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10.期限付き
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「ごめん!」
「……は?」
思いの外早く浩也からの返答があった。
こちらに向けた顔は珍しく驚いていて、しかも返答は想像していたものとは違ったからそっちにも驚いた。
「……だから、俺から言いだしたことでもあったし。浩也は色々考えてくれた訳で。なのに、その、あんな風な態度取ったのは悪かったっていうか……ごめん」
「…………」
「あ、あとこれなんだけど」
謝っても浩也の反応は鈍くて、やっぱり怒っているんだろうか。
それでもこれだけは言ってしまいたくて、鞄から本を取り出す。それは昨日、浩也に入れられたであろう本。
「こ、これな……浩也がほら、色々言ってただろ?だから読んだんだよ」
「……は?」
「浩也も読んだんだろ?意味わかんねーとか言ったし、今もよくは分かんねーけど。なんかこいつらさ、すげー頑張って恋愛してるんだよ。だからなんかこう、そういうのは良いなって。浩也もそう思ったから読ませてきたんだよな?」
一息に言ってのけ、恐る恐る浩也の顔を確認する。
顔を逸らしていて、どう思ってるのか分からなくて声を掛けようとした途端、浩也があのさと声を掛けて来た。
「謝られる筋合いないと思うんだけど。俺がキスしたのわかってる?なんで普通に来るわけ?」
「……なんで、って別に嫌じゃなかったし。浩也は練習に付き合ってくれたわけ、だし」
そうか、俺嫌じゃなかったんだ、と言いながら気付いた。だから、当たり前みたいにここに来ようって思ったんだ。
「だから……さ」
全く言おうと思ってなかった事を口走った。
「俺まだ……練習続けたいんだけど」
思っていなかったと言えば嘘になる。それでも、それはおかしい事だし言うつもりなんてさらさらなかったのに。
「それって……俺とキスしたいって言ってるように聞こえるけど」
「わ、悪いのかよ。浩也の方がしてきたんだろ」
おかしい。だってそんなの普通じゃない。なんでそんなことを望むのか俺には全然分からなかったけど、でもここで前みたいに放課後に会って話してそれで終わるだけに戻るのは嫌だと、そう思った。
「分かった」
浩也がつかつかと歩いてきて、俺の後ろの戸を乱暴に閉める。音の大きさに驚いている間に浩也に腕を掴まれ引き寄せられる。
「じゃあ、佐武に彼女が出来るまで、俺がしっかり練習付き合ってあげる」
そう囁くように言った浩也の顔は笑ってるのに哀しそうな気がして不思議に思った。
でもそれを考える時間もなく、浩也に口付けられる。
それが驚くほど心地良くて、その事しか考えられなくなる。
こうして俺と浩也の関係は始まった。
俺の彼女が出来るまでという、期限付きで。
「……は?」
思いの外早く浩也からの返答があった。
こちらに向けた顔は珍しく驚いていて、しかも返答は想像していたものとは違ったからそっちにも驚いた。
「……だから、俺から言いだしたことでもあったし。浩也は色々考えてくれた訳で。なのに、その、あんな風な態度取ったのは悪かったっていうか……ごめん」
「…………」
「あ、あとこれなんだけど」
謝っても浩也の反応は鈍くて、やっぱり怒っているんだろうか。
それでもこれだけは言ってしまいたくて、鞄から本を取り出す。それは昨日、浩也に入れられたであろう本。
「こ、これな……浩也がほら、色々言ってただろ?だから読んだんだよ」
「……は?」
「浩也も読んだんだろ?意味わかんねーとか言ったし、今もよくは分かんねーけど。なんかこいつらさ、すげー頑張って恋愛してるんだよ。だからなんかこう、そういうのは良いなって。浩也もそう思ったから読ませてきたんだよな?」
一息に言ってのけ、恐る恐る浩也の顔を確認する。
顔を逸らしていて、どう思ってるのか分からなくて声を掛けようとした途端、浩也があのさと声を掛けて来た。
「謝られる筋合いないと思うんだけど。俺がキスしたのわかってる?なんで普通に来るわけ?」
「……なんで、って別に嫌じゃなかったし。浩也は練習に付き合ってくれたわけ、だし」
そうか、俺嫌じゃなかったんだ、と言いながら気付いた。だから、当たり前みたいにここに来ようって思ったんだ。
「だから……さ」
全く言おうと思ってなかった事を口走った。
「俺まだ……練習続けたいんだけど」
思っていなかったと言えば嘘になる。それでも、それはおかしい事だし言うつもりなんてさらさらなかったのに。
「それって……俺とキスしたいって言ってるように聞こえるけど」
「わ、悪いのかよ。浩也の方がしてきたんだろ」
おかしい。だってそんなの普通じゃない。なんでそんなことを望むのか俺には全然分からなかったけど、でもここで前みたいに放課後に会って話してそれで終わるだけに戻るのは嫌だと、そう思った。
「分かった」
浩也がつかつかと歩いてきて、俺の後ろの戸を乱暴に閉める。音の大きさに驚いている間に浩也に腕を掴まれ引き寄せられる。
「じゃあ、佐武に彼女が出来るまで、俺がしっかり練習付き合ってあげる」
そう囁くように言った浩也の顔は笑ってるのに哀しそうな気がして不思議に思った。
でもそれを考える時間もなく、浩也に口付けられる。
それが驚くほど心地良くて、その事しか考えられなくなる。
こうして俺と浩也の関係は始まった。
俺の彼女が出来るまでという、期限付きで。
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