いかん、疲れているのかのう」と呟きながら部屋から出て行った。
さてと、カロンさんの回復は確認できたし、今のうちに外に脱出して、あとはワヒーラとかいうやつが、他に悪さをしていないか見に行ってみるか。
病院から出てきた俺は、暗がりに移動し、透明化の魔法を解除した後、門の方へと歩き出した。
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
【完結】平凡な容姿の召喚聖女はそろそろ貴方達を捨てさせてもらいます
ユユ
ファンタジー
“美少女だね”
“可愛いね”
“天使みたい”
知ってる。そう言われ続けてきたから。
だけど…
“なんだコレは。
こんなモノを私は妻にしなければならないのか”
召喚(誘拐)された世界では平凡だった。
私は言われた言葉を忘れたりはしない。
* さらっとファンタジー系程度
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる