30 / 88
本編
27
しおりを挟む
「レイの世界の牛舎と鶏小屋のイメージを見せて貰えないだろうか」
「これから酵母を作りに行こう!」
そうわくわくと、厨房へと向かっていると、お父様に呼び止められた。
「レイスに動物を召喚してもらうのに参考にしたくてな」
あんまり詳しくないですよと念を押し、餌の保管、牛の飲む水、飼い葉の与える場所のイメージを伝える。
「参考になったよ。世話する人とか、小屋が完成したらまた教えてくれ」
そういうやり取りの後、その場を立ち去って行った。
うわ~…。牛とか鶏買う事決定か。でもアイスクリームメーカーが出来たら、チョコやイチゴ味のものも作りたい……、ってカカオあるのかな。それはそれで楽しみ。
レイス様は、植物は召喚出来ないのかしら。お米も食べたいし、探して貰えたらいいな。
「考え事?」
レイス様が悪戯が成功したかの様に笑い言った。
「厨房にまたいくんでしょう? 僕も一緒に行くよ」
行こう? とでも言いたげに、微笑むと私の手を掬い上げ、手を繋いで歩いていく。
や……、無理無理。恋人でもない人と手を繋ぐなんて……。
あわあわとした私に気がついたように「いや?」と聞かれては、もうこのままついて行くしかなかった。
「あら、厨房に行くの?」
「は…、はい! レモンで酵母を作りたいので! 日数がかかるから、今のうちにやっとこうかなって思いまして…」
「そういえば、時間がかかるのよね…。手伝える事がありそうだわ。仲のいい二人には邪魔かしら」
なんて妖艶な笑みを浮かべるお母様。この家の人にはかなう気がしない……。
「そんなこと言うと、レイが照れちゃうでしょう!」
「そういうレイスも心做しか顔が赤いわ~、ふふっ」
「母上~…」
恨みがましい声で、それだけ呟くレイス様。普段は格好いいのに今はなんだか可愛らしい。
二人と一緒に厨房に行くと、普段来ないお母様の登場に、ラフェルさんもミランさんもクレイさんもファルトさんも、ただただ困惑しているみたいだった。
他の下働きの様な料理人さんも、言うまでもなく戸惑っている。
ついてきたものは仕方ないので、開き直って瓶を出す。手を洗いレモンの皮を剥いて、白い薄皮を丁寧に剥がしていく。
包丁でレモンをスライスすると、蜂蜜をもらい蜂蜜レモンを作る要領で、消毒をしてもらった少し大きなな瓶に詰めていく。
「これで5日程上下にひっくり返しながら、置けば酵母が出来ると思います。せっかくお母様に来ていただいたので、パンチェッタの時間を5日程進めて頂くことは出来ますか?」
「良いわよ、5日くらいね」
そういうとパンチェッタに手をかざし、何やら呪文を唱える。
パッと見の変化はよくわからなかったけど、熟成させてなくても美味しいので、味見分だけ水で洗い流し、一口サイズにして、フライパンで焼く。
「脂身から出た油を使って目玉焼きとかも美味しいんですよ!」
「食べてみたいわ!」
「うん! 今度作って欲しいな」
2人にねだられ、近々作ろうと思った。
「ハチミツレモン? とか言うのの方は時間進めなくていいのかしら?」
申し訳ないので自然につくろうと思ってたけど、お言葉に甘える事にする。
「大体5日くらいでシュワシュワとしだすはずなんですが…、お願い出来ますか?」
そういうと、蜂蜜レモンだった代物が明らかに泡立ち始める。
「おぉ! すごい!」
「役に立ったみたいで良かったわ。今日は時間があるから、レイちゃんの作業を見てるわ。また何かあったら言ってね」
時短の魅力に負けて、パン作りの発酵時間を早めてもらったりしつつ、パンの生地を作ってしまった。
「これから酵母を作りに行こう!」
そうわくわくと、厨房へと向かっていると、お父様に呼び止められた。
「レイスに動物を召喚してもらうのに参考にしたくてな」
あんまり詳しくないですよと念を押し、餌の保管、牛の飲む水、飼い葉の与える場所のイメージを伝える。
「参考になったよ。世話する人とか、小屋が完成したらまた教えてくれ」
そういうやり取りの後、その場を立ち去って行った。
うわ~…。牛とか鶏買う事決定か。でもアイスクリームメーカーが出来たら、チョコやイチゴ味のものも作りたい……、ってカカオあるのかな。それはそれで楽しみ。
レイス様は、植物は召喚出来ないのかしら。お米も食べたいし、探して貰えたらいいな。
「考え事?」
レイス様が悪戯が成功したかの様に笑い言った。
「厨房にまたいくんでしょう? 僕も一緒に行くよ」
行こう? とでも言いたげに、微笑むと私の手を掬い上げ、手を繋いで歩いていく。
や……、無理無理。恋人でもない人と手を繋ぐなんて……。
あわあわとした私に気がついたように「いや?」と聞かれては、もうこのままついて行くしかなかった。
「あら、厨房に行くの?」
「は…、はい! レモンで酵母を作りたいので! 日数がかかるから、今のうちにやっとこうかなって思いまして…」
「そういえば、時間がかかるのよね…。手伝える事がありそうだわ。仲のいい二人には邪魔かしら」
なんて妖艶な笑みを浮かべるお母様。この家の人にはかなう気がしない……。
「そんなこと言うと、レイが照れちゃうでしょう!」
「そういうレイスも心做しか顔が赤いわ~、ふふっ」
「母上~…」
恨みがましい声で、それだけ呟くレイス様。普段は格好いいのに今はなんだか可愛らしい。
二人と一緒に厨房に行くと、普段来ないお母様の登場に、ラフェルさんもミランさんもクレイさんもファルトさんも、ただただ困惑しているみたいだった。
他の下働きの様な料理人さんも、言うまでもなく戸惑っている。
ついてきたものは仕方ないので、開き直って瓶を出す。手を洗いレモンの皮を剥いて、白い薄皮を丁寧に剥がしていく。
包丁でレモンをスライスすると、蜂蜜をもらい蜂蜜レモンを作る要領で、消毒をしてもらった少し大きなな瓶に詰めていく。
「これで5日程上下にひっくり返しながら、置けば酵母が出来ると思います。せっかくお母様に来ていただいたので、パンチェッタの時間を5日程進めて頂くことは出来ますか?」
「良いわよ、5日くらいね」
そういうとパンチェッタに手をかざし、何やら呪文を唱える。
パッと見の変化はよくわからなかったけど、熟成させてなくても美味しいので、味見分だけ水で洗い流し、一口サイズにして、フライパンで焼く。
「脂身から出た油を使って目玉焼きとかも美味しいんですよ!」
「食べてみたいわ!」
「うん! 今度作って欲しいな」
2人にねだられ、近々作ろうと思った。
「ハチミツレモン? とか言うのの方は時間進めなくていいのかしら?」
申し訳ないので自然につくろうと思ってたけど、お言葉に甘える事にする。
「大体5日くらいでシュワシュワとしだすはずなんですが…、お願い出来ますか?」
そういうと、蜂蜜レモンだった代物が明らかに泡立ち始める。
「おぉ! すごい!」
「役に立ったみたいで良かったわ。今日は時間があるから、レイちゃんの作業を見てるわ。また何かあったら言ってね」
時短の魅力に負けて、パン作りの発酵時間を早めてもらったりしつつ、パンの生地を作ってしまった。
11
お気に入りに追加
109
あなたにおすすめの小説
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
世間知らずな彼女とヤキモチ焼きの元上司のお話
真矢すみれ
恋愛
一回り以上年の離れた彼と彼女。
元上司と元部下の2人。
ほんの少しだけヤキモチ焼きで、ほんの少しだけ意地悪で、そしてとっても彼女の事を愛してる修一。
ほんの少しだけ世間知らずで、ほんの少しだけうぶで、そして彼の事を大好きなさくら。
婚約時代のほんのちょっぴり甘~い2人の会話。
軽い気持ちで覗き見て下さい♪
※ベリーズカフェ、小説家になろうにも掲載中。
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
婚約破棄された地味姫令嬢は獣人騎士団のブラッシング係に任命される
安眠にどね
恋愛
社交界で『地味姫』と嘲笑されている主人公、オルテシア・ケルンベルマは、ある日婚約破棄をされたことによって前世の記憶を取り戻す。
婚約破棄をされた直後、王城内で一匹の虎に出会う。婚約破棄と前世の記憶と取り戻すという二つのショックで呆然としていたオルテシアは、虎の求めるままブラッシングをしていた。その虎は、実は獣人が獣の姿になった状態だったのだ。虎の獣人であるアルディ・ザルミールに気に入られて、オルテシアは獣人が多く所属する第二騎士団のブラッシング係として働くことになり――!?
【第16回恋愛小説大賞 奨励賞受賞。ありがとうございました!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる