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第3章
過ちを繰り返す2※
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沸々と込み上げてくる怒りや憎しみをどうすることもできないまま、とてつもない屈辱を受けていることを、血の味がする唇を噛みしめることで堪えるしかなかった。
「やあ、ん……だめ! エド、エド……! すき、大好きぃ……」
「ああ、愛しているよ……ノエル……」
ノエルさまが赤い舌をちらつかせて、エドワードさまに口づけを求める。
エドワードさまはノエル様の求めに応じ、赤くぽってりとして、唾液まみれになった唇を貪った。右手でノエルさまのテラテラしている赤い乳首をこねくり回し、左手はノエル様の肉感のあるももを抱えている。
ノエルさまの勃起しても小ぶりなペニスが、先走り液を飛ばしながら彼の腹を打った。
エドワードさまは欲情しきった男の顔をして、夢中で種馬のようにノエルさまの後孔にペニスの挿入を繰り返す。
ぶちりとまた僕の唇が切れて血の味が口の中に広がった。
「ん、あっ……ああ……あーっ……!」
「うっ……ぐっ……ん、あ゛っ……」
そうしてノエルさまは甲高い喘ぎ声で鳴いた。もう何度目かもわからない射精を終え、エドワードさまの腕の中で意識を失ってしまう。
すかさずエドワードさまは意識を失ったノエルさまを抱きとめた。愛しげな表情を浮かべながら、ノエルさまの汗で額に貼り付いた黒い前髪を、かき上げてやる。
「ふふっ……気持ちよさのあまり、気を失ってしまったのか……」
「愛いやつめ」とノエルさまの赤く上気した頬へエドワードさまは口づけた。
僕の胸は、怒りや絶望、憎しみ、嫉妬といった負の感情で今にも、はち切れそうだった。
冷たい鉄格子を握りながらエドワードさまに尋ねる。
「あなたは、僕のことを愛してなかったのですか? すべて――嘘だったと?」
「気づくのが遅いな。その通りだ。おまえのことを愛したことなど一度もない」
「……では、どうして僕に口づけをしたり、身体を繋げたのですか? 愛していたからではないのですか?」
「愚かな。男は愛情がなくても口づけをすることも、抱くこともできる。おまえは俺の欲を発散するための道具、性欲処理の人形だ。光栄に思え」
あまりにもひどい言葉を掛けられ、閉口する。エドワードさまは僕が一度も見たことがないくらいにやさしい顔つきをして、ノエルさまのことを見つめていた。
「おまえにはわからぬだろうな。愛し合うことの尊さ、愛し合った者との交歓がどれほど甘美かを……俺が愛しているのはノエルだ。おまえじゃない」
鉄格子を握っていた手を放し、冷たい床の上へと座り込む。
僕のことを見向きもしないでエドワードさまはノエル様を横抱きにし、その場を去っていった。
なんて愚かなんだろう。甘い言葉に騙され、性欲を満たすための人形扱いされていたことに気づかないでいたなんて……。
「エドワードさまは、ピーターの言う通りの人だったんだね。ちゃんと言うことを聞けばよかったな」
狂ったように僕は泣き笑いをした。
悲しみの涙が枯れるまで一晩中、泣き続けた。
*
翌日、夜間の見張りの兵が居眠りをした隙を狙って両手を胸元で交差し、「『過去』の女神様、どうかこの愚か者の声が聞こえましたら、ご慈悲をください。何卒お助けくださいませ!」と祈りを捧げる。
世界が灰色一色になり、目の前にまばゆい光を纏った女神様が現れる。
「私を呼びましたね、ルキウス」
「はい、女神様。機会はもう一度いただけるのですよね!? どうしても、やり直しがしたいのです。どうか僕を過去の世界へ連れて行ってください!」
「よいでしょう、許します」
ふたつ返事で了承してくれた女神様に女神様にお礼を言う。
だが彼女は悲しそうな顔をして「ですが結果は変わらぬやも知れません」とポツリと言った。
「どういう意味でしょう?」
「結局あなたは――愛する人に裏切られ、大切な人たちを失う。今度は、もっとひどい目に遭うかもれません」
「いいです。大切な人たちの命を救えるなら、どんな目に遭おうと構いません!」
切羽詰まった心の内をあらわにすると女神様の肩にとまっていた七色に光る蝶が、僕のことを慰めるように僕の固く握りしめた拳の上にとまった。
「どうやらこの子は、あなたのことがよほど気に入っているようですね。では大盤振る舞いをしましょう。あなたに助言をします」
「ありがたきお言葉……ぜひご教示ください。どうしたら、みんなを守れますか!?」
「復讐は、あの少年に仕返しをすることだけではありません」
思わず「えっ?」と訊き返した。
「あなた自身が幸福になり、新たな幸せを掴むこと。それが復讐になる場合もあります。何かを得るために、大切なものを手放さなくてはならない。すべての人を守りたい気持ちは痛いほどわかりますが、あなたひとりには荷が重すぎる。
もっと多くの人々の手を借りるのです。思うようにいかず、くじけそうになることもあるでしょう。それでも諦めないで。必ず誰かが、あなたのひたむきで真剣な気持ちに気づき、手を差し伸べてくれます。勇気を持って一歩を踏み出すことができれば奇跡は起きるのです。さすれば道も開けていくでしょう」
「よくわかりません」と問えば、女神様はふっと口元に笑みを浮かべた。
「私が口出しできるのはここまで。さあ、お行きなさい。最後の機会を与えましょう」
そうして女神様は時計の針を逆回転させた。
「やあ、ん……だめ! エド、エド……! すき、大好きぃ……」
「ああ、愛しているよ……ノエル……」
ノエルさまが赤い舌をちらつかせて、エドワードさまに口づけを求める。
エドワードさまはノエル様の求めに応じ、赤くぽってりとして、唾液まみれになった唇を貪った。右手でノエルさまのテラテラしている赤い乳首をこねくり回し、左手はノエル様の肉感のあるももを抱えている。
ノエルさまの勃起しても小ぶりなペニスが、先走り液を飛ばしながら彼の腹を打った。
エドワードさまは欲情しきった男の顔をして、夢中で種馬のようにノエルさまの後孔にペニスの挿入を繰り返す。
ぶちりとまた僕の唇が切れて血の味が口の中に広がった。
「ん、あっ……ああ……あーっ……!」
「うっ……ぐっ……ん、あ゛っ……」
そうしてノエルさまは甲高い喘ぎ声で鳴いた。もう何度目かもわからない射精を終え、エドワードさまの腕の中で意識を失ってしまう。
すかさずエドワードさまは意識を失ったノエルさまを抱きとめた。愛しげな表情を浮かべながら、ノエルさまの汗で額に貼り付いた黒い前髪を、かき上げてやる。
「ふふっ……気持ちよさのあまり、気を失ってしまったのか……」
「愛いやつめ」とノエルさまの赤く上気した頬へエドワードさまは口づけた。
僕の胸は、怒りや絶望、憎しみ、嫉妬といった負の感情で今にも、はち切れそうだった。
冷たい鉄格子を握りながらエドワードさまに尋ねる。
「あなたは、僕のことを愛してなかったのですか? すべて――嘘だったと?」
「気づくのが遅いな。その通りだ。おまえのことを愛したことなど一度もない」
「……では、どうして僕に口づけをしたり、身体を繋げたのですか? 愛していたからではないのですか?」
「愚かな。男は愛情がなくても口づけをすることも、抱くこともできる。おまえは俺の欲を発散するための道具、性欲処理の人形だ。光栄に思え」
あまりにもひどい言葉を掛けられ、閉口する。エドワードさまは僕が一度も見たことがないくらいにやさしい顔つきをして、ノエルさまのことを見つめていた。
「おまえにはわからぬだろうな。愛し合うことの尊さ、愛し合った者との交歓がどれほど甘美かを……俺が愛しているのはノエルだ。おまえじゃない」
鉄格子を握っていた手を放し、冷たい床の上へと座り込む。
僕のことを見向きもしないでエドワードさまはノエル様を横抱きにし、その場を去っていった。
なんて愚かなんだろう。甘い言葉に騙され、性欲を満たすための人形扱いされていたことに気づかないでいたなんて……。
「エドワードさまは、ピーターの言う通りの人だったんだね。ちゃんと言うことを聞けばよかったな」
狂ったように僕は泣き笑いをした。
悲しみの涙が枯れるまで一晩中、泣き続けた。
*
翌日、夜間の見張りの兵が居眠りをした隙を狙って両手を胸元で交差し、「『過去』の女神様、どうかこの愚か者の声が聞こえましたら、ご慈悲をください。何卒お助けくださいませ!」と祈りを捧げる。
世界が灰色一色になり、目の前にまばゆい光を纏った女神様が現れる。
「私を呼びましたね、ルキウス」
「はい、女神様。機会はもう一度いただけるのですよね!? どうしても、やり直しがしたいのです。どうか僕を過去の世界へ連れて行ってください!」
「よいでしょう、許します」
ふたつ返事で了承してくれた女神様に女神様にお礼を言う。
だが彼女は悲しそうな顔をして「ですが結果は変わらぬやも知れません」とポツリと言った。
「どういう意味でしょう?」
「結局あなたは――愛する人に裏切られ、大切な人たちを失う。今度は、もっとひどい目に遭うかもれません」
「いいです。大切な人たちの命を救えるなら、どんな目に遭おうと構いません!」
切羽詰まった心の内をあらわにすると女神様の肩にとまっていた七色に光る蝶が、僕のことを慰めるように僕の固く握りしめた拳の上にとまった。
「どうやらこの子は、あなたのことがよほど気に入っているようですね。では大盤振る舞いをしましょう。あなたに助言をします」
「ありがたきお言葉……ぜひご教示ください。どうしたら、みんなを守れますか!?」
「復讐は、あの少年に仕返しをすることだけではありません」
思わず「えっ?」と訊き返した。
「あなた自身が幸福になり、新たな幸せを掴むこと。それが復讐になる場合もあります。何かを得るために、大切なものを手放さなくてはならない。すべての人を守りたい気持ちは痛いほどわかりますが、あなたひとりには荷が重すぎる。
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「よくわかりません」と問えば、女神様はふっと口元に笑みを浮かべた。
「私が口出しできるのはここまで。さあ、お行きなさい。最後の機会を与えましょう」
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