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 紅葉もみじさんの家を出て、行き場をなくしたであろう動物達の説得に時間を費やす。

 空高い場所から探すのは、紫雫しずくの役目で見つけると俺に知らせてくれる。目的の場所に向かい話をする。

 キツネの姿で走った方が早いけれど、キツネも畑を荒らしていたと言いがかりをつけられたくなかったのと、ほむら達を危険に晒したくない為に、人形ひとがたで走る俺。
 今後餌場になる、紅葉もみじさんの店への場所を伝え、仲間への伝言を頼んで新たな動物を探しに行く。そんな事を繰り返し、空が闇をはらんだ頃に、既に家と感じられる紅葉もみじさんの店へと向かう。
 不思議な感傷に浸りながら、裏庭に廻るとタヌキやウサギと言った声をかけた動物の一部が既に足を運んでみたらしい。

「動物性タンパク質必要な種類だと、ドッグフードとかキャットフードの方がいいのかしら?」

 よくわからない言葉を、呪文の様に呟きながら紅葉もみじさんが考え込む。

 野生のキツネがいるせいで、ウサギたちは萎縮しているみたいだ。

「彼らのお家も必要かしら、ご飯だけ食べれれば良いのかしら…?」

「そうだなー。彼らの次第だから僕らの時みたいに、のんびり構えてたら? だって僕らだって最初は住み着く気なかったじゃない」

「え~! なかったの~?」

 はっきりきっぱり言いにくい事を、言い切ってしまう紫雫しずくに苦笑する。


紅葉もみじさんは紅葉もみじさんでそんなはずは~とでも言いたげに、ガッカリした振りをする。

 裏の畑は荒らさないように言い含め、彼らの餌を用意する。

「なんか…、モフモフがすごくいっぱいいて種類も豊富って…。ふれあい広場みたいだね。うーん、彼らが人馴れしてきたらそれで募金集めるとか……?」

 紅葉もみじさんは考え込む様に言った。

 俺も笑いながら言う。

「まだ早いんじゃないですか? 俺たちが仲良くなれてからの話でしょう?」


 そうやって俺らだけでなく、他の動物もこわごわとよってくる形で、数を増やしていった。

 害獣として駆除される奴らもいたけど、選択肢は与えた。けれど、己が欲求に従い俺たちと違う道を選んだ。それ故の結果なら、ただ追い立てられ続けていた過去の俺達よりはいく分かマシなのだろう。

 俺は人間・・という種族を憎んでいたと思う。

 けれど、紅葉もみじさんに会って、温かく迎えてくれるものもいれば、邪魔だと排除しようとする人もいる事を知った。

 温かく迎えてくれる人に出会えた。なればこそ、そういう人達と一緒に歩いて行く未来を模索する。そんな生き方を見つけて行きたい。

 そんな生き方を選ぶ自分も、悪くないなと思える俺になる為に。
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