声の幽霊と恋の歌

村井 彰

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夏祭りと呪いの森 前編

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 暗い暗い森の奥深く、一歩足を踏み入れるごとに、身も心も少しずつ闇に蝕まれて溶けていく。黒く濁った感情に心は囚われ、もはや自分が何者であったのかさえ思い出すことはできない。記憶も、思考も全て失い、己の中に最後に残ったものはただ一つ。
 純粋な、憎しみだけ。

 *

 長かった梅雨も明け、空はすっかり夏の色に染まっていた。冷房の効いたカフェの店内から見える景色は、雲一つない晴天だ。期末テストも無事終わったし、澪の気分も今日の空のように晴れやかだった。
「いい天気だねえ」
「そうだね。私はちょっと曇ってるくらいの方が好きだけど」
 向かいに座った詩穂が、アイスコーヒーのストローを咥えながら答える。まあ、たしかに詩穂は、太陽の下で活発に遊び回るタイプではない。
「で?夏休みの予定はどうなの、澪」
「夏休み?うーん、今のところは特にないかなあ」
 暑い中出歩くのも疲れるし、思う存分家でごろごろできたらそれでいい。そう思って正直に答えたら、なぜか詩穂が眉を吊り上げて怒りだした。
「なんで何もないのよ!中條とデートの約束くらいしてないの?付き合ってるんでしょ!?」
「な、なんで急に中條くんの話になるの」
 中條聖也。澪達のクラスメイトであり、春先に起きた不思議な出来事をきっかけに親しくなった人で、澪が想いを寄せる相手でもある。そしてその想いは、本人にも直接伝えた。伝えたの、だが。
「……は?付き合ってない?あんたら結構良い雰囲気だったじゃん。まさかあの流れで振られたの?」
「ふ、振られてはないよ。一応……」
 ずっと悩みを抱えていた聖也に、それでも今の貴方が好きだと、澪は言った。一人の男の子として、"そういう意味で"好きなのだと。そして、それに対しての聖也の返答はこうだった。
「お互いのこと、まだほとんど知らないから、まずは友達になって欲しい……?なにそれ、おままごとかよ。ヘタレすぎでしょ中條」
「いや……あの、もうちょっと言い方があるじゃない?奥手とか、純情とか……」
「純情すぎる男子高校生とか逆に不健全だわ」
 そんなにバッサリ切り捨てなくても。澪の方にしても、聖也と具体的にどうこうなりたいなんて考えていた訳ではないから、今は友達でも十分なのに。
「それで?"お友達の中條くん"とは、その後何かあったわけ」
「えーっと……詩穂がいない時に二人でお昼食べたりはした、かな……」
「マジのおままごとじゃん」
 呆れたように詩穂が言う。そんなことを言われたって、彼氏どころか男の子の友達すらいた事がないんだから、他にどうしたらいいのかなんて、澪にだってわからない。
 縮まってしまった澪の前で、急に呆れ顔を引っ込めた詩穂が、にっこりと微笑んだ。澪は経験上知っている。こういう顔をする時の詩穂は、たいてい直後にとんでもないことを言い出すのだ。
「よし、わかった。今月末に船水神社で夏祭りやるでしょ?アンタ、あれに中條と二人で行ってきな」
「え……ええっ?!そんなこと急に言われても」
「十日以上あるんだから全然急じゃないし、友達とお祭り行くくらい普通でしょ。私とも行ったことあるじゃん」
 それはたしかにそうだけど。好きな男の子と二人で出かけるなんて、まるでデートみたいだ。澪にとっては、そんなのアニメや漫画の世界の話でしかなかったのに。
 口ごもる澪に対して、詩穂がじれったそうに身を乗り出してくる。
「あのね、澪。ぼさっとしてたら三年なんてあっという間だよ?卒業したら会う機会なんてほとんどなくなるし、その前に来年クラス替えだってあるし。今が一番チャンスだってこと、わかってる?このままずっと友達止まりでもいいの?」
「それは……ちょっと困る、けど」
 詩穂の勢いに若干押されつつ答える。たしかに、卒業したらそれっきりでは、あまりに寂しい。だけど、こんな突然じゃ心の準備が。
「そうよね、困るよね。はい、じゃあスマホ出して、今すぐ中條に連絡して。さすがに連絡先くらいは交換してるでしょ?」
「えっ、今から?」
「こういうのは思い切りが大事なの」
 そうして、なぜか詩穂に見守られながら聖也にメッセージを送る羽目になり、結果的には無事約束をとりつけることができた。
 しかし、安心したのもつかの間、大変なのはここからだった。夏祭りまで十日余り。まずは当日着ていく服から考えなくてはいけないということで、なぜか澪よりも乗り気な詩穂に引きずられるようにして、日が暮れるまで服屋をハシゴすることになったのだった……。

 そんなこんなで慌ただしくしているうちに日々は過ぎ、終業式を終えて、世間はすっかり夏休みムードになっていた。
 そして、今日は待ちに待った聖也との約束の日。待ち合わせ時間は夕方の五時だが、朝からどうにも落ち着かない気分のまま一日の大半を過ごしてしまった。軽く片付けておこうと思った宿題も、ノートを広げただけで手をつけられず、何度も何度も自分の姿を鏡に映して確認してしまう。服は詩穂に選んでもらったものだし、メイクも教えてもらった通りなんだから、大丈夫なのはわかっているけど。
「澪?あんた、そろそろ出かけなくて平気なの」
 今日何度目かの身だしなみチェックをしていると、いきなり部屋のドアが開いて母が顔を出してきた。ついさっき髪を結うのを手伝ってもらったために、これからどこに何をしに行くのか、だいたいのところはバレてしまっている。
「ちょ、お母さん!入る前に声かけてって、いつも言ってるじゃん!」
「ごめんごめん。それで、あんた船水神社で待ち合わせしてるんでしょ?今四時半だけど間に合うの?」
「えっ、嘘」
 驚いて時計を確認する。本当だ、いつの間にかこんな時間になっている。待ち合わせ場所までは、ここから歩いて三十分はかかるため、今すぐ家を出てもギリギリになってしまう。早めに着いて待っているつもりだったのに。
「やばい、もう行かなきゃ」
 慌てて、ベッドの上に置いていたバスケット風のカゴバックを引っ掴んで、玄関に向かう。これも詩穂に選んでもらったもので、持ち手の片側に大きめのリボンがついた可愛らしいデザインだ。とにかく澪は可愛い系に全振りした方がいい、と言ってこれを渡された。本当は詩穂みたいなカッコよくて大人っぽい服も着てみたいけど、澪にはあまり似合わないことも知っている。
「いってきまーす!」
「いってらっしゃい、気をつけてねー」
 母の声を背中に聞いて、家を飛び出す。
 夏の太陽は、この時刻でも灼けるように眩しい光を放っている。聖也に会うのは、終業式の日以来だった。頬が熱くなるのは、照りつける日差しのせいだろうか。
 いつもより踵の高い靴を履いて、澪は太陽の下を駆け出すのだった。

「はあ……間に合った……?」
 息を整えながら、参道から若干外れた通りを見回した。この辺りにも既に屋台が出ており、そこそこの人出があるものの、聖也らしい人影は見当たらない。時刻を確認すると、約束の時間の五分前。どうやら、なんとか間に合ったようだ。
 汗を拭いて、化粧が崩れていないか鏡を見ながら確認しているうちに、すぐに聖也もやって来た。時間は五時ぴったり。結構几帳面なところもあるらしい。また聖也の新しい一面を知れた気がする。
「ごめん、待たせちゃったかな」
「あ、ううん。私が勝手に早く来ただけだから」
 申し訳なさそうに眉を下げる聖也は、涼し気な淡いブルーのシャツと、真っ白なジーンズを身につけていた。シンプルであまり特徴のない服装の中で、細い腕に見合わない無骨なデザインの腕時計だけが、妙に印象的だ。
 聖也は目の前に立つ澪をしばし見つめ、緊張気味の澪に対して一言だけ、こういった。
「いつもと雰囲気違うね」
 聖也には制服姿しか見せたことがないので、違うのは当然だ。澪が聞きたいのは、いつもと違ってどうなのか、ということである。
 ちなみに今澪が着ているのは、肩フリルがあしらわれたオレンジ色の花柄ワンピース。下はミニ丈のフレアスカートになっており、詩穂にはそのままでいいと言われたが、さすがに落ち着かないので、デニムのショートパンツを合わせていた。さらに普段は適当におろしているだけの髪も、今日はゆるく巻いて、耳の下で二つに分けて結んでいる。いつもの澪からは考えられないくらい、目一杯おしゃれした格好だった。
 まあ、だからといって手放しに褒められても困ってしまうし、そもそも勝手にしてきたことに感想を求めること自体が間違いなのかもしれないが。それでも、こうあっさりした反応だと少しがっかりしてしまう。
「えっと、じゃあ行こっか?」
「あ、うん」
 聖也に誘われ、横に並んで歩き出す。いつもなら、澪より聖也の方がほんのちょっと目線が高いけれど、今日は靴のせいでほとんど同じ高さになっていた。とはいえ、聖也の方にそれを気にする様子はない。
「まずお参りしていっていいかな」
 そういって聖也が神社の方を指す。ここからでも、木々の合間から本殿の屋根がわずかに見えた。
「もちろんいいよ。中條くん、ちゃんとお参りとかするんだね」
「あー……まあね。ばあちゃんが信心深い人で、そういうのはちゃんとしろって昔から言われてるんだ。まあ本人はクリスチャンなんだけど」
 クリスチャン。その単語で、ひとつピンと来た。
「中條くん、もしかして賛美歌とか歌ったことある?」
「え、うん。子供の頃、日曜礼拝とかに連れて行かれて歌ってたけど、なんで?」
「あ、えっと……中條くんだったら、そういうのも上手いんだろうなーって」
 春先に起きた出来事で、ヘッドホンから聞こえてきたのが、なぜ賛美歌だったのか。そのことについて一応の納得がいった。幼い聖也にとって、賛美歌は象徴的な歌だったのだろう。
「もしかして、聖也って名前もおばあちゃんがつけたの?」
「そうだよ。最初は"聖なる夜"で聖夜にするつもりだったけど、うちの両親と相談して今の名前になったって。僕としては両親に感謝かな」
 徐々に増えてきた人の流れに乗って、聖也と二人、とりとめのない話をする。詩穂に見られたら、またおままごとだと言われてしまうかもしれないが、澪にとってはこれだけでも十分だった。
 本当は、手を繋げればもっと嬉しいけれど、いきなりそれは欲張りすぎだと思うから。だから今は、聖也の隣を歩けるだけでいい。

 正直なところ参拝のマナーなんてうろ覚えだったので、澪の方は見よう見まねではあったものの、無事に神様への挨拶をすませ、二人そろって境内から屋台を見て回ることにした。
 人混みのざわめきや、鉄板の上で油がはじける音の中、子供たちが玩具の笛から甲高い音を響かせながら、澪達の横を走り去っていった。徐々に日が傾きだした空とは反対に、周囲には夏らしい喧騒が満ちていく。
 神社の前の通りも、今日は歩行者天国になっており、一面に様々な屋台が並んでいる。キラキラした宝石のようなリンゴ飴に、キャラクターもののカラフルな袋にはいったわたあめ、色鮮やかな飴細工。普段なら、何の変哲もない長い道のりも、今日はこんなにもにぎやかで楽しい。それは祭りの特別感だけではなく、きっと隣に聖也がいてくれるからだろう。
「結構はしっこの方まで来ちゃったね」
 歩いているうちに、どうやら表通りから少し外れた裏道に入ってきてしまったようだった。この辺りにも屋台は出ているが、古びた本や骨董品ばかりが並び、表通りに比べると少々地味な雰囲気だ。
 その中で一箇所、腰の曲がったお爺さんが一人で、手作りらしいアクセサリーを売っている屋台があった。アクセサリースタンドにぶら下げられた、小さなストラップに目を惹かれて、澪は思わず立ち止まる。二つでひと組のセットになっているそれは、透明で丸いカプセルの中に、小さな造花のひまわりが閉じ込められたデザインになっていた。右側のカプセルの中には黄色の、そして左側にはピンクの花が、それぞれ小さな花びらを咲かせている。澪がそれを見ていると、横から聖也の白い腕が伸びてきて、ストラップをそっと掴んだ。
「すみません、これください」
 澪が驚いているうちに、さっさと会計を済ませた聖也が、ストラップを差し出してきた。
「はい、これ」
「えっ、あ、お金……っ」
 財布を出そうとするのを制して、聖也が笑う。
「いいって。今日誘ってくれたお礼ってことで」
「そ、そんなのいいのに……あの、でも、ありがとう」
 初めて聖也から貰ったプレゼント。さっき屋台の上で飾られていた時よりも、もっとずっと輝いて見えた。
 そうだ。ふと思いついて、ストラップを片方台紙から外す。
「中條くん。良かったらこれ、半分こしよ」
 そういって、黄色い方のひまわりを聖也に差し出した。今度は聖也の方が戸惑ったような顔をする。
「え。でもそれだと、僕とおそろいになっちゃうけど……」
「うん。中條くんが嫌じゃなければ……だめ、かな」
 緊張しながら聖也の様子を窺う。少し考えるような間をおいて、聖也が澪の手からストラップを受け取った。
「……ありがとう」
 そういって聖也がはにかんだ。こんな些細なことだけど、ずいぶん距離が縮まったように感じる。
 それから、聖也は自分のスマホに、澪はバッグのリボンと一緒に、おそろいのストラップをつけた。好きな人と同じ物を身につけている。ただそれだけのことで、こんなにも心が躍るなんて、少し前なら想像もしなかった。
「表通りの方は、結構人が増えてきたみたいだね」
「だいぶ日も暮れてきたから、これからもっと増えるんじゃない?……このまま裏通りの方から回って行こうか。人混みってあんまり得意じゃなくて」
「そうだね。私も人多いところは苦手」
 もともと澪は圧倒的にインドア派だから、あちこち遊び歩くのはそんなに得意じゃないし、聖也も確実にこちら側だろう。休み時間には、よく一人で本を読んでいるところを見かける。
 裏通りをさらに奥に進んでいくと、わずかに並んでいた屋台もなくなり、その代わりに暗い森の傍に出る。ここ船水神社の鎮守の森だ。
「ふう……この辺りはちょっと涼しいね」
 道路と森を仕切っている石製の柵に持たれかかって聖也が息をつく。たしかに、熱気に満ちた表通りとは違い、ここは森の奥から冷たい風が流れてくるようだ。
「夜になっても表の方は暑かったもんね」
「うん……あ、そういえば、篠原さんはこの森の噂知ってる?」
「噂?」
 澪は首を傾げた。家からそんなに近い訳でもないし、中に立ち入ったこともなければ噂なんて聞いたこともない。
「うん。あのね、夜中にこの森にカップルで入ると……」
「何?永遠に結ばれる、とか?」
「いや、一週間以内に二人とも死ぬって」
 二人の間に微妙な沈黙が流れる。
「………………えっと、なんで?」
「丑の刻参りってあるでしょ?あれを本気でやる人がいたらしいんだよね。で、夜中に肝試ししに来て、たまたまそれに遭遇しちゃったカップルが、その直後に事故か何かで死んだんだって。それ以来、ここに入ると呪われるって噂が流れるようになったんだよ」
「そ、そっか……」
 なぜ、好きな男の子と二人で遊びに来て、こんなところで怪談話なんて聞かされているのだろう。ありがちな話ではあるが、まさにその現場となった場所で聞かされるのは、さすがに薄気味悪い。
「まあ、あくまでただの噂だけどね。夜中に誰かが立ち入ったら危ないから、人避けのためにわざと流したとかじゃないのかな」
 森の奥の暗闇に目を向ける。聖也の言う通り、そんなものはただの噂で、呪いなんてある訳がない。と言いたいところだが、澪は実際に説明のつかない不思議な現象を経験したことがあるのだから、頭から全てを否定する気にはなれなかった。
 もちろん、澪が経験したあれは呪いのようなネガティブなものではなかったし、こうして聖也と親しくなるきっかけとなったのだから、むしろ感謝しているくらいではあるのだが。
「そろそろ行こっか篠原さん。だいぶ暗くなってきたし」
 澪の気も知らず、聖也が呑気に言う。もう少し二人きりでいられたら、とは思うけれど、遅い時間になると両親に叱られてしまう。
「篠原さん、家の方まで送るよ」
「え、でもそこそこ歩くし、中條くんの家とは反対じゃない?」
「大丈夫だよ、どのみちバスで帰るし」
 聖也がそういってくれるなら、澪の方に断る理由なんてない。これで、もうしばらくは一緒にいられそうだ。
 つい浮ついてしまう心を抑えながら、聖也の後に続いて、この場を離れようとした、その時。
 カツン、という小さな音が、足元から聞こえてきた。目を向けると、石柵の下をくぐり抜けて、何か小さくて丸いものが転がっていくところだった。嫌な予感がして、自分の持ち物を確認してみる。……ない。バッグに付けていたはずの、聖也に貰ったストラップの飾り部分が、無くなっている。
「あれ?ちょ、篠原さんどこ行くの!?」
「ごめん、ちょっと落し物!」
 聖也の声を振り切って駆け戻る。柵の向こうは若干傾斜しており、その奥は街灯の灯りも届かない暗闇だった。見失ってしまう前に早く見つけなきゃ。
 たしかこの辺りに転がっていったはず。柵を乗り越えてスマホのライトをつける。……あった。背の低い草むらの中で、ライトの光を反射して、ぽつんと丸いカプセルが転がっている。
「良かった……」
 安堵の息をついて、小さなひまわりを手の中に包み込む。聖也もすぐに後を追ってきたようだった。
「もう、いきなり走り出すからびっくりしたよ」
「ごめんね、ストラップが外れちゃって」
 もう落とさないように、飾り部分を化粧ポーチの中にしまう。ちゃんと直せるだろうか。帰ったら父にお願いしてみよう。
「さあ、早く行こう篠原さん。こんな暗いところにいたら危ないよ」
「うん……」
 聖也に答えて、外に出ようと振り返った、その瞬間。
 目の前にある光景の意味が理解できず、澪は言葉を失った。
「なんで……出口が、なくなって、る……?」
                                                                             
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