ポメ・ポメ・パニック!〜犬猿幼なじみと甘い主従関係!?〜

鶴機 亀輔

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第2章

犬猿幼なじみ4

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 その言葉に胸がざわざわして目の前が真っ暗になる。

「――きみにとっては、そんなことでもぼくにとっては大切な夢で、大好きなお仕事なんだよ」

「え? 今、なんて――」と焦って隼人が訊き返してくる。

 普段なら気にならないこともすごく気になって、大したことでないと自分でも思っていることにショックを受ける。

「隼人のバカ! もう……知らない! 当分ぼくに話しかけないで……!」

「は、はあ? なんだよ、渉! おい!」

 ぼくは背後で叫ぶ隼人を置いていき、保健室へと向かった。

 だけど隼人は、ぼくを追いかけてくれない。だって、ぼくと隼人は本当の恋人同士じゃないから。

 ただ、ぼくが片思いをしているだけ。

 あいつは、ぼくのことなんてなんとも思ってない。高坂さんや竹内くんのように心配してくれない。

 それくらい、ぼくのことなんてどうでもいいんだ。

 最初からわかっていたことなのに、すごく傷ついて、無性に泣きたくなる。目頭が熱い。

 保健室のドアをノックすれば、養護教諭の渡辺わたなべ先生がドアを開けてくれた。

「あら、犬伏くん。具合が悪くなっちゃったのね」

「いつも、いつもすみません……先生」

 ぼくはもういっぱい、いっぱいになって胸の辺りを搔きむしるようにして荒い呼吸を繰り返す。心臓が壊れてしまいそうなくらい痛くて体が熱い。

「大丈夫よ」と先生が、ぼくの肩をぽんぽんと叩く。「中には誰もいないわ。窓の鍵も掛けてある。あなたは真ん中のベッドで眠って。わたしが鍵を掛けたら急いで服を脱ぎなさい。服は、いつもの籠に入れてベッド下に隠すのよ。わかってるわね?」

「はい……」

「九時には、ほかの子たちも動き出すわ。もしダメなら――」

「ベッド下のの中に隠れること……」

「そうよ、絶対に悟られちゃダメ。わたしもすぐに戻って来るから」

 首を上下に振りながら、先生が保健室のドアを閉じ、鍵をガチャリと掛ける音を合図にぼくはベッドのほうへ急いだ。

 アイボリーカラーの仕切り用カーテンを勢いよく引いてリュックをベッドの下に隠す。ブレザーのボタンを外して脱ぎ、ネクタイを籠に放り込む。ワイシャツのボタンを外し、ベルトをスラックスから抜く。ズボンを脱ごうとした――が、タイムオーバーだ。

 間に合わなかった。
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