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3.どうやら皇子は幼いようで
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「失礼ながら、御身に触れさせていただいても宜しいでしょうか?」
皇子の気が乗らない場合はこちらからその気になるように動きましょう。という教えをなんとか思い出す。
それでも皇子は何も言わない。むしろ一歩後ろに下がってしまったようだ。ミアは不躾だということを承知の上で好奇心に勝てずにそっと視線を上げた。
初めて間近で見る皇子の顔はひどく青ざめていた。
まだ幼さの残るものの、整った顔立ちが可哀想なくらいに辛そうだった。もしや体調でも悪いのでは、とミアが思わず皇子に近づく。
ひっ、と引き攣ったような声が上がったかと思うと、皇子が初めて言葉を発した。
「よ、夜伽は不要だ」
ひどく震えていて怯えた声だった。何をそんなに、とミアは困惑する。
やはり調子が良くないのかもしれない。だとすれば誰か呼んだ方が良いのだろうか。
「誰かお呼びしましょうか。御付きの方はどちらに」
「ふ、不要だ」
切羽詰まったような声なのに不要だというのは何事か。
皇子が考えていることがさっぱり分からない、とミアは内心溜息を吐きながらも丁寧な言葉で続ける。
「それなら一度寝台でお休みになられてはいかがでしょう」
これなら大丈夫だろうと思ったのに、皇子は何故かより一層怯えてしまったようで、今やはっきり見て分かるほどに震えている。
ミアとほとんど変わらない背丈を縮こませているためにひどく小さく見えた。
「だ、だから夜伽は、ふ、不要だと言っているのに……」
そう言いながらも怯えているために威厳なんてものは見当たらない。子供が怖がって駄々をこねている姿に一番近いだろうか。
ミアは更に必死で考えていた。この状況はかなりまずいのではないか。自分がどうにかしなければ、と。
そしてミアは分かりやすいように一歩後ろに下がって見せた。それから宣誓をするように片手を挙げる。
「……私は殿下の許可なく触れたり致しませんし無理に夜伽を行わないと誓います」
何が起きたか分からない、という風におはミアを見つめていた。
真一文字に結ばれていた口をミアは少しだけ緩める。皇子を安心させるためだけに。
「これなら怖くありませんか?」
それは多少のぎこちなさはあるものの、思い遣りを感じられるものでもあった。
それを見た皇子の目から堰を切ったようにぽろぽろと涙が零れる。
(この皇子、私と同じ歳だというのにまるで本当に子供じゃないか。弟といい勝負……いや、それより幼い)
そう思いながら、ミアは笑顔を引き攣らせつつ、皇子を再度座るように勧めた。
皇子の気が乗らない場合はこちらからその気になるように動きましょう。という教えをなんとか思い出す。
それでも皇子は何も言わない。むしろ一歩後ろに下がってしまったようだ。ミアは不躾だということを承知の上で好奇心に勝てずにそっと視線を上げた。
初めて間近で見る皇子の顔はひどく青ざめていた。
まだ幼さの残るものの、整った顔立ちが可哀想なくらいに辛そうだった。もしや体調でも悪いのでは、とミアが思わず皇子に近づく。
ひっ、と引き攣ったような声が上がったかと思うと、皇子が初めて言葉を発した。
「よ、夜伽は不要だ」
ひどく震えていて怯えた声だった。何をそんなに、とミアは困惑する。
やはり調子が良くないのかもしれない。だとすれば誰か呼んだ方が良いのだろうか。
「誰かお呼びしましょうか。御付きの方はどちらに」
「ふ、不要だ」
切羽詰まったような声なのに不要だというのは何事か。
皇子が考えていることがさっぱり分からない、とミアは内心溜息を吐きながらも丁寧な言葉で続ける。
「それなら一度寝台でお休みになられてはいかがでしょう」
これなら大丈夫だろうと思ったのに、皇子は何故かより一層怯えてしまったようで、今やはっきり見て分かるほどに震えている。
ミアとほとんど変わらない背丈を縮こませているためにひどく小さく見えた。
「だ、だから夜伽は、ふ、不要だと言っているのに……」
そう言いながらも怯えているために威厳なんてものは見当たらない。子供が怖がって駄々をこねている姿に一番近いだろうか。
ミアは更に必死で考えていた。この状況はかなりまずいのではないか。自分がどうにかしなければ、と。
そしてミアは分かりやすいように一歩後ろに下がって見せた。それから宣誓をするように片手を挙げる。
「……私は殿下の許可なく触れたり致しませんし無理に夜伽を行わないと誓います」
何が起きたか分からない、という風におはミアを見つめていた。
真一文字に結ばれていた口をミアは少しだけ緩める。皇子を安心させるためだけに。
「これなら怖くありませんか?」
それは多少のぎこちなさはあるものの、思い遣りを感じられるものでもあった。
それを見た皇子の目から堰を切ったようにぽろぽろと涙が零れる。
(この皇子、私と同じ歳だというのにまるで本当に子供じゃないか。弟といい勝負……いや、それより幼い)
そう思いながら、ミアは笑顔を引き攣らせつつ、皇子を再度座るように勧めた。
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