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番外編
2 (紅葉 視点)
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仕事の仕入れの関係で、車で取引先を訪ねた帰り道。狐くんと烏くんを脇道で見つけた。
雄か雌かは詳しくないので、便宜上そう呼ぶ。
狐くんの方は意識を失っており、近づいてみるけど烏くんは、騒ぎもせずに、私を見ていた。
言葉を発したところで、通じる訳はないのに。
「この子を看病したいの。家に連れて行っていいかしら? それに心配なら貴方もついてくる?」
そう言って狐くんを抱き上げると、狐を車内に寝かせる。
余程疲れていたのか、それとも弱っていたのか…。狐くんは目を覚まさない。
その後烏くんの様子を伺っていると、タンタンタン……。ジャンプをする様に、両足でこちらに歩いてきた。跳んできたと言うのが正しいのかな。そうして、狐くんの脇へと乗り込み、心配そうに狐を見つめていた。
それが私と彼らとの出会いだった。
ネットで調べた食材を与えても、烏くんは心配そうに狐くんを見ているだけ。君もお腹空いてるだろうに…。
意識を取り戻した狐くんに、少し蒸したささみをあげた。
クンクンと匂いを嗅ぎながら、食べても平気なものかと様子を伺っている感じか。
「変なモノ入れてないのにな~…」
つい溢すと、意を決めた様に狐くんも烏くんもあげたささみを食べ始める。
つい私は亡くしてしまった、かつての友達を思い出し、狐くんを撫でる。
警戒心の強い狐くんは、私の事を咬んで流血させはしたけど、警戒していない時に不意に触ると、咬まれても仕方ないのかもしれない。特に食事中は反射的に動いてしまうみたいだし…。
かつての友達が触っても咬まなかったので、完全に油断していた気がする。
『そりゃあ、そうよね…。いくらあの子に似ていても、あの子が帰って来たわけではないもの…』
少しずつ仲良くなって、『このまま一緒にいられたらいいのに』そんな叶いもしないとわかっていることを、願ってしまう私がいた。
あの子は生を全う出来なかった。けれど、あんな事が起きなければ、別れの時は違う意味で、もっと悲しかったと思う。
そんな時に彼らが妖だとわかった。
彼らは私を置いて行ったりしないのね…。いつか逆に私が彼らを置いて逝くのかもしれないけど…。
天寿を全うすれば、きっとそういう事だろう。私は妖怪が怖いというよりも、いつか喪うのが怖かったからか、恐怖感よりもずっと同じ時を生きてくれる存在として、すとんと受け入れてしまった。
他に迎えた焔やちゃんや琥珀くんや銀くんとも、いつか死という別れは来るのだろう。
でも、暁くんや紫雫くんが同じ悲しみを背負い、一緒にいてくれるなら、私は、そんな日々も悪くないと思えた。
雄か雌かは詳しくないので、便宜上そう呼ぶ。
狐くんの方は意識を失っており、近づいてみるけど烏くんは、騒ぎもせずに、私を見ていた。
言葉を発したところで、通じる訳はないのに。
「この子を看病したいの。家に連れて行っていいかしら? それに心配なら貴方もついてくる?」
そう言って狐くんを抱き上げると、狐を車内に寝かせる。
余程疲れていたのか、それとも弱っていたのか…。狐くんは目を覚まさない。
その後烏くんの様子を伺っていると、タンタンタン……。ジャンプをする様に、両足でこちらに歩いてきた。跳んできたと言うのが正しいのかな。そうして、狐くんの脇へと乗り込み、心配そうに狐を見つめていた。
それが私と彼らとの出会いだった。
ネットで調べた食材を与えても、烏くんは心配そうに狐くんを見ているだけ。君もお腹空いてるだろうに…。
意識を取り戻した狐くんに、少し蒸したささみをあげた。
クンクンと匂いを嗅ぎながら、食べても平気なものかと様子を伺っている感じか。
「変なモノ入れてないのにな~…」
つい溢すと、意を決めた様に狐くんも烏くんもあげたささみを食べ始める。
つい私は亡くしてしまった、かつての友達を思い出し、狐くんを撫でる。
警戒心の強い狐くんは、私の事を咬んで流血させはしたけど、警戒していない時に不意に触ると、咬まれても仕方ないのかもしれない。特に食事中は反射的に動いてしまうみたいだし…。
かつての友達が触っても咬まなかったので、完全に油断していた気がする。
『そりゃあ、そうよね…。いくらあの子に似ていても、あの子が帰って来たわけではないもの…』
少しずつ仲良くなって、『このまま一緒にいられたらいいのに』そんな叶いもしないとわかっていることを、願ってしまう私がいた。
あの子は生を全う出来なかった。けれど、あんな事が起きなければ、別れの時は違う意味で、もっと悲しかったと思う。
そんな時に彼らが妖だとわかった。
彼らは私を置いて行ったりしないのね…。いつか逆に私が彼らを置いて逝くのかもしれないけど…。
天寿を全うすれば、きっとそういう事だろう。私は妖怪が怖いというよりも、いつか喪うのが怖かったからか、恐怖感よりもずっと同じ時を生きてくれる存在として、すとんと受け入れてしまった。
他に迎えた焔やちゃんや琥珀くんや銀くんとも、いつか死という別れは来るのだろう。
でも、暁くんや紫雫くんが同じ悲しみを背負い、一緒にいてくれるなら、私は、そんな日々も悪くないと思えた。
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