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第3章 (元)魔王と勇者は宇宙樹の種子と
✨19話1Part 勇者と悪魔と騎士
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帝亜羅達2人が強烈な魔力波にやられる30分ほど前、西に鎮座する聖教の本拠地· アドヴェルサス·アルカナム聖火崎は東方での惨劇に大きく関わっているとされる人物と刃を交えていた。
聖火崎の相手の後ろには、何故か気を失い目を覚まさないガブリエルが力なく横たわっている。ただ"大天使聖"の称号からはありえないほどの小さな神気反応しか感じられない、それほど弱体化しているのだ。
聖火崎に宛ててフレアリカから届いたSOSにはなぜか"ガブリエルを連れて帰ってきて"とあり、ガブリエルを何とかしてこちらの手の内に入れようと機会を伺いつつ戦っていたのだが......
ガッ!!
「っ!!」
「あれれぇ?聖弓勇者が地方騎士団のセニュアルオフィサー程度にやられてていいわけぇ~?まだ日本に湧いた喰種の方が戦いがいがあったよ~?」
「馬鹿にしないでくれる?っていうかそれを言ったら、あなたみたいな地方騎士団の2番手如きがそんなものを持ってていいわけ?」
聖火崎はそう言って地方騎士団、もといプテリュクス騎士団のセニュアルオフィサー......カエレスイェスの握る剣を睨んだ。......聖火崎の持つ5唯聖武器の1つ、そしてその5唯聖武器の中で最強である聖剣·リジルの神気量を遥かに凌駕する程の膨大な神気を秘めた剣。剣技的なものでは圧されてないのだ、むしろ地方騎士団の訓練とは比べ物にならないほどハードで専門的、且つ本格的な勇者軍での戦闘訓練のおかげで勝っていると言ってもいい。
......ただ、謎の剣に秘められているとてつもない量の神気のせいで圧され、身体中傷だらけになっているのだ。おまけに聖火崎は武装もしていなかった。勝ち目なんてない、そう考え始めた自分を死ぬほど恨みながらも必死で攻撃を防ぎ続けた。のだが......
「っぐ、げほっ......」
ボタッ、ボタボタボタ......
「あらま、神気でもさすがにこの量は有害かぁ~」
......本来人体には無害な神気でも、カエレスイェスの手にする剣から発されるあまりにも濃すぎる神気量に体が悲鳴を上げているのが分かる。外傷も毒などが盛られた訳ではなく、胴部分への斬撃は弾いてきたので内蔵に支障が出る傷は負っていないはずなのに、聖火崎の口から止めどなく滴り落ちる黒っぽい鮮血がそれの何よりの証拠だ。
「ちっ......ぅえ、げほ、おぇ......」
「うーん......よし!とりあえず"枝"が欲しいから、君の命火はここで消させてもらう!!」
「はあ......遅いのよ。......ぉぇ、もうちょっと早く......決着を、つけるべきだったわね......ぇほ、けほ......」
「......は?」
聖火崎は舌打ちしながらも口から垂れ続ける血のあまりの黒さに驚きつつ口を動かす。そして色んな意味で瀕死の状態である聖火崎から告げられた言葉に、カエレスイェスは目を丸くする。そしてハッとしたように空を見上げ、
「っあー、そういう事ねぇ。理解したよ」
そう言って聖火崎から距離を取った。......カエレスイェスが見たのは、空に浮かぶ漆黒と葵の悪魔だった。大きな機械翼を拡げ空に浮かぶ様はまさに空に浮かぶ妖しげな紫色の月だ。
そしてその悪魔の後ろから遅れてもう1人やってきた悪魔が、黒灰色の鳥のような翼をはためかせながら聖火崎とカエレスイェスの間に着地した。
「......あっれぇ~?カエレスイェスだ、どーしたの?......あは、もしかして僕と遊んでくれるの?」
「貴様......仮にも主様の友人にこのような仕打ち、タダで済まされると思うまいな」
葵雲は空に浮かんだまま煽るような声を上げ、或斗はカエレスイェスを絶対零度の視線で射抜いた。その様子にカエレスイェスが初めて少しだが気圧されている。
「ぅえほ......いや、悪魔に......友人判定、されても困るんだけど」
「黙って見ていろへっぽこ勇者。俺は貴様の護衛に来た、あの騎士には葵雲が対応する」
「へーへー......けほ、もう疲れた。今すぐふかふかのベッドで寝たいわ......」
やっとカエレスイェスが聖火崎から離れ浴びる神気波の濃ゆさが薄まって血もようやく止まり、聖火崎はガックリと着いていた膝を1発パンと叩いて立ち上がった。
こんな時まで煽ってくる或斗に少しだけ眉をひそめながらも、血を拭って聖剣の顕現を解除する。そしてはて......と空に浮かぶ葵雲の頭をまじまじと見つめ、或斗にこう問うた。
「そういえば......葵雲はいつもみたいに髪を留めてないのね」
「ああ......今は、な」
聖火崎の問いに、或斗はポケットから封印術がかけられた3本のヘアピンを取り出して聖火崎に見せ、また仕舞った。そして葵雲とヘアピンの効能について軽く説明した。
......葵雲が髪を留めるのに使っているヘアピンは1代目魔王·サタンによって封印術......とはいっても弱体化ほどしかできていないが、それがかけられており葵雲の悪魔的な部分を過度にならぬようにするためにずっと前に着けさせたものだ。これを着けていないと色んな意味で危険でもある。......兎に角葵雲にとって必要不可欠なものだ。
堺市のアオンモールで一同を襲った時にもつけていたし、葵雲自身今でも常に使用しているのだが今は外している。つまり......
「今日は、マジの本気ってこと......?」
「ああ、そのくらいしないと今日の相手は厳しいらしい」
「そんなに......」
カエレスイェスも葵雲も既に2人だけで話し始めており、何処か蚊帳の外感のある2人は、この状況下でその判断はどうなのかと少し不安だがとりあえず下から見物する事にした。
──────────────To Be Continued─────────────
聖火崎の相手の後ろには、何故か気を失い目を覚まさないガブリエルが力なく横たわっている。ただ"大天使聖"の称号からはありえないほどの小さな神気反応しか感じられない、それほど弱体化しているのだ。
聖火崎に宛ててフレアリカから届いたSOSにはなぜか"ガブリエルを連れて帰ってきて"とあり、ガブリエルを何とかしてこちらの手の内に入れようと機会を伺いつつ戦っていたのだが......
ガッ!!
「っ!!」
「あれれぇ?聖弓勇者が地方騎士団のセニュアルオフィサー程度にやられてていいわけぇ~?まだ日本に湧いた喰種の方が戦いがいがあったよ~?」
「馬鹿にしないでくれる?っていうかそれを言ったら、あなたみたいな地方騎士団の2番手如きがそんなものを持ってていいわけ?」
聖火崎はそう言って地方騎士団、もといプテリュクス騎士団のセニュアルオフィサー......カエレスイェスの握る剣を睨んだ。......聖火崎の持つ5唯聖武器の1つ、そしてその5唯聖武器の中で最強である聖剣·リジルの神気量を遥かに凌駕する程の膨大な神気を秘めた剣。剣技的なものでは圧されてないのだ、むしろ地方騎士団の訓練とは比べ物にならないほどハードで専門的、且つ本格的な勇者軍での戦闘訓練のおかげで勝っていると言ってもいい。
......ただ、謎の剣に秘められているとてつもない量の神気のせいで圧され、身体中傷だらけになっているのだ。おまけに聖火崎は武装もしていなかった。勝ち目なんてない、そう考え始めた自分を死ぬほど恨みながらも必死で攻撃を防ぎ続けた。のだが......
「っぐ、げほっ......」
ボタッ、ボタボタボタ......
「あらま、神気でもさすがにこの量は有害かぁ~」
......本来人体には無害な神気でも、カエレスイェスの手にする剣から発されるあまりにも濃すぎる神気量に体が悲鳴を上げているのが分かる。外傷も毒などが盛られた訳ではなく、胴部分への斬撃は弾いてきたので内蔵に支障が出る傷は負っていないはずなのに、聖火崎の口から止めどなく滴り落ちる黒っぽい鮮血がそれの何よりの証拠だ。
「ちっ......ぅえ、げほ、おぇ......」
「うーん......よし!とりあえず"枝"が欲しいから、君の命火はここで消させてもらう!!」
「はあ......遅いのよ。......ぉぇ、もうちょっと早く......決着を、つけるべきだったわね......ぇほ、けほ......」
「......は?」
聖火崎は舌打ちしながらも口から垂れ続ける血のあまりの黒さに驚きつつ口を動かす。そして色んな意味で瀕死の状態である聖火崎から告げられた言葉に、カエレスイェスは目を丸くする。そしてハッとしたように空を見上げ、
「っあー、そういう事ねぇ。理解したよ」
そう言って聖火崎から距離を取った。......カエレスイェスが見たのは、空に浮かぶ漆黒と葵の悪魔だった。大きな機械翼を拡げ空に浮かぶ様はまさに空に浮かぶ妖しげな紫色の月だ。
そしてその悪魔の後ろから遅れてもう1人やってきた悪魔が、黒灰色の鳥のような翼をはためかせながら聖火崎とカエレスイェスの間に着地した。
「......あっれぇ~?カエレスイェスだ、どーしたの?......あは、もしかして僕と遊んでくれるの?」
「貴様......仮にも主様の友人にこのような仕打ち、タダで済まされると思うまいな」
葵雲は空に浮かんだまま煽るような声を上げ、或斗はカエレスイェスを絶対零度の視線で射抜いた。その様子にカエレスイェスが初めて少しだが気圧されている。
「ぅえほ......いや、悪魔に......友人判定、されても困るんだけど」
「黙って見ていろへっぽこ勇者。俺は貴様の護衛に来た、あの騎士には葵雲が対応する」
「へーへー......けほ、もう疲れた。今すぐふかふかのベッドで寝たいわ......」
やっとカエレスイェスが聖火崎から離れ浴びる神気波の濃ゆさが薄まって血もようやく止まり、聖火崎はガックリと着いていた膝を1発パンと叩いて立ち上がった。
こんな時まで煽ってくる或斗に少しだけ眉をひそめながらも、血を拭って聖剣の顕現を解除する。そしてはて......と空に浮かぶ葵雲の頭をまじまじと見つめ、或斗にこう問うた。
「そういえば......葵雲はいつもみたいに髪を留めてないのね」
「ああ......今は、な」
聖火崎の問いに、或斗はポケットから封印術がかけられた3本のヘアピンを取り出して聖火崎に見せ、また仕舞った。そして葵雲とヘアピンの効能について軽く説明した。
......葵雲が髪を留めるのに使っているヘアピンは1代目魔王·サタンによって封印術......とはいっても弱体化ほどしかできていないが、それがかけられており葵雲の悪魔的な部分を過度にならぬようにするためにずっと前に着けさせたものだ。これを着けていないと色んな意味で危険でもある。......兎に角葵雲にとって必要不可欠なものだ。
堺市のアオンモールで一同を襲った時にもつけていたし、葵雲自身今でも常に使用しているのだが今は外している。つまり......
「今日は、マジの本気ってこと......?」
「ああ、そのくらいしないと今日の相手は厳しいらしい」
「そんなに......」
カエレスイェスも葵雲も既に2人だけで話し始めており、何処か蚊帳の外感のある2人は、この状況下でその判断はどうなのかと少し不安だがとりあえず下から見物する事にした。
──────────────To Be Continued─────────────
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