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第8章
覚悟のほどを見る3
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「おまえたちは、ルキウスの祖母に流れていた召喚師の血を受け継いだルキウスを、新しい主として認めているんだな?」
マックスさんが腰をかがめれば、インディゴがおどおどしながら「そうです」と返事をした。
「残念ながらオフェリアさまのお子であらせるマリアさまは、召喚師の血を受け継ぎませんでした。しかしルキウスさまは僕らの元・主であるオフェリア様の血を濃く継承されています! 赤ちゃんの頃から、ぼくらが面倒を見て、育ててきた大切な存在です。お兄さんも、お姉さんもルキウスさまを乱暴に扱ったら、ぼくらが承知しませんからね!」
パープルが悪者のような笑みを浮かべて、マックスさんたちに笑いかけた。
そんなパープルの様子に思わず苦笑する。
「僕自身は戦闘に特化した魔法全般が不得意です。だから彼らを始めとした魔物や精霊、神々の力を借りて、ここまで来ました」
「それで、こいつらの力を借りて、ビックゴブリンをどうするつもりなんだ? 一匹、一匹の力は並のゴブリンたちよりも強くない。むしろ弱いくらいだろ」
マックスさんは唇を尖らせながら、七匹のゴブリンたちの顔をじっと眺めた。
「蛟の主と蛇使いのいた東の国には、七つの首を持った蛇の魔物を倒した英雄がいるんです。その英雄が蛇の魔物を倒しときのやり方を応用しようと考えています。今、七匹のゴブリンたちは日中、銀行で働いています。彼らに銀行へ行ってもらって僕の今まで貯めてきた給料と宝石類を取ってきてもらって、使うつもりです」
エリザさんが顎に手をやり、「なるほどね」とつぶやいた。「罠を張るってわけね。確かにビックゴブリンは金目のものに目がないみたいだし……もしかしたら、うまくいくかも」
「ありがとうございます、エリザさん」
「あんた、あたしの話を、ちゃんと聞いてた!? 『もしかしたら、うまくいくかも』って言っただけよ!」
「エリザの言う通りだ、ルキウス殿。俺は貴殿の考えには賛成できかねる。ビックゴブリンはそんなヤワでもなければ、バカでもないんだ」
「わかっています。だから僕も賭けに出ます」
「賭けとは、何をするつもりでおるんじゃ?」
片眉を器用に上げたクロウリー先生が、こめかみの辺りを押さえた。
「まあ、いい。どちらにせよルキウス殿が窮地に陥った場合は、我々がサポートする。最悪、俺の転送魔法でイワーク洞窟から離脱してもらうぞ」
「構いません」
「ビックゴブリンを追い込む、または倒さない限り、マックスの力を借りてギルド加入はできない――という内容で、よろしいじゃろうか? マックスも異論はないな?」
「なんでルキウスひとりにやらせる!? オレが手伝ってもいいだろ?」
マックスさんが叫んだ瞬間、眼光鋭くエリザさんが僕のことを見据えた。
「マックス、ルキウス殿。申し訳ないが、こちらの事情を汲んでいただけないだろうか? 後でエリザには、きつく言っておくから」
「まったく、うちの孫娘は……」
やれやれ参ったという様子でメリーさんが頭を下げ、クロウリー先生が天を仰いだ。
「大丈夫です。『ビックゴブリンを倒す』と大それたことを言ったのは僕ですし」
「御託はいいから、さっさと倒してきなさい! 時間の無駄よ!」
イライラした様子のエリザさんの声を聞き、七匹のゴブリンが怒り心頭になる。
彼らをなだめ、僕はビックゴブリンを倒す作戦を話した。
「ルキウス様! ビックゴブリンたちは今、洞窟の最深部で酒盛りをしてるよ」
「今なら作戦を決行できます」
偵察に行っていたパープルとブルーの言葉に僕はうなずく。
タイミングよくメリーさんと一緒に転送魔法で銀行へ行っていたイエローとグリーンが、大袋を持って帰ってくる。
「じゃあ、みんな。打ち合わせ通りによろしくね」
べそをかくインディゴを叱咤激励しながら縄で縛ってもらった。
「準備はよろしいですか? ビックゴブリンは手強いですぞ」
神妙な顔で訊いてくるオレンジに「もちろんだよ」と返事をする。
「それでは参りましょう」
マックスさんたちに会釈をして先頭に立つレッドの後を歩く。
急に「悪い!」とマックスさんが大声をあげ、こちらへ走ってきた。「少しでいいからルキウスと話をさせてもらえないか?」
七匹のゴブリンたちとアイコンタクトを取る。
彼らは、僕とマックスさんから少し離れた場所へ、移動した。
「どうしたんですか、マックスさん?」
「命の危険を感じたら、すぐに逃げろ。死んだら『英雄』を探すどころの話じゃねえ。おまえは戦い慣れしてないから無理だけはするなよ。ギルドの加入方法は、ほかにもあるってことを忘れるな」
「わかりました。ご心配いただき、ありがとうございます」
マックスさんは僕の返答が芳しくなかったのか、不満そうに唇を尖らせる。
「どうして、やつを倒すことに固執するんだよ。ビックゴブリンと何か因縁でもあるのか?」
「いいえ、ビックゴブリンと面識はありません」と僕は首を横に振った。
ビックゴブリンのやっていることとノエルさまがやってきたことは、どこか似ているなと思いながら「人から奪うことを考え、私利私欲のためなら人の命を簡単に奪い去る。そんなビックゴブリンの所業を許せないし、許したくないんです」と答える。
マックスさんが腰をかがめれば、インディゴがおどおどしながら「そうです」と返事をした。
「残念ながらオフェリアさまのお子であらせるマリアさまは、召喚師の血を受け継ぎませんでした。しかしルキウスさまは僕らの元・主であるオフェリア様の血を濃く継承されています! 赤ちゃんの頃から、ぼくらが面倒を見て、育ててきた大切な存在です。お兄さんも、お姉さんもルキウスさまを乱暴に扱ったら、ぼくらが承知しませんからね!」
パープルが悪者のような笑みを浮かべて、マックスさんたちに笑いかけた。
そんなパープルの様子に思わず苦笑する。
「僕自身は戦闘に特化した魔法全般が不得意です。だから彼らを始めとした魔物や精霊、神々の力を借りて、ここまで来ました」
「それで、こいつらの力を借りて、ビックゴブリンをどうするつもりなんだ? 一匹、一匹の力は並のゴブリンたちよりも強くない。むしろ弱いくらいだろ」
マックスさんは唇を尖らせながら、七匹のゴブリンたちの顔をじっと眺めた。
「蛟の主と蛇使いのいた東の国には、七つの首を持った蛇の魔物を倒した英雄がいるんです。その英雄が蛇の魔物を倒しときのやり方を応用しようと考えています。今、七匹のゴブリンたちは日中、銀行で働いています。彼らに銀行へ行ってもらって僕の今まで貯めてきた給料と宝石類を取ってきてもらって、使うつもりです」
エリザさんが顎に手をやり、「なるほどね」とつぶやいた。「罠を張るってわけね。確かにビックゴブリンは金目のものに目がないみたいだし……もしかしたら、うまくいくかも」
「ありがとうございます、エリザさん」
「あんた、あたしの話を、ちゃんと聞いてた!? 『もしかしたら、うまくいくかも』って言っただけよ!」
「エリザの言う通りだ、ルキウス殿。俺は貴殿の考えには賛成できかねる。ビックゴブリンはそんなヤワでもなければ、バカでもないんだ」
「わかっています。だから僕も賭けに出ます」
「賭けとは、何をするつもりでおるんじゃ?」
片眉を器用に上げたクロウリー先生が、こめかみの辺りを押さえた。
「まあ、いい。どちらにせよルキウス殿が窮地に陥った場合は、我々がサポートする。最悪、俺の転送魔法でイワーク洞窟から離脱してもらうぞ」
「構いません」
「ビックゴブリンを追い込む、または倒さない限り、マックスの力を借りてギルド加入はできない――という内容で、よろしいじゃろうか? マックスも異論はないな?」
「なんでルキウスひとりにやらせる!? オレが手伝ってもいいだろ?」
マックスさんが叫んだ瞬間、眼光鋭くエリザさんが僕のことを見据えた。
「マックス、ルキウス殿。申し訳ないが、こちらの事情を汲んでいただけないだろうか? 後でエリザには、きつく言っておくから」
「まったく、うちの孫娘は……」
やれやれ参ったという様子でメリーさんが頭を下げ、クロウリー先生が天を仰いだ。
「大丈夫です。『ビックゴブリンを倒す』と大それたことを言ったのは僕ですし」
「御託はいいから、さっさと倒してきなさい! 時間の無駄よ!」
イライラした様子のエリザさんの声を聞き、七匹のゴブリンが怒り心頭になる。
彼らをなだめ、僕はビックゴブリンを倒す作戦を話した。
「ルキウス様! ビックゴブリンたちは今、洞窟の最深部で酒盛りをしてるよ」
「今なら作戦を決行できます」
偵察に行っていたパープルとブルーの言葉に僕はうなずく。
タイミングよくメリーさんと一緒に転送魔法で銀行へ行っていたイエローとグリーンが、大袋を持って帰ってくる。
「じゃあ、みんな。打ち合わせ通りによろしくね」
べそをかくインディゴを叱咤激励しながら縄で縛ってもらった。
「準備はよろしいですか? ビックゴブリンは手強いですぞ」
神妙な顔で訊いてくるオレンジに「もちろんだよ」と返事をする。
「それでは参りましょう」
マックスさんたちに会釈をして先頭に立つレッドの後を歩く。
急に「悪い!」とマックスさんが大声をあげ、こちらへ走ってきた。「少しでいいからルキウスと話をさせてもらえないか?」
七匹のゴブリンたちとアイコンタクトを取る。
彼らは、僕とマックスさんから少し離れた場所へ、移動した。
「どうしたんですか、マックスさん?」
「命の危険を感じたら、すぐに逃げろ。死んだら『英雄』を探すどころの話じゃねえ。おまえは戦い慣れしてないから無理だけはするなよ。ギルドの加入方法は、ほかにもあるってことを忘れるな」
「わかりました。ご心配いただき、ありがとうございます」
マックスさんは僕の返答が芳しくなかったのか、不満そうに唇を尖らせる。
「どうして、やつを倒すことに固執するんだよ。ビックゴブリンと何か因縁でもあるのか?」
「いいえ、ビックゴブリンと面識はありません」と僕は首を横に振った。
ビックゴブリンのやっていることとノエルさまがやってきたことは、どこか似ているなと思いながら「人から奪うことを考え、私利私欲のためなら人の命を簡単に奪い去る。そんなビックゴブリンの所業を許せないし、許したくないんです」と答える。
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