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第一章 異世界召喚と旅立ち
026 ウサギが可愛そうだったので…
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寝起きのお花摘み騒動は、怖がって近くで用を済ませた田仲君のせいで、危うく夜営地点が汚染されるところだったり、用を足した後に局部をどうしたら良いのかわからなかった田仲君が焦っていたりと、一筋縄ではいかなかった。
だが、そこは俺が機転を利かしてなんとか切り抜けた。
焚き火の消化用に用意していた土で流れ来る汚染物質をせき止めたり、葉っぱで拭いたら、アソコがかぶれるんじゃないかと躊躇していた田仲君に、状態異常回復魔法をかけてあげたりと八面六臂の大活躍だったのである。
一連の騒ぎのせいで、眠気も飛んでしまったが仕方ない、再度寝転んでなんとか寝直そう。
「じゃあ寝るから、昼になったら起こして」
「はい、もう完璧に明るくなったし、大丈夫です!」
そうだね、もうバッチリお日様が顔を出しているね、暗いうちに寝始めておきたかったけど、文句をいっても仕方がない。
早く寝よう、オヤスミナサイ。
その後は太陽が真上に来るまで、特になにも問題なく寝て過ごすことができた。
俺の身体を揺すって起こしてくれた田仲君の顔と服が、土で汚れていること以外は。
「どうしたのそれ?」
「え? 何がですか?」
質問してみたのだが、ウサギはしらをきってきた。
「いや、顔とか服とか、なんでそんなに汚れてるの?」
「え、そんなに汚れてます? 気のせいじゃないですか、ずっとこんなもんですよ、それより、もう昼ですしご飯を食べましょうよ」
何か話したくない理由があるらしい。
どうせどうでも良いことだろう、ここはスルーしよう。
「あ、そう? じゃあ晩御飯と一緒だけど、ドラゴンシチューにしようか」
「おー、良いですね、アレはとても美味しかったですからね」
寝起きでステーキはキツイので、昼はシチューだけにしておいた。
このシチューは深皿の器とスプーンもセットなのがありがたい。
ステーキは皿とナイフとフォークがついてきていた。
もちろん使った後は再利用するために、木の葉っぱで綺麗に拭いてから鞄に仕舞ってある。
次に川を見つけたら、まとめて洗う予定だ。
さて、睡眠と食事を取ったので体の調子も良くなってきた。
そろそろ出発の準備をしよう。
焚き火あとに土をかけて消火したあと、囲っていた石を崩してバラバラにする。
しっかりと見たら野営跡だとわかるだろうが、ここは道から離れているのだから、これくらい痕跡が隠せれば良いだろう。
「それじゃあ出発しようか、田仲君、準備は良い?」
「良いですよ、行きましょう。駅馬車の奴らに追い付かないと行けませんからね」
俺が眠っている間に、近くの道を何台かの馬車が通って行ったらしい。
その見た目は王都で見た馬車と同じタイプの馬車だったそうなので、やはり俺たちが辿ってきた道であっていたのだろう。
駅馬車に近付きすぎるのは良くないだろうけど、バレない程度に後をつけるのがベストだろう。
取り敢えずは馬車を追いかけよう。
田仲君を背負い、俺は馬車が通って行った道を辿り始める。
移動2日目だが、今のところは疲労も大したことはない。
寝る前に念のためにかけた回復魔法が良かったのだろうか? それとも只単に俺の体のスペックがその程度では疲労しなかったのだろうか? それは分からないが、この調子だとあと2日走るくらいはなんとかなりそうだ。
「良いペースですね、これならすぐに馬車にも追い付けますよ」
俺の背中から田仲君がそう言ってくる。
「そういえば、どれくらい前に馬車は通りすぎていったの?」
「先輩が起きる30分くらい前ですかね? 三台続いて走っていきました」
先輩の方が断然速かったですよ! と力説する田仲君。
成る程、昼飯を食べていた時間も合わせると一時間差くらいだろうか? ここに来る前にも走っていたんだろうし、どこかで馬を休ませたりしていたら追い付けないことはないかもしれない。
よし、取り敢えずの目標を馬車にして、今日も一日頑張って走ろう!
しばらくは無言で走っていたのだか、喋っても体力的には大丈夫だし、少し俺が寝ている間のことを聞いてみた。
「俺が寝てから起きた昼までは、馬車以外はなにも来なかったの?」
「えっと、何でですか?」
田仲君が俺の背中でそわそわし始めた。
「結局夜の間は、田仲君が寝る前に出てきた白いウサギだけだったからさ、この辺りはどれくらい野性動物とかモンスターが出るのかと思って」
「先輩が寝てからも、その白いウサギ以外は出てこなかったですよ」
あれ? 俺が寝てからもウサギは出てきたのか?
「ウサギ、また出てきたの?」
「ええ、何度か僕の目の前をチョロチョロとしましたね。捕まえてやろうかと一瞬思ったんですけど、可愛そうだったんで見逃してやりましたよ。可愛そうだったんでね!」
………そうか、あの汚れはウサギとの死闘のあとだったのか。
その事には触れないのが武士の情けというものだろう。
「そうだね、ウサギを捕まえても、捌きかた全然知らないから逆に困ってたかもしれないよね。食料も今のところ足りてるし、捕まえなくて良かったんじゃない?」
「そうですよね! 僕もそう思ってたんですよ、捕まえなくて正解でしたよね♪」
おぅ、田仲君がとても嬉しそうだ。
でも、実際にはとても悔しかったのだろうな。
ウサギを捌けないというのは本当だけど、田仲君がウサギを食べると共食いっぽくて精神的にあまりよろしくないかなぁ……
もし、田仲君がウサギとの死闘に勝っていたら、寝起きでウサギの死体を持ったウサミミ幼女を見るハメになったのか。ゾッとするな……
俺は、田仲君に捕まらなかったウサギに深い感謝をするのだった。
だが、そこは俺が機転を利かしてなんとか切り抜けた。
焚き火の消化用に用意していた土で流れ来る汚染物質をせき止めたり、葉っぱで拭いたら、アソコがかぶれるんじゃないかと躊躇していた田仲君に、状態異常回復魔法をかけてあげたりと八面六臂の大活躍だったのである。
一連の騒ぎのせいで、眠気も飛んでしまったが仕方ない、再度寝転んでなんとか寝直そう。
「じゃあ寝るから、昼になったら起こして」
「はい、もう完璧に明るくなったし、大丈夫です!」
そうだね、もうバッチリお日様が顔を出しているね、暗いうちに寝始めておきたかったけど、文句をいっても仕方がない。
早く寝よう、オヤスミナサイ。
その後は太陽が真上に来るまで、特になにも問題なく寝て過ごすことができた。
俺の身体を揺すって起こしてくれた田仲君の顔と服が、土で汚れていること以外は。
「どうしたのそれ?」
「え? 何がですか?」
質問してみたのだが、ウサギはしらをきってきた。
「いや、顔とか服とか、なんでそんなに汚れてるの?」
「え、そんなに汚れてます? 気のせいじゃないですか、ずっとこんなもんですよ、それより、もう昼ですしご飯を食べましょうよ」
何か話したくない理由があるらしい。
どうせどうでも良いことだろう、ここはスルーしよう。
「あ、そう? じゃあ晩御飯と一緒だけど、ドラゴンシチューにしようか」
「おー、良いですね、アレはとても美味しかったですからね」
寝起きでステーキはキツイので、昼はシチューだけにしておいた。
このシチューは深皿の器とスプーンもセットなのがありがたい。
ステーキは皿とナイフとフォークがついてきていた。
もちろん使った後は再利用するために、木の葉っぱで綺麗に拭いてから鞄に仕舞ってある。
次に川を見つけたら、まとめて洗う予定だ。
さて、睡眠と食事を取ったので体の調子も良くなってきた。
そろそろ出発の準備をしよう。
焚き火あとに土をかけて消火したあと、囲っていた石を崩してバラバラにする。
しっかりと見たら野営跡だとわかるだろうが、ここは道から離れているのだから、これくらい痕跡が隠せれば良いだろう。
「それじゃあ出発しようか、田仲君、準備は良い?」
「良いですよ、行きましょう。駅馬車の奴らに追い付かないと行けませんからね」
俺が眠っている間に、近くの道を何台かの馬車が通って行ったらしい。
その見た目は王都で見た馬車と同じタイプの馬車だったそうなので、やはり俺たちが辿ってきた道であっていたのだろう。
駅馬車に近付きすぎるのは良くないだろうけど、バレない程度に後をつけるのがベストだろう。
取り敢えずは馬車を追いかけよう。
田仲君を背負い、俺は馬車が通って行った道を辿り始める。
移動2日目だが、今のところは疲労も大したことはない。
寝る前に念のためにかけた回復魔法が良かったのだろうか? それとも只単に俺の体のスペックがその程度では疲労しなかったのだろうか? それは分からないが、この調子だとあと2日走るくらいはなんとかなりそうだ。
「良いペースですね、これならすぐに馬車にも追い付けますよ」
俺の背中から田仲君がそう言ってくる。
「そういえば、どれくらい前に馬車は通りすぎていったの?」
「先輩が起きる30分くらい前ですかね? 三台続いて走っていきました」
先輩の方が断然速かったですよ! と力説する田仲君。
成る程、昼飯を食べていた時間も合わせると一時間差くらいだろうか? ここに来る前にも走っていたんだろうし、どこかで馬を休ませたりしていたら追い付けないことはないかもしれない。
よし、取り敢えずの目標を馬車にして、今日も一日頑張って走ろう!
しばらくは無言で走っていたのだか、喋っても体力的には大丈夫だし、少し俺が寝ている間のことを聞いてみた。
「俺が寝てから起きた昼までは、馬車以外はなにも来なかったの?」
「えっと、何でですか?」
田仲君が俺の背中でそわそわし始めた。
「結局夜の間は、田仲君が寝る前に出てきた白いウサギだけだったからさ、この辺りはどれくらい野性動物とかモンスターが出るのかと思って」
「先輩が寝てからも、その白いウサギ以外は出てこなかったですよ」
あれ? 俺が寝てからもウサギは出てきたのか?
「ウサギ、また出てきたの?」
「ええ、何度か僕の目の前をチョロチョロとしましたね。捕まえてやろうかと一瞬思ったんですけど、可愛そうだったんで見逃してやりましたよ。可愛そうだったんでね!」
………そうか、あの汚れはウサギとの死闘のあとだったのか。
その事には触れないのが武士の情けというものだろう。
「そうだね、ウサギを捕まえても、捌きかた全然知らないから逆に困ってたかもしれないよね。食料も今のところ足りてるし、捕まえなくて良かったんじゃない?」
「そうですよね! 僕もそう思ってたんですよ、捕まえなくて正解でしたよね♪」
おぅ、田仲君がとても嬉しそうだ。
でも、実際にはとても悔しかったのだろうな。
ウサギを捌けないというのは本当だけど、田仲君がウサギを食べると共食いっぽくて精神的にあまりよろしくないかなぁ……
もし、田仲君がウサギとの死闘に勝っていたら、寝起きでウサギの死体を持ったウサミミ幼女を見るハメになったのか。ゾッとするな……
俺は、田仲君に捕まらなかったウサギに深い感謝をするのだった。
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