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一章

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 少し時間がかかってしまったけれど、日常生活に支障をきたさない程度に回復をしてきた。

 こういう時には、回復魔法をほとんど受け付けない体質が嫌になる。

 何度かスクルドのお父上である、デリング・オルルーン様や兄上のハミンギア様ともお話する機会を頂き、色々知識を身につけてから、従者としてスクルドの手伝いをさせてもらえる事になった。

「教養や振る舞いをたくさん学び、従者としてあの子を支えてやってくれ。 しかし、お前も強くならなくてはね……。 また娘を泣かせるなよ? サーフェス」

 デリング様はそう言うと、ハミンギア様とフリストに視線を向けた。

「ハミンギア、フリストよ。 サーフェスに才能とやる気がありそうなら、剣術と魔術を鍛えてやってくれないか?」

 彼は僕の身の上を知っているから、そんな事を調査したからそんな事を言うのかな?

 育てようとしてくれるのかな…。

 そんな勘繰る気持ちがないとは言えないけれど。 本当の息子の様に撫でてくれるし、褒めてくれるし、怒ってくれる。

 デルング様は、僕にとって理想の父みたいな存在になっていた。

 家族としての優しさを、僕にもたくさん分け与えてくれているように感じるから。

 ハミンギア様は、スクルドの6歳上のお兄様。
 魔術の申し子との二つ名を冠していた。

 フリストの身のこなしも、 獣人というだけでは説明がつかないほどだ。
 どれほどの研鑽を積んだのだろう。

『そんな彼らに、魔術や武術を教えてもらえるなんて!』

心は浮き立つ。

彼等は、簡単に治癒魔法で僕の傷が治らない事を、知らされてる。

 魔法防御や攻撃をかわせる、身のこなしを身につけるまで、真剣での訓練や攻撃魔法を教えてくれる事はなかった。
 それはまた別のお話。


 色々な事を、教えてもらいながら学んでいき、失敗しながらも出来るようなるまで、ひたすら実直に続ける。

 僕にはそれしか出来ない。
 僕は天才などでは、ないのだから。

 だからこそ、未来を諦めない為に、ひたすらに教わった事を、出来る様になるまで続ける。

 温かい場所をくれた人を、護りたいから。
 もう足手まといに、などなりたくないから。

 そんな思いを抱き、彼らに囲まれ、勉強や鍛錬に明け暮れた日々は、あっという間に過ぎた気がした。

 5年近くの時が過ぎ、僕とお嬢様はもうすぐ14歳になろうとしていた。

 何故かお嬢様は、訓練や勉強の合間に差し入れを持って、良く顔を出してくれていた。

 これからもこの穏やかな生活が続くのだと、僕は心に希望を持ち始めていた。
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