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第一章 異世界召喚と旅立ち

025 お花と女の子

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 結局今回の夜営は、しばらくは二人とも一緒に起きて見張り、田仲君は途中で寝て、そこからは俺一人で見張るということになった。

 暗闇から襲撃されたらLv1の田仲君は一発でやられてしまうので、明るくなるまでは俺が見張りをするのだ。
 そして、明るくなってからしばらくは交代で俺が寝て、昼前くらいに起きてから出発するという作戦だ。

 実質的に戦力は俺だけなのだからコレは仕方ないだろう。迷宮都市に着くまではこの体制でいくしかない。



 夜営が始まってしばらくは、田仲君に渡した初心者七つ道具の説明や、冒険の書の使い方講座を開いたりしていたのだが、田仲君の体力の限界が来たらしくこっくりこっくりと船を漕ぎ始めた。

 肉体が子供なのだから仕方がないな。
 俺におぶられているだけでも結構体力を消費してしまうのだろう。
 今日は色々と大変だったのだからしっかり休ませよう。

 田仲君が寝てからは、冒険の書を使ってネットを見たり魔法やスキルの検証をしたりして過ごした。

 そういえば、冒険の書のネット接続は普通に繋がるのだけど、どういう仕組みなんだろう。
 メールとかを出したら、あちらとのやり取りができるのか?

 それから色々と試してみたのだが、こちらからのアクセスは問題ないのだが、向こうの人間からのリアクションは全く帰ってこないようだ。
 でも、ネットへのアクセスが出来るということは、コンピューターは返事を返してくれているということだから、つまりは……どういうことだ?
 まあ、よくわからないけどネット検索やサイトの閲覧くらいは問題なく出来るということだ。

 おかげで暇な時間を潰すのには事欠かない。
 もしこの本がなく、ただ起きているだけの仕事だったら、きっととんでもなく苦痛だろう。
 今後は夜営のお供に冒険の書は必須だな。

 そんな感じで、動画サイトの動画を見たり、合間に斥候スカウトのスキルの"索敵サーチエネミー"を発動させて、半径100mに敵性生物がいないかをチェックしたりして過ごしていると、だんだんと空が白んできた。

 あぁ、これで俺は2日徹夜だな。
 昨日は城からの脱出で、今日はモンスター対策で起きていたのだから、こっちの世界に来てから一度も寝てない。

 三十歳を過ぎてからは徹夜すると次の日がかなり辛くなってきていたのだ。
 今の身体は17歳になっているのかもしれないけど、それでも2日は無茶だろう。

 よし、そろそろ田仲君を起こして、見張りの交代をしてもらおう。
 2日も徹夜している事実を認識したら、なんだかとても眠くなってきた。

「田仲君、そろそろ起きて。明るくなってきたから、見張りを交代してくれない?」

 隣で丸まって眠っている田仲君を揺すって起こす。

「あれ、もう朝ですか?」
「まだ日の出前だけど、もう充分明るくなってきたし、敵が来たら遠くからでも分かるでしょ。何かあったらすぐ起こして良いから見張りを交代して欲しいんだよね」

 寝ぼけ眼を擦りながらフラフラと立ち上がるウサ耳幼女は、周りを見渡す。

「確かに、これだけ明るかったらなんとかなりそうです。あとは僕に任せて、先輩は寝ちゃってください」

 田仲君は頭をプルプル振ったり、ほっぺをペチペチ叩いたりして目を覚まそうとしている。

 そんな田仲君に念の為、ありったけの強化魔法をかける。
 どのくらいの時間効果があるかまだ検証をしていないので、いつ強化が切れるのか分からないが、無いより良いだろう。

 強化の魔法を田仲君にかけ終わったら、"索敵"をかけて最後にチェックをしてから、俺は鞄を枕に横になった。

「じゃあ、あとはよろしく、おやすみ~」

 そう言って目を閉じる。

「はい、おやすみなさい」



 暫くして、うとうとし始めた頃に、俺は身体を揺すられて起こされた。

「なに? まだ全然時間たってないじゃん」

 空の様子は、俺が寝始めた頃と殆ど変わっていない。
 まだ数分しかたっていないんじゃないか?

「すいません先輩、ちょっと良いですか?」

 何かあったのだろうか? 眠いけど仕方がない。ちゃんと起きよう。

「どうかした?」

 上体を起こして田仲君を見ると、何やらモジモジしている。

「あの、ちょっとお花を摘みに行きたいんですけど~、ゴブリンとか怖いんでついてきてもらえないですか?」

 花? なんでこのタイミングで花を摘む必要が?
 コイツはバカなんじゃなかろうか。

「えぇ~、明るくなってからにしたら良いじゃん。眠いんだからそういうのは勘弁してよ」

 そう言って寝転がって寝ようとしたら、袖を捕まえられる。
 何やら必死な形相だ。

「いやいや、そんなに長い時間我慢できないですよ。それこそ勘弁してくださいよ!」
「だって花でしょ? 今やる必要無いんじゃない? 俺、2日寝てないんだから寝かせて欲しいんだけど」

 うぐぐぐっと唸ってこちらを睨み付けてくるウサ耳幼女。

「ちょっと先輩、流石に悪趣味じゃないですか? 僕のかわいいお口から聞きたいってことですか? マジですか」

なんのことだ? 

「くぅ~っ、なんか男の体より我慢がきかないような気がする。悔しい……でも、も、もぅ限界ぃ!」

 涙目で下から睨み付けてくるウサミミ幼女。
 なんだか田仲君は精神が体に引っ張られているんじゃないのか? かなり子供っぽくなって来ている気がする。
 こんなんじゃ元の体に戻ったときにとてつもなくキモいアラサー男が誕生してしまうぞ。
 そうなったら田仲君との付き合いも考えないといけないレベルの事態だ。

 っていうか怖いから付いてきてくれなんて、子供の頃に妹にトイレについてきてくれと頼まれたとき以来じゃなかろうか。

 ん? トイレ? も、もしかして……それか!?

「オシッコですよ、オシッコ! これで満足ですか先輩? 可愛い僕の口から言ってあげましたよ。僕はオシッコに行きたいんですよ!」



 わかりづらいよ、おんなの子じゃないんだから……あ、いや、この場合はどうなんだろうか?

 わからなかったが、取り敢えず謝っておいた。
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