私の親友

蒼キるり

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4.遠慮は無用

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 瑠衣は呆れと可笑しさの半分半分みたいな顔をして笑っている。


「美奈はほんとにいつも迷うなぁ」

「だってお小遣いのこと考えると、一ヶ月の間に買えるアイスの数なんて限りがあるよ。慎重に決めないと」


 王道のチョコ味にしようかそれとも期間限定のマンゴー味にしようかと悩みながら、私のも一口あげるからソーダ味も一口ちょうだいと瑠衣にねだっていた時だ。
 ぴろん、と自動ドアが開く時の間の抜けた音が鳴って、誰かが店に入って来たことに気づいた。
 この時間帯は学生がよく来ると知っているから、横目でちらりと見た制服に見覚えがあっても気に留めなかった。
 それなのに、向こうから声をかけられてひどく驚いた。
 田辺?と瑠衣の名字を呼ぶその声は、瑠衣がいつも耳を澄ませて聞いている声だ。瑠衣と一緒に私も聞き耳立てている声とも言える。
 だから私は不恰好なほど勢いよくそちらを向いてしまった。


「あ、やっぱり田辺と安藤さんだ。ちょっと意外だなぁ。買い食い?」


 そこにはやっぱり制服を少しも着崩していない神崎がいた。
 神崎がコンビニにいる方が意外だと思っていると私のその顔に気がついたのか、シャーペンの芯を買いに来たんだと教えてくれた。
 うーん、つくづく意外性もなく真面目そうな人だ。瑠衣がいいならいいのだけど。

 それにしてもせっかく神崎から話しかけられているというのに、瑠衣はびっくりするほど話さなくて、ああとかうんとか短く答えるばっかりだった。途中からは私の方が話していたほどだ。
 なんとなく程よく良い感じのところで会話を切り上げて三人一緒にコンビニを出ると、忘れかけていた暑さが襲ってきて私たちは揃って顔をしかめた。


「サウナみたい」


 瑠衣の呟きに神崎がわざとらしいくらい大げさに笑って、本当にサウナみたいだと言ってくれた。
 優しい人だなぁとは思う。その調子でもうちょっと瑠衣に近づいてくれると嬉しい。いや、それは瑠衣がするべきことか。うーん。
 それじゃあまた明日、と自転車に乗って帰っていく神崎の背中を瑠衣は見つめていた。


「ほら、私がどのアイスにしようかって悩んでてよかったでしょ」


 こんな機会でもなきゃゆっくり話せないもんね、と少し恩着せがましく言うと驚くことに瑠衣は少しも反論しなかった。
 それどころか袋から出したばかりのソーダアイスを私の目の前に突きつけてきた。


「二口食べていいよ」


 ありがたくいただくことにして、ぱくりと噛り付いた。続け様にもう一口。もちろん私の分も一口あげる。
 親友同士の間に遠慮は無用なのだ。
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