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第16章
内緒話3
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もしもエドワードさまが、あの日の出来事を謝ってくださったり、一度でいいから父様や母様に僕のことについて意見してくれたら、僕も彼のことを思い続けていたのだろうか? あれだけ、いやな思いをして苦しんだのに、まだそんなことを期待して考えてしまう自分に嫌気が差す。
マックスさんの前で昔の恋人のことを思い浮かべるなんて失礼にもほどがある。やっぱりタラレバの話は嫌いだと思い、寝返りを打つ。
(……そうか、それならいいんだけど)
(ヤキモチを焼いてくださったのですか、マックスさん)
(そうだって言ったらおまえは、どうする?)
(嬉しく思います。ですが、マックスさんがそんなことする必要はありませんよ。だって、それは杞憂で終わりますから。僕の恋人はマックさん、ただひとりですよ。エドワードさまのもとへ帰る気など毛頭ありません。そんな気持ちが、かすかにでもあったら彼に手紙を送ったり、会ってほしいと懇願しています。あなたとのことで悩んだりしなければ、英雄を見つけるまで待ってほしいと言ったりしませんよ)
こんな僕を思ってエドワード王子のことを邪推するなんて可愛い方だなと思う。僕を好きだとおいう物好きはマックスさんくらいしかいないのに。
(どっちにしろ偽の神子は、おまえの存在が目障りだから、本来の時間へ巻き戻して確実に命を奪う道を選んだんだろう。何しろ今のおまえはエドワード王子と徹底的に接点を持たないようにしている。おまけに自分からギルドになった。血族として、今後王宮で上位の役職につく道を自ら閉ざしたようなもんだ。魔族と戦う最前線に立つ形で王様への忠誠心を表してる。だから王位を簒奪する口実を作ることも難しい。おまえは否定するが……今頃、偽の神子はエドワード王子の心を手に入れることに、かなり苦戦していると思うぞ)
(そうでしょうか? どちらにせよ、やはり僕には、偽の神子の考えを理解することはできません)
(保険だろ。偽の神子は自分の望む未来を訪れさせるために大勝負に出たんだよ。そうしないとおまえに負けるって切羽詰まっているんだろうな)
その話を聞いて、今回僕のやってきたことが間違いではなかったと少しだけ自信を持てる。
(それは魔王が復活したのに世界が闇に包まれていないことや戦争が置きていないことと関係があるのですか?)
(ああ、そうだ。魔王の亡骸は、魔王を倒した勇者たちのパーティが粉々にして、各地へバラ撒いたんだ。そいつから魔王の元の体を作るのには少なくとも千三百日はかかる。だが体だけ、もとの形になっても意味がないんだ。何せ魔王の秘めていた魔力は勇者たちによって七つの宝石に封じられた。その宝石を天上の神々、エルフ、ドワーフ、妖精、魔族、人間の王、地獄の神が守っている。その守りは厳重だ。一番簡単そうな人間の王が持つ宝石ですら転々と場所を変えている。今、どこの国の王が所有しているのか、その場所を特定するのだって容易じゃない)
(そんなことに時間をかけるよりは、僕にかかっている『過去』の女神様の加護や、女神様に出会った事実をなかったことにして、僕を斬首刑になる瞬間の時間へ戻すほうが簡単ということですね)
(ああ、そうだ。それで魔王の復活をもう一度やることになっても、おまえはもう死んでいる。偽の神子や悪魔にとっての邪魔者はいなくなってるんだから、いつやったって問題ない。偽の神子は、これから先、おまえへの接触を増やすだろう。魔王が復活した今、魔王のもと重臣たちも復活したり、力を取り戻す。そうしたら戦争も起きるだろうな。そのドサクサに紛れて、おまえをゼロの魔術のかかった剣で刺せば、もとの世界に逆戻り。処刑場へ逆戻りで、すべては片がつく)
もしも亜空間で偽の神子に刺されていたら、本当に取り返しのつかないことになっていた。
あのとき、もしもまばゆいばかりの光が差さなければ、すべてが終わっていたことにゾッとする。布団の中にいるのに、ひどく体が冷たく感じる。両の腕をさすりながら自分の体を抱きしめる。
(大丈夫だ、心配するな。オレだって、おまえを偽の神子やエドワード王子には渡すつもりなんて、さらさらねえ。万が一オレが魔王の元幹部連中と戦うことになってすぐに力を貸せない状況になっても、おまえが偽の神子に簡単にやられたりしないよう、ひとりでもあいつと互角に戦えるようにするために特訓をしてるんだぞ。まっ、もしそうなっても全力で助けに行くけどな。おまえにはオレや先生、メリーやエリザっていうパーティの仲間たちがいる。仲間は助け合い、支え合うものだ。新人のおまえは大船にでも乗った気持ちで自分のできることをやればいい)
(とても心強いです。ありがとうございます)
今の僕にはマックスさんっていう、すっごく頼もしくて強いギルドのリーダーがついている。それだけじゃない。熟練・魔術師で心の広いクロウリー先生や元・盗賊で冷静沈着なメリーさん、ツンケンした態度だけど本当は誰よりも思いやりという強さを持つエリザさんの仲間になったんだ。
ひとりじゃない。
女神様の言っていた通りに多くの人たちの手を借りて、ここまで来れたことに胸が熱くなる。
マックスさんの前で昔の恋人のことを思い浮かべるなんて失礼にもほどがある。やっぱりタラレバの話は嫌いだと思い、寝返りを打つ。
(……そうか、それならいいんだけど)
(ヤキモチを焼いてくださったのですか、マックスさん)
(そうだって言ったらおまえは、どうする?)
(嬉しく思います。ですが、マックスさんがそんなことする必要はありませんよ。だって、それは杞憂で終わりますから。僕の恋人はマックさん、ただひとりですよ。エドワードさまのもとへ帰る気など毛頭ありません。そんな気持ちが、かすかにでもあったら彼に手紙を送ったり、会ってほしいと懇願しています。あなたとのことで悩んだりしなければ、英雄を見つけるまで待ってほしいと言ったりしませんよ)
こんな僕を思ってエドワード王子のことを邪推するなんて可愛い方だなと思う。僕を好きだとおいう物好きはマックスさんくらいしかいないのに。
(どっちにしろ偽の神子は、おまえの存在が目障りだから、本来の時間へ巻き戻して確実に命を奪う道を選んだんだろう。何しろ今のおまえはエドワード王子と徹底的に接点を持たないようにしている。おまけに自分からギルドになった。血族として、今後王宮で上位の役職につく道を自ら閉ざしたようなもんだ。魔族と戦う最前線に立つ形で王様への忠誠心を表してる。だから王位を簒奪する口実を作ることも難しい。おまえは否定するが……今頃、偽の神子はエドワード王子の心を手に入れることに、かなり苦戦していると思うぞ)
(そうでしょうか? どちらにせよ、やはり僕には、偽の神子の考えを理解することはできません)
(保険だろ。偽の神子は自分の望む未来を訪れさせるために大勝負に出たんだよ。そうしないとおまえに負けるって切羽詰まっているんだろうな)
その話を聞いて、今回僕のやってきたことが間違いではなかったと少しだけ自信を持てる。
(それは魔王が復活したのに世界が闇に包まれていないことや戦争が置きていないことと関係があるのですか?)
(ああ、そうだ。魔王の亡骸は、魔王を倒した勇者たちのパーティが粉々にして、各地へバラ撒いたんだ。そいつから魔王の元の体を作るのには少なくとも千三百日はかかる。だが体だけ、もとの形になっても意味がないんだ。何せ魔王の秘めていた魔力は勇者たちによって七つの宝石に封じられた。その宝石を天上の神々、エルフ、ドワーフ、妖精、魔族、人間の王、地獄の神が守っている。その守りは厳重だ。一番簡単そうな人間の王が持つ宝石ですら転々と場所を変えている。今、どこの国の王が所有しているのか、その場所を特定するのだって容易じゃない)
(そんなことに時間をかけるよりは、僕にかかっている『過去』の女神様の加護や、女神様に出会った事実をなかったことにして、僕を斬首刑になる瞬間の時間へ戻すほうが簡単ということですね)
(ああ、そうだ。それで魔王の復活をもう一度やることになっても、おまえはもう死んでいる。偽の神子や悪魔にとっての邪魔者はいなくなってるんだから、いつやったって問題ない。偽の神子は、これから先、おまえへの接触を増やすだろう。魔王が復活した今、魔王のもと重臣たちも復活したり、力を取り戻す。そうしたら戦争も起きるだろうな。そのドサクサに紛れて、おまえをゼロの魔術のかかった剣で刺せば、もとの世界に逆戻り。処刑場へ逆戻りで、すべては片がつく)
もしも亜空間で偽の神子に刺されていたら、本当に取り返しのつかないことになっていた。
あのとき、もしもまばゆいばかりの光が差さなければ、すべてが終わっていたことにゾッとする。布団の中にいるのに、ひどく体が冷たく感じる。両の腕をさすりながら自分の体を抱きしめる。
(大丈夫だ、心配するな。オレだって、おまえを偽の神子やエドワード王子には渡すつもりなんて、さらさらねえ。万が一オレが魔王の元幹部連中と戦うことになってすぐに力を貸せない状況になっても、おまえが偽の神子に簡単にやられたりしないよう、ひとりでもあいつと互角に戦えるようにするために特訓をしてるんだぞ。まっ、もしそうなっても全力で助けに行くけどな。おまえにはオレや先生、メリーやエリザっていうパーティの仲間たちがいる。仲間は助け合い、支え合うものだ。新人のおまえは大船にでも乗った気持ちで自分のできることをやればいい)
(とても心強いです。ありがとうございます)
今の僕にはマックスさんっていう、すっごく頼もしくて強いギルドのリーダーがついている。それだけじゃない。熟練・魔術師で心の広いクロウリー先生や元・盗賊で冷静沈着なメリーさん、ツンケンした態度だけど本当は誰よりも思いやりという強さを持つエリザさんの仲間になったんだ。
ひとりじゃない。
女神様の言っていた通りに多くの人たちの手を借りて、ここまで来れたことに胸が熱くなる。
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