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第2章
親公認の仲!?4
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「平気。適当に家にあるもんで作って、尊と食べるから」
「そうか。まったく尊くんには頭が上がらんなあ」
俺は自分の机の上にあったクロワッサンとハムエッグとサラダを横目に、インスタントコーヒーをカップに入れる。そんでもって冷蔵庫からとってきた牛乳を注いでカフェオレを作った。
父さんは新聞を読んでいるくせにテレビをつけっぱにしていた。ニュースが、カフェやレストランにかかっているジャズ音楽のようにBGM代わりになるとは到底思えない。が、電源を消したり、タブレットで動画を流したりすると父さんが怒り出すから、そのままつけておく。
『続いてのニュースです。本日七時過ぎに神奈川県横浜市の市道交差点で黒の軽自動車と大型トラックによる交通事故が発生しました。現在、運転手はどちらも意識不明の重体で、搬送先の病院で治療を受けています』
「あれ、この車……」
「おい、どうした?」と父さんが目線を上げて、声を掛けてくる。
俺は席につき、クロワッサンを食べながら昨日の出来事を父さんに話した。
「いや、このぺしゃんこになってる黒い軽さ、昨日俺を轢きかけた車と似てるような気がする。すっげえスピード出してたんだ。多分、百キロ近く出てたんじゃないかな?」
「なんだ、それ? 怪我はないだろうな?」
「うん、尊のおかげで助かった。運転手からは文句、言われたけど」
「おまえ、本当に気をつけろよ。変な運転手だと車に連れ込まれて山に捨てるとか、激昂して殴りかかってくる、なんてこともあるんだから。変な事件に巻き込まれたら、たまったもんじゃないぞ」
「だね、気をつける」
「きっと赤い車の男も天罰が下ったんだろ。自業自得だ」
「そう……だね」
赤い車だった物体と横転している見知ったコンビニマークの入ったトラックを眺めながら、冷たいカフェオレを口に含んだ。
そうして朝食を食べ終え、歯を磨き、父さんに見送られながら玄関のドアを開ける。
「おはよう、葵ちゃん」
「はよ、待たせたか?」
「ううん、待ってないよ。ついっさき、出たところ。じゃ、行こっか」
「ああ」
いつもと同じように挨拶をして隣を歩いているだけなのに、なんでだか胸がドキドキする。
毎日尊のことを見ているのに、今日は一段とキラキラと光り輝いているように見えるのは、気のせいだろうか?
「どうしたの、葵ちゃん。いつもと違って口数が少ないね。もしかして――緊張してる?」
「べっ、別にそんなんじゃねえよ!」
「えー、ほんとかな!? ムッツリスケベな葵ちゃんは、途中で勉強するのも放り出して、僕とあんなことやそんなことをするのを想像してたんじゃないの?」
「はあっ!? んなことするわけねえよ、ふざけんな!」
「怒るとこが怪しいなー。いいんだよ、僕ならいつでもウェルカムだから。いっぱい葵ちゃんにキスして、抱きしめてあげるよ。それ以上は……十八歳になってからだけどね」
「てめえ、好き勝手言ってんじゃねえ!」
尊の腕を引っぱたいてやろうとすれば、すっと尊が俺の攻撃をかわして走り出す。
「おい、尊。待ちやがれ!」
「ほらほら、葵ちゃん。早く僕を捕まえてよ!」
そうして俺たちは夏真っ盛りな中、全速力で走った。
「そうか。まったく尊くんには頭が上がらんなあ」
俺は自分の机の上にあったクロワッサンとハムエッグとサラダを横目に、インスタントコーヒーをカップに入れる。そんでもって冷蔵庫からとってきた牛乳を注いでカフェオレを作った。
父さんは新聞を読んでいるくせにテレビをつけっぱにしていた。ニュースが、カフェやレストランにかかっているジャズ音楽のようにBGM代わりになるとは到底思えない。が、電源を消したり、タブレットで動画を流したりすると父さんが怒り出すから、そのままつけておく。
『続いてのニュースです。本日七時過ぎに神奈川県横浜市の市道交差点で黒の軽自動車と大型トラックによる交通事故が発生しました。現在、運転手はどちらも意識不明の重体で、搬送先の病院で治療を受けています』
「あれ、この車……」
「おい、どうした?」と父さんが目線を上げて、声を掛けてくる。
俺は席につき、クロワッサンを食べながら昨日の出来事を父さんに話した。
「いや、このぺしゃんこになってる黒い軽さ、昨日俺を轢きかけた車と似てるような気がする。すっげえスピード出してたんだ。多分、百キロ近く出てたんじゃないかな?」
「なんだ、それ? 怪我はないだろうな?」
「うん、尊のおかげで助かった。運転手からは文句、言われたけど」
「おまえ、本当に気をつけろよ。変な運転手だと車に連れ込まれて山に捨てるとか、激昂して殴りかかってくる、なんてこともあるんだから。変な事件に巻き込まれたら、たまったもんじゃないぞ」
「だね、気をつける」
「きっと赤い車の男も天罰が下ったんだろ。自業自得だ」
「そう……だね」
赤い車だった物体と横転している見知ったコンビニマークの入ったトラックを眺めながら、冷たいカフェオレを口に含んだ。
そうして朝食を食べ終え、歯を磨き、父さんに見送られながら玄関のドアを開ける。
「おはよう、葵ちゃん」
「はよ、待たせたか?」
「ううん、待ってないよ。ついっさき、出たところ。じゃ、行こっか」
「ああ」
いつもと同じように挨拶をして隣を歩いているだけなのに、なんでだか胸がドキドキする。
毎日尊のことを見ているのに、今日は一段とキラキラと光り輝いているように見えるのは、気のせいだろうか?
「どうしたの、葵ちゃん。いつもと違って口数が少ないね。もしかして――緊張してる?」
「べっ、別にそんなんじゃねえよ!」
「えー、ほんとかな!? ムッツリスケベな葵ちゃんは、途中で勉強するのも放り出して、僕とあんなことやそんなことをするのを想像してたんじゃないの?」
「はあっ!? んなことするわけねえよ、ふざけんな!」
「怒るとこが怪しいなー。いいんだよ、僕ならいつでもウェルカムだから。いっぱい葵ちゃんにキスして、抱きしめてあげるよ。それ以上は……十八歳になってからだけどね」
「てめえ、好き勝手言ってんじゃねえ!」
尊の腕を引っぱたいてやろうとすれば、すっと尊が俺の攻撃をかわして走り出す。
「おい、尊。待ちやがれ!」
「ほらほら、葵ちゃん。早く僕を捕まえてよ!」
そうして俺たちは夏真っ盛りな中、全速力で走った。
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