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10.理由なんていらない
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校舎裏まで二人で歩いて、誰にも見つからないように陰に身を潜めるのが、小学生の遊びみたいでどちらともなく笑いが込み上げた。
けらけらと笑って、瑠衣が笑い過ぎたと言い訳しながら目尻の涙を拭った。
「あーあ、砕けた」
疲れ切った声で瑠衣が入って、ずるずると土の上にしゃがみ込んでしまった。
それを追いかけるみたいに私も瑠衣の隣に座り込む。
汚れるよ、と瑠衣に言われても聞かない。
私は瑠衣と目線を合わせて笑いながら言った。
「拾ってあげる」
なに言ってるの、と言いたげな瑠衣の瞳はどこまでもまっすぐで、私はそんな親友の目が本当に好きだ。
「瑠衣の心が砕けたなら、私が全部拾ってあげる。治るまでずっと一緒にいる」
だから、あんなの気にすることないんだと言うと、掴んだままだった瑠衣の手が静かに震えていることに気づいた。
「なんで、美奈はそんなに優しいの」
「瑠衣がそうしてくれたから」
泣きそうな顔で笑う瑠衣に、私は正直に答える。親友の間に下手な愛想なんて不要だ。
私と瑠衣が仲良くなったのは小学生の頃だ。確か高学年になったあたりだから、五年生とかそのくらい。
それまでは私にも普通に友だちがいた。同じ女の子の友だちが。
でも私は友だちに比べると幼かったのではないだろうか。少なくともそう見えていたのだと思う。
その頃になるとみんな少しませてきて、背伸びしたくて、恋の話題なんかが飛び交うようになっていた。
美奈ちゃんの好きな人は誰?と聞かれて、適当に答えておけばいいのに馬鹿正直だった私は、いつもいないと首を振っていた。
だっていないんだから仕方ないじゃないか。恋の好きと友だちの好きの違いなんて全然分からないのだから、そんなこと聞かれたって答えられっこないじゃないか。
『なんで誰も好きにならないの?おかしいよ。そういうのってキモくない?』
子どもの言うことだ。深い意味なんてないし、笑って受け流せばいい。
でもその時は私だって子どもだったのだ。悲しくなったって、泣きたくなったって、なにが悪い。
『そうやって簡単に人のこと、きもいって言う人の方がきもいんじゃないの』
その時から少しクラスで浮いていた瑠衣がそんなことを言ってくれた。
ほとんど話もしたことがなかった。それなのに口を挟んでくれたことが、私は泣きたくなるほど嬉しかったのだ。
「好きになるとかならないとか、そんなのその人の勝手だって、自由なんだから気にしなくていいって、言ってくれたのは瑠衣だよ」
こんな風に教室から連れ出して、小さな手で私の手を包んでそう言ってくれたのだ。
「好きって心でなるものだから、無理にそうしようとなんてしなくていいんだって」
瑠衣は案外自分のことに興味がないから忘れていたのかもしれない。心底驚いた顔をして、私の顔を見つめていた。
「でもそれ以上に理由が必要ならもう一つだけあるよ。とびきりのやつが」
いつだったか瑠衣の体を抱きしめてみたいと思ったことを実践してみた。
違う体がびっくりするほどぴったり重なった気がした。
「私は瑠衣の親友だから」
親友に優しくするのに理由なんていらない。ただそれだけのことだ。
けらけらと笑って、瑠衣が笑い過ぎたと言い訳しながら目尻の涙を拭った。
「あーあ、砕けた」
疲れ切った声で瑠衣が入って、ずるずると土の上にしゃがみ込んでしまった。
それを追いかけるみたいに私も瑠衣の隣に座り込む。
汚れるよ、と瑠衣に言われても聞かない。
私は瑠衣と目線を合わせて笑いながら言った。
「拾ってあげる」
なに言ってるの、と言いたげな瑠衣の瞳はどこまでもまっすぐで、私はそんな親友の目が本当に好きだ。
「瑠衣の心が砕けたなら、私が全部拾ってあげる。治るまでずっと一緒にいる」
だから、あんなの気にすることないんだと言うと、掴んだままだった瑠衣の手が静かに震えていることに気づいた。
「なんで、美奈はそんなに優しいの」
「瑠衣がそうしてくれたから」
泣きそうな顔で笑う瑠衣に、私は正直に答える。親友の間に下手な愛想なんて不要だ。
私と瑠衣が仲良くなったのは小学生の頃だ。確か高学年になったあたりだから、五年生とかそのくらい。
それまでは私にも普通に友だちがいた。同じ女の子の友だちが。
でも私は友だちに比べると幼かったのではないだろうか。少なくともそう見えていたのだと思う。
その頃になるとみんな少しませてきて、背伸びしたくて、恋の話題なんかが飛び交うようになっていた。
美奈ちゃんの好きな人は誰?と聞かれて、適当に答えておけばいいのに馬鹿正直だった私は、いつもいないと首を振っていた。
だっていないんだから仕方ないじゃないか。恋の好きと友だちの好きの違いなんて全然分からないのだから、そんなこと聞かれたって答えられっこないじゃないか。
『なんで誰も好きにならないの?おかしいよ。そういうのってキモくない?』
子どもの言うことだ。深い意味なんてないし、笑って受け流せばいい。
でもその時は私だって子どもだったのだ。悲しくなったって、泣きたくなったって、なにが悪い。
『そうやって簡単に人のこと、きもいって言う人の方がきもいんじゃないの』
その時から少しクラスで浮いていた瑠衣がそんなことを言ってくれた。
ほとんど話もしたことがなかった。それなのに口を挟んでくれたことが、私は泣きたくなるほど嬉しかったのだ。
「好きになるとかならないとか、そんなのその人の勝手だって、自由なんだから気にしなくていいって、言ってくれたのは瑠衣だよ」
こんな風に教室から連れ出して、小さな手で私の手を包んでそう言ってくれたのだ。
「好きって心でなるものだから、無理にそうしようとなんてしなくていいんだって」
瑠衣は案外自分のことに興味がないから忘れていたのかもしれない。心底驚いた顔をして、私の顔を見つめていた。
「でもそれ以上に理由が必要ならもう一つだけあるよ。とびきりのやつが」
いつだったか瑠衣の体を抱きしめてみたいと思ったことを実践してみた。
違う体がびっくりするほどぴったり重なった気がした。
「私は瑠衣の親友だから」
親友に優しくするのに理由なんていらない。ただそれだけのことだ。
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