ポメ・ポメ・パニック!〜犬猿幼なじみと甘い主従関係!?〜

鶴機 亀輔

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第2章

犬猿幼なじみ3

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 なのに何が原因かわからないけど……いつの間にか、僕と隼人がカップルだという勘違いが学校中に横行してしまったのだ。

 今じゃ三学年でぼくらが付き合っているという誤情報を知らない人間はいないし、先生たちも冷やかしてくる。後輩にも噂をされたり、女の子たちから小声で「男同士で付き合っているんだって」と言われて、笑われたりもする。

 大抵は肯定的な反応か、興味津々といった感じで野次馬根性を発揮しているかのどちらかだ。

 彼に長年片思いしているぼくは、いつ隼人に「そんなわけないでしょ、何言ってるの? てゆーか迷惑なんだけど」と死刑宣告をされるのかとヒヤヒヤもんだ。

 気分は、地雷が大量に埋められ、銃弾が飛び交っている場所で防護服も纏わずに赤い靴を履いて踊ってるようなもんだ。

 みんなが、ぼく+隼人=カップルなんて方程式を頭にインプットして公言するものだから、隼人は言っても無駄だと思っているのか強く否定しない。どう考えても彼にとっては迷惑極まりない話だろう。

 隼人が異性愛者なのか、それとも同性愛者なのか、はたまた男女問わず恋愛対象として見たり、二次元のキャラや無機物を思ったりするのかはわからない。だって、そんな恋愛についての話なんて一度だってしたことないから。

 けど、ずるいぼくは隼人が強く否定しないことをいいことに、付き合っているという“嘘”を内心喜んでいるのだ。こんなに自分が性格悪いやつだなんて思わなかった。

 でも現実で隼人と手を繋いでデートをしたり、ハグしてキスをすることできないんだ。

 それに進路だって違う。

 赤ちゃんの頃から高校まで隼人と一緒だった。

 でも三月に卒業したら隼人は埼玉じゃなくて東京でひとり暮らしをする。ぼくは埼玉の大学に通いながら東京でオーディションを受けたり、仕事をする、

 川越から池袋まで片道一時間もかからない。

 でも大学で勉強する内容も、カリキュラムも違うし、行動範囲も異なる。何より大学で友達ができたら疎遠になる可能性が高い。今のように毎日のように会えなくなるだけじゃなく、二度と話をすることだってなくなるかもしれないのだ。

 そのカウントダウンはすでに始まり、一年を切っている。

 だったら期間限定でいいから、いい夢を見させてほしいと願わずにはいられない。

 こんなこと絶対に隼人に知られたらいけない。もし知られたら、きっと一生口を聞いてもらえなくないし、目も合わせてもらえなくなる……。

「……犬伏くん、犬伏くん!」

「ひゃい!?」

 まさか竹内くんに声を掛けられると思っていなかったぼくは、裏返った声で返事をしてしまった。

「顔色、めちゃくちゃ悪いな。もしかして気持ち悪いとかか? トイレ行ってくる?」

「う、ううん。大丈夫! このまま保健室でちょっと寝させてもらう」

「あんま無理するなよ。なんなら早退とかも考えたほうがいいぞ」

 さすが彼女持ちで野球部の後輩たちから好かれている主将!

 竹内くんの思いやりに胸がジンとする。普段、ほとんど話をしないぼくにも気配りしてくれるんだから本当、性格がいいなと感動してしまう。

 これが隼人だったら「何、変なものを拾い食いでもしたの? トイレで早く出すもん出してきなよ」の塩対応で終わりだな、なんてアホなことを考えて、ますます気分が落ち込んでいく。

 心臓がチクチクと痛みを発し始めて「あっ、これはまずいな」と直感する。

「平気、平気。少しお腹が痛いだけだから。休めば授業も受けられるよ」

「そうか? ――って、穂積。おまえ、突っ立っていないでさ。具合の悪い恋人のことを少しは、いたわってやれよ。荷物でも持ってやれよ」

「えっ? あ、えっと……」

 眉を寄せて、しかめっ面をしてい隼人の顔を見ていられなくて作り笑いをする。

「じゃあオレは犬伏くんのクラス担任に体調不良だって伝えてくるから。おまえは犬伏くんのことを保健室にでも連れて行ってやれよ。今日は全校集会で校長のクソ長い話しがあるみたいだから一時限目も遅くに始まるから、よく休めるぞ。犬伏くん、お大事にな」

「え、ちょっと待てよ、圭祐!」

 俺を置いていくなよと言うような声色で隼人が竹内くんを呼び止める。

 しかし竹内くんは、まるで隼人の声が聞こえていないみたいに無視して、職員室のほうへスタスタと歩いて行ってしまった。

 そうしてぼくたちは、ふたりきりになった。

 気まずい雰囲気に堪えられない。隼人のことを置いて、保健室へ向かおうときびすを返す。

「おい仮病野郎、どこ行くんだよ」と呼び止められる。

 そのまま隼人に「保健室だよー」ってなんでもないような声で言う演技をして、顔を見せないように、さっさと保健室に行けばいいんだ。なのに、どうしてそれができないのだろう?

「仮病なんかじゃないよ。本当に痛いんだ」

 きみと口喧嘩をするたびに胸の辺りが痛くて仕方ないんだ。

「だったら車酔いでもしたの? だから機嫌が悪かったわけ? 気づけなくて、ごめん」

「車酔いなんかしてないよ。きみがまたぼくのすること、やることにギャーギャー言うから……ぼくの仕事を馬鹿にしないでよ」

「は? 声優のことを言われたから具合が悪くなったわけ? たかが、そんなことで?」
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