Rotstufen!!─何もしなくても異世界魔王になれて、勇者に討伐されかけたので日本に帰ってきました─

甘都生てうる@なにまお!!

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第3章 (元)魔王と勇者は宇宙樹の種子と

19話2Part 葵雲VSカエレスイェス、開幕です!

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「とゆことで......カエレスイェス、僕と遊んでくれるんでしょ?きゃははっ」

「......ははぁ、これはまずい」


 カエレスイェスは葵雲が自身の背面に展開させた攻撃魔法陣、それもアクティブな物ばかりで大量の魔力を秘めており今にも魔力弾道プラズマなり魔炎なり吐きそうだ。......しかもその数およそ200、一般人なら即刻失禁して気を失うレベルの光景だ。


「あははっ、この位避けられるよね?きゃは、きゃははっ」

「う......だいぶ厳しそうだけどねぇ......」

「あはっ!じゃあ、いっくよ~?」

「っ!!」


 ガッ、ガガガガガッ


 しかしカエレスイェスは仮にも騎士、悪魔を目の前にして退く訳にもいかず手に持つ白く光る剣を構えた。そして攻撃魔法陣から連続で繰り出される超高速の魔力弾をフライ飛行魔法を使って避けながら、空中を滑走する葵雲を高速で追った。


「っそらぁっ!!」

「あっははははははは!!!」


 そして高らかと笑い声を上げながらカエレスイェスからの遠方斬撃を避けながらも自身の近くにも作った攻撃魔法陣から魔力弾道プラズマを射出し続け、高速でひらひらと舞い飛んでいる。


「でぇいっ!!」


 スカッ


「当たってないよ~?きゃは、あははっ!!」


 カエレスイェスが距離を詰めていって剣で斬ろうとしたり、突き刺そうとするのだが、間一髪のところで避けられる......いや、わざとすんでのところで避けられているのだ。


「んもー、もうちょっと命中率と派手さがある攻撃できないの?僕の弾幕が君にばっかり当たるだけで、カエレスイェスの攻撃、全然当たってないよ~?僕無傷だよ~!!」

「っやれやれ、流石は"空天の覇者"だよ~。無邪気だなぁ」


 煽るように大声でまくしたててくる葵雲に困惑と焦りの表情を見せたカエレスイェスは、目の前の大悪魔に勝てる算段が

 "空天の覇者"という葵雲の称号、それは自他ともに認める飛行技術の高さから来たものなのだ。しかしそれはただ"飛ぶ"ことだけに関してではなく"飛ぶ"に"戦う"を足した、"空中戦闘のプロ"として彼を称える称号だ。勿論葵雲にはそう呼ばれるだけのものがある。

 まずは基本的に"地上からの攻撃は9割9部9厘避けることができる"。その時点で強いのだが、それプラス"飛行部隊による攻撃も同じく避けることができる"、更には"1晩で160万人の命を絶やすことができる"ほどの火力を持ち合わせている。これだけ聞けば最強だ。

 しかし、如何せん考え方が幼稚であったり何かと加減を知らないところが災いし、1代目魔王軍や伝説の聖剣勇者·ラディオールには何らかの方法で地上に降ろされて倒されている。

 ......とはいえいくら考え方が幼稚であろうとも、加減を知らなくとも圧倒的な火力と回避能力はとても驚異的であり、いつの時代でも大抵の人間や勇者軍兵の頭を悩ませているのだが。


「ぅおわっ、っちぃっ!!」

「ほーらほら、避けないと死んじゃうよ?きゃははっ」

「っととと......とち狂った悪魔も今までたくさ......いった!沢山見てきたけど、君みたいにちゃんと自我を持ったまま狂ってるやつは初めて見たなあ......!っおおおお!?」


 剣で弾いて追いかける攻撃を仕掛けて弾幕を避ける、という作業は確実にカエレスイェスのスタミナも葵雲のスタミナも削っていっていた。両者若干息を上がらせて、協会真上の空で魔力と神気をぶつかりあわせながら飛び回っている。

 ......しかし攻撃はカエレスイェスにばかり命中し重軽傷を多々負わせているのに対して、葵雲は俄然無傷のままで、傷だらけになりながらもずっと追っかけてくる騎士に嘲笑を見せつけた。


「カエレスイェスってまっぬけー!!」

「っとおおおおおおりゃああああああ!!!」


 サッ


「当たらないよ~!!きゃははははっ!!!!」

「う~むぅ......さてどーしたものかなあ、攻撃がことごとくすかぶる」

「避けてるんだもん、当たり前でしょお?」

「その煽りぐせ、何とかした方がいいと思うけどねぇー......せいっ!」

「あっははははははははは!!!!」


 未だに攻防が続き、空には魔力でできた煌めきが数多く輝いている。下から見ている聖火崎と或斗の2人には、それが見えた。


「っそれ!!」

「っ!?」


 そしてまた魔力の星がまたたきカエレスイェスがそれを避けた直後に、カエレスイェスの剣が白く眩い光を一瞬だけ発した。それを直視していた葵雲は目を覆い攻撃と飛行の手を一瞬だけ休めた。


「っと、それっ!!」


 その刹那、カエレスイェスはスピードが一瞬だけ急速に落ちた隙を見て一気に突っ込み、思い切り剣を奮った。ザクッ......と音がして何かを切ったような感覚はあった。


「っと。よし!斬れ............はは、しぶといねえ」


 ......しかし、剣は葵雲の足先を掠めた程度だ。そしてその彼は片手で目を押さえ、かなり後方でとてつもなく大きな攻撃陣を用意して騎士の事を待っていた。


「そろそろバレそうな大きさまで錬成できてたから、カエレスイェスがその剣を光らせて視界を真っ白にしてくれたおかげで見えにくくなって助かったよ!!」

「......やや、負けたなあ」


 そして葵雲の更に後ろ......半径50mはありそうなほど大きな紫色のプラズマ球が虚空にてでんと構えていた。それはそれは濃い魔力を秘めており、今にも爆発してしまいそうな程だった。


「禁術《Lila Riesenstern》」

「っ!!!」


 その大きな紫の巨星は一瞬で50cmサイズへと縮み轟速でカエレスイェスを追尾している。全力で飛んで逃げようとするのだが、あまりの速さに後ろ1m程のところまで迫られてしまっていた。


「っ《ポータルスピア》!!」


 ポータルスピア中位転移魔法を使って距離を稼ぐと同時に未だに気を失っているガブリエルの元に飛び、大天使を肩に担いで巨星とは反対方向に逃げようと騎士が振り返ったところだった。


「逃がすと思った?」

「なっ、うわあああああああああああああああ!?」


 真後ろに鎮座した3対の翼を持つ熾天使によって道を塞がれ、その熾天使は慌てふためく騎士を思い切り蹴飛ばした。悲鳴をあげながら後方に吹っ飛び、


「っ!!!!」


 紫色の巨星の縮んだものにぶつかった。その瞬間巨星は一瞬で100倍ほどに膨らみ、今度はカエレスイェスごと小さく小さく縮み......


 ドッカーーーーンンッ!!!!!


 大爆発を起こして消え去った。後には白煙がっている。


「たーまやーぁ!!」

「......あれ死んだんじゃないの。あ、或斗」

「かもねー!!」

「承知しました。......ほれ、ピンだ。着けておけ」

「うんっ!!」


 ひらひら散る鎧やらなんやらの残骸と血を前に、葵雲はなぜか花火の時の掛け声を上げ、瑠凪は火力の高さに若干引き、或斗は葵雲にピンを渡した。


「......っと、それじゃ帰......「げっほげほげほ......いったぁ~......」

「!?」

「え、ええ~......」

「なっ」

「まじか!!」


 ......しかし、その場に響いた地を這うような声に、或斗と葵雲と聖火崎と瑠凪は同時に驚嘆の声を上げた。そしてみんな心底同じ気持ち、本来敵だとか味方だとか関係なしに、こう思ったのだ。


((((......い、生きてた!!規格外すぎて気持ち悪っ!!!))))

「君達......今なんか失礼な事考えたよねえ......いった......」

「なっ、硬すぎて気持ち悪いなんて......そんなこと思ってないわよねえ」

「全くだ。別に貴様が規格外すぎてキモ......考えてないから、変に疑われても困る」

「漏れてる漏れてるどんどん漏れ出てるよ!!っつ、ぐえぇ......」


 瑠凪と葵雲は明後日の方向を向き、聖火崎と或斗は否定しようとするが本心がぼろぼろと口から出ている。そのあまりに酷い口の緩さに思わず大声でつっこんでしまいカエレスイェスは傷の痛みに悶えた。


「......っと、とりあえずカエレスイェス。歯食いしばれ」


 そして今だに背に3対6枚の翼を広げ、頭上に1部が崩れた光の輪を浮かべている瑠凪はそのまま血だらけ傷だらけでへたりこんでいる騎士に近づいた。光無い冷徹な瞳でそれを捉えると、なにか汚らしいものを見ているかのような視線を向け、冷たくそう言い放った。

 それを聞き口からペッと血を吐いたカエレスイェスはゆっくり顔を上げて、近づいてくる大天使を見つめた。


「何かな?僕は筆頭熾天使様をこう目の前で拝めてるってだけでもう昇天しそうなんだけど」

「なら本当に昇天させてやろうか?1発殴るだけで許してやろうと思ってたけど、大天使の炎に焼かれて死んだ神成しんせいの愚か者になれば地獄じゃ殴られるより自慢できると思うよ」

「ったたた、冗談だって......」


 カエレスイェスの言葉が癪に触ったのか先程よりさらに不機嫌そうに騎士の事を睨んだ後、蒼色の炎をチラつかせる瑠凪にカエレスイェスは冷や汗を流しながらも立ち上がった。


「ていうか、なんでそんなに怒ってるの?」

「......決まってんだろ。神判だよ」

「......へ?」


 瑠凪はそのまま伏し目がちに騎士を睨んだまま、はっきりとこう告げた。


「二流の騎士程度が、人間の信仰心を上げたり大天使を助けた位で"唯一神"の座につけるなんて思うな」


 その瞳は天界の神"唯一神"に対しての畏怖と恐怖、そして哀れみを抱いた瞳であった。



 ───────────────To Be Continued──────────────


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