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仲良くなれるのか?
11 (鳴 視点)
しおりを挟む私に部屋へと案内される碧。 その両手には大量のシャツとウクレレがあり、落とさない様にと、気をつけながら階段を登り、歩を進めているみたい。
私が大げさに「じゃじゃ~ん」と開けた部屋は、客間だった。 いつもお布団を一緒に干したりしていたので、すぐに人が住める状態になっている。
部屋の奥に、ベッドと空の箪笥がある。 箪笥にあゆみよると私は言った。
「ここにシャツをしまって? お兄さん畳み方わかる? 手伝うよ!」
そう言うと、お兄さんにわかりやすくを心がけて、畳み方を丁寧に教えながら、洋服を畳んでいく。
「手慣れてんだな。 意外…」
失礼な感想を漏らすお兄さんに、私は笑って答える。
「なんかお兄さん失礼! でもなんでかよく言われる。 なんでかなぁ…」
少し考えてみたけど人に見える自分と私は同じじゃないし。
「まぁいいか…」と小さくこぼすと、衣類をまた畳み始める。
「千聖さんには言わねぇの?」
何をとは口に出していないけれど、多分お兄さんが言いたいのは、いじめの事だろう。
「なんかさ心配かけたくない。 ただ…、それだけじゃなくて…。
なんか格好悪いじゃない。 クラスメイトに認められないからなんて、メソメソしてるのって」
私は、また少し泣きそうになって、無理矢理に笑う。
「なんかお前格好良いな…。 すげぇと思うぞ!」
お兄さんは、認めてくれる。
わかってくれようとしている。
なんだかとても嬉しくて暖かくてまた泣きそうになるけど、ぐっと我慢する。
「本当は……。 文鳥さんだと思ってたから、言えたんだよ? 責任とってたまにはお話聞いてくれる? お兄さん……?」
そんな話楽しくないだろうから、迷惑かな……。 そう思うけど、お兄さんなら相談乗ってくれそう…そんな思いもあり、不安でいっぱいになってくる…。
「当たり前だろ! なんの為にお前にも千聖さんにも、正体明かしたと思ってんだよ、ばぁか!」
お兄さんはそう言うと、泣きだしそうな私をグリグリと撫でる。
『口は悪そうにしてるけど、お兄さんは、すごく優しいな……。 あたたかいな……』
私はあえて、口には出さないけれどそう感じたんだよ?
だから涙は堪えて、震えそうな声で話題を変えた。
「一通りお洋服、片付いたかな…。 ウクレレも黒いケースついてるんだねぇ、お母さんらしい…」
「俺は鳥だからさ、よくわかんねぇけど。 どこから持ってきたんだ。 普通、こういうの手に入れるのに、金いるんじゃねえの?」
「あはは。 お母さんの知り合いの白い長髪で着物着てるイケメンなお兄さん? おじさん? なんかそういうデザイナーさんの、知り合いがいるみたいだから、その人にもらったんじゃないかな。 ウクレレは、わかんないけど……」
「らしいっちゃらしいか。 でも底知れねぇな……。 千聖さんって…」
ちょっと呆れたみたいに言うお兄さん。
『でも、お母さんらしいと言ってくれて、なんか嬉しいな…。
周りには、お母さんは変わっていると、言われる事が多いし…』
そのままの私も認めてくれそうだ。
クラスメイトや周りに合わせないと…、自分はいらない存在なのだろうか…。
そんな思いが、ずっと私にはついてまわっていた。
そんな事はないと思おうとしても、それは私にとっての変わらない現実みたいなものだった。
けれど、ありのままの私を見て、そのまま受け入れてくれる、お兄さんの存在に救われた、そんな気がした。
やっと私の居場所を、見つけられたんだ…。
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