17 / 19
17.とんでもない
しおりを挟む
俺と由那の子どもである由宇(名前をつけたのは由那だ。俺の「う」を取ったと言われた。よくわからん)が小学五年生になったある日、とんでもない報告をしてきた。
「今日、学校で溶けた」
夕食の皿をテーブルに並べていた俺は皿を危うく落とすところだった。
中身がカレーだったので絨毯についたらえらいことになるぞ!という思いだけで耐えた。偉いぞ。
「えー、もうそんな年頃?」
そっかそっかあ、と由那がコップにお茶を注ぎながら平然と言うので俺はもっと動揺した。
「いや、いやいやいや、もっと、え?言うことあるだろ?え?」
「お母さんたちに聞いてたからそんなにびっくりしなかった」
「そりゃあ何よりだけども!」
いつかこうなるかもなー、どうだろうなー、くらいの軽い気持ちでいたのにこんなことになって驚きすぎて手が震える。
お腹すいたから食べようよー、とか言われてもこちとら食欲なんて消えたわ。
「由宇、学校の誰を好きになったの?」
「えー、お母さん知ってるかなー?」
「クラス写真みるからー」
なにを和気藹々と話してるんだ!と思うもののぶっちゃけなにを聞いたらいいものかわからないし、ていうか溶けるって、あー、あの頃柔軟に対応していた学生の俺、めっちゃ懐かしい。年取るとこんなにも動揺するんだよ。由那?例外。
「誰にも見られてないよ、大丈夫。安心して、お父さん」
「お、おー、そうか」
「好きな人には見られたけど」
「見られてんじゃねえか」
しかもめっちゃ重大な人に見られてるわ。なにが大丈夫だ。
……いや、まあ、そういう話になると俺も由那が初めて溶けた時を目撃したわけだけど。
「今日、学校で溶けた」
夕食の皿をテーブルに並べていた俺は皿を危うく落とすところだった。
中身がカレーだったので絨毯についたらえらいことになるぞ!という思いだけで耐えた。偉いぞ。
「えー、もうそんな年頃?」
そっかそっかあ、と由那がコップにお茶を注ぎながら平然と言うので俺はもっと動揺した。
「いや、いやいやいや、もっと、え?言うことあるだろ?え?」
「お母さんたちに聞いてたからそんなにびっくりしなかった」
「そりゃあ何よりだけども!」
いつかこうなるかもなー、どうだろうなー、くらいの軽い気持ちでいたのにこんなことになって驚きすぎて手が震える。
お腹すいたから食べようよー、とか言われてもこちとら食欲なんて消えたわ。
「由宇、学校の誰を好きになったの?」
「えー、お母さん知ってるかなー?」
「クラス写真みるからー」
なにを和気藹々と話してるんだ!と思うもののぶっちゃけなにを聞いたらいいものかわからないし、ていうか溶けるって、あー、あの頃柔軟に対応していた学生の俺、めっちゃ懐かしい。年取るとこんなにも動揺するんだよ。由那?例外。
「誰にも見られてないよ、大丈夫。安心して、お父さん」
「お、おー、そうか」
「好きな人には見られたけど」
「見られてんじゃねえか」
しかもめっちゃ重大な人に見られてるわ。なにが大丈夫だ。
……いや、まあ、そういう話になると俺も由那が初めて溶けた時を目撃したわけだけど。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
【完結】キスの練習相手は幼馴染で好きな人【連載版】
猫都299
青春
沼田海里(17)は幼馴染でクラスメイトの一井柚佳に恋心を抱いていた。しかしある時、彼女は同じクラスの桜場篤の事が好きなのだと知る。桜場篤は学年一モテる文武両道で性格もいいイケメンだ。告白する予定だと言う柚佳に焦り、失言を重ねる海里。納得できないながらも彼女を応援しようと決めた。しかし自信のなさそうな柚佳に色々と間違ったアドバイスをしてしまう。己の経験のなさも棚に上げて。
「キス、練習すりゃいいだろ? 篤をイチコロにするやつ」
秘密や嘘で隠されたそれぞれの思惑。ずっと好きだった幼馴染に翻弄されながらも、その本心に近付いていく。
※現在完結しています。ほかの小説が落ち着いた時等に何か書き足す事もあるかもしれません。(2024.12.2追記)
※「キスの練習相手は〜」「幼馴染に裏切られたので〜」「ダブルラヴァーズ〜」「やり直しの人生では〜」等は同じ地方都市が舞台です。(2024.12.2追記)
※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、ノベルアップ+、Nolaノベルに投稿しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる