私の親友

蒼キるり

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7.私にはわかる

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 見惚れている瑠衣には言えないけど、真面目な神崎らしいプレーだ。
 教科書通りにドリブルしてパスして時々シュートしようとしては失敗している。
 待機組は暇なのか声を上げて応援しているけど、ちっとも本気には聞こえなかった。
 私の隣で拳を握って口を少しだけ開いてすぐに閉じている瑠衣の方がよっぽど本気で応援しているように見える。
 あんまりにも力が入っているから、瑠衣と呼びかけてぽんぽんと背中を叩いた。
 それがきっかけになったのだろうか。神崎が何度かのシュートを行おうとしている時、瑠衣の口から瑠衣にしては大きな声が出た。


「……っ、がんばれ!」


 その時、一瞬だけど確かに神崎も瑠衣を見ていた気がした。
 残念ながらボールはバスケットゴールを逸れてしまったけれど、瑠衣の応援は神崎の心にゴールしたんじゃないか、なんて私にしてはいいことを思った。
 瑠衣は自分が声を出して応援したことを心底驚いているみたいだった。
 頑張ったじゃん、と私が言ってもまだぼーっと神崎を見ている。
 私には決してできないその瞳が、少し羨ましい。


「さっき頑張れって言ってくれた?」


 試合が終わって、近くに来た神崎が人懐こい笑顔で瑠衣に話しかけた。
 曖昧に頷く瑠衣の代わりに私が答えたいくらいだった。
 瑠衣は心の底から神崎を応援したんだよ、と伝えたかった。
 でもそれはきっと瑠衣から言わなければ意味がないのだろう。


「よかったじゃん」


 神崎が友だちのところに行った後、私の方が喜んでそう言うと、瑠衣は複雑そうに笑った。


「よかったのかな」

「よかったよ。少なくとも、喜んではくれてたよ」


 神崎が瑠衣のことをどう思っているかは知らないけど、少なくともそれだけは言える。あの顔はきっと嘘ではない。
 でも瑠衣はまるで少しでも期待する自分自身を馬鹿にするように、吐き捨てるように言った。


「本当はさ、たまに思う。告白して、当たって砕けたら楽になるんじゃないかって」


 その顔はひどく寂しげで、私はほとんど変わらない背丈の瑠衣を抱きしめたいと思った。学校だからしないけど、そうじゃなかったらしていた。常識って時々ひどく邪魔だ。
 もし私が男だったら間違いなく瑠衣を幸せにするのに、と思うくらいに私は瑠衣のことが大切だったけど、それを言えば瑠衣が一番嫌がることも分かっていた。手に取るように分かっていた。
 それは言ってはいけないことだということも私はよく分かっていたし、そんなことを言う私に瑠衣はまたあの私の嫌いな笑い方をするのだ。
 わかるのだ。私にはわかる。
 だって、私と瑠衣は親友だから。
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