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本編

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 食事をとって、アレク様が執務室のそばに作ってくれた調理室で、氷魔法で氷を容器へと出す。氷を水に浮かべモモを冷やすした。

「そういえば依然、香りのいい花を庭園に植えたから、これを機会にとレンゲで養蜂も、始めたのでしたっけ…」

「ハチミツを使うの? 持ってこようか?」

「お願いしてもいいかしら?」

 私はフィールにお使いを頼み、3階の庭園で新しい食物を植える。

 魔力をコンスタントに使ってるせいか、魔力を使ってもあまり疲れなくなってきた気がする。


 植えたのは、トウモロコシとスイカとパイナップル。すくすくと育つそれらを見ながら、育ちきったところで収穫をする。

 収穫に力がいりそうなものは、セイルがやってくれた。

 私は、庭園に来た大元の理由のレモンを収穫し、私専用の調理室へと戻って来た。

 レモンをスライスして、ハチミツに漬けるだけ。シンプルながら疲れに効くらしい。スイカとパイナップルも氷水で冷やし、食べやすい大きさに切るとカートに乗せ、執務室へと3人で向かっていく。

 カートはセイルが押してくれた。

「ありがとう」

「お安い御用っス!」

 そんな会話をしながら向かった先、珍しく執務室の扉が開いていて、中の様子が見えた。

 アレク様の首に、綺麗な緑の髪の女の子が「アレク~! ずっとあいたかったよ~」と、アレク様に巻きついて、頬にキスを落としていた。

「いいから落ち着け」

 アレク様の発した言葉など聞き取れずに、思わず口元に手をあてて立ち止まってしまう。後ろから来たセイルが、押してくれていたカートにぶつかり、小さくはない音をさせた。

「調子が良くないように見えたから…、アレク様に出してあげて……」

 フィールに小さな声で伝えると、涙がこぼれ落ちる前に、この場から離れたかった。だから、その場から走って、逃げ出してしまった。


 彼に対し、好意は持っているとは思っていた。好きだと気づいた途端に、失恋なんてね。笑えるわ…。私にだって婚約者がいたのに、アレク様にはいないと思い込んでたなんて……。

 庭園に着いた頃には、ポロポロと涙が溢れ出しうまく止められなかった。  

「ちゃんと……、適切な距離を取らなくちゃ……、相手の方に誤解させてしまうもの……」

 今だけは…、泣かせて欲しい。婚約者に捨てられた時でも平気だったのにな……。

 3階の庭園の隅に、しゃがみ込んで、行き場のない思いのままに泣いた。国から追い出された時から、初めて悲しくて涙した。

 泣いて涙と一緒に、持っていてはいけない気持ちを、洗い流せたらいい……。でも、なぜだろう…、うまく消えてくれない。

 私を助けてくれた事。迎え入れてくれた事。彼との温かいやり取り…。

 そんな出来事や笑顔が、浮かんでは消え、上手く忘れられそうになかった。
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