私の親友

蒼キるり

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5.恋は可愛い

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 楽しみな予定はなかなか訪れてはくれないのに、来なくていいと思っている行事は必ず早くやってくるものなのだ。
 例えば、瑠衣と約束している冬にイルミネーションを見に行く予定がまだ夏であるためになかなか訪れないように。やりたくない球技大会があっという間にやってくるように。
 球技大会よりも避暑地でバカンスとかやってくれないだろうか。まあ、学校のメンバーで行っても心休まる時がないから自由行動オンリーにして欲しいけど。私は瑠衣と二人で涼むのだ。うん、我ながら楽しそうな想像である。


「こんな暑い中、体育館に一学年全員を集めるなんて、先生たちどうかしてると思う」

「そもそも夏に球技大会って時点でどうかしてるから仕方ない」


 私のぼやきに瑠衣が平然と返してくる。阿吽の呼吸ってこういうことだっけ。なんか違う気がするけど。暑さで頭が茹ってるからまともに考えられないのだ。
 これから始まる球技大会に向けて、体育教師からの有り難い話を聞いた後のストレッチをしているところだ。
 二人一組でやれと言われたので、私はもちろん瑠衣と組んで柔軟体操に勤しんでいる。これが痛いの痛くないのって。


「え、いや、痛っ。瑠衣、痛い。ちょっと、ねえ、痛いって」

「美奈、固くない?全然伸びない」


 ぐいぐいと背中を押してくる瑠衣に、痛い痛いと言いながら体を解していると、近くを通った担任に苦笑いされてしまったのが気に食わない。それもかなり冷ややかな目だった。失礼な、そんなに騒いでないし大きな声も出していないつもりだ。
 みんな話しながらやっているし、自由に組んでいいと言ったのは先生じゃないか。自分の言った通りにやってることを非難するの良くないと思う。まあ、非難してるのは目線だけだが。
 交代、と言って今度は私が瑠衣の背中を押す。骨張った背中は押せば押すほどよく伸びる。
 柔らかすぎる、と半ば八つ当たりのように思って、神崎見てるよと周りに気づかれないように囁いておいた。


「え、うそ。あ、いたっ」


 顔を上げた瞬間に、ぐっと押すと大袈裟な声が上がって私はつい声を上げて笑ってしまった。


「見てないじゃん、嘘つき」

「嘘じゃないって。さっき見てたもん」


 本当に、騒いでる私たちを神崎がちらりと見たのだ。まあほんの一瞬のことだけど、嘘ではない。


「……本当に見てたの?」


 ストレッチが終わって立ち上がったところで瑠衣が近くに寄って小声で尋ねてきた。
 ほとんど同じ目線で私の目を覗き込みつつも、ちらちらと神崎を見る瑠衣がなんだか可愛くって、どこも変なとこないから大丈夫だよとぽんと肩を叩いた。
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