次に会うときは友だち

蒼キるり

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「私も家に帰って、家族の顔を見てくるよ」


 じゃあね、と手を振って軽い足取りで家へと帰る。あーあ、寂しいくらいさくさく歩けて困る。すぐ着いてしまう。見てられなくって家を飛び出したけど、でもやっぱりこのまま帰らずにあっちに行くのは嫌過ぎる。
 家に帰ると、相変わらず湿っぽくて暗かったけど、お母さんが目を赤くしながら揚げ物をしていた。
 うおぉ、やったー! 私の分ある? 無いかなぁ、残念! と思っていると、お母さんが私の写真の前に揚げたてのエビフライが乗ったお皿を置いてくれた。おぉ、あった!


「有紗はこれが好きだったもんね」

「……そうだよ、お母さんの作るエビフライ好きだった。ありがとね」


 涙を拭うお母さんに「泣かないで」と声をかける。届かないってわかってるけど。
 私、ちゃんと楽しいよ、楽しかったよ。ありがとう、お母さん。あっちに行くまでずっと言うからね、届かなくてもずっと。
 そう思っていると、お母さんがちょっとだけ笑った。ほんの少しは届いてるのかなって、また泣きそうになった。


***


 高校生になっても、時々生きてる人間と幽霊を間違える。今日もぶつかりそうになって「すみません」と謝ったら三日前に死んだ人だった。うっかりだ。
 そんな俺のことも「まだ眠いんだなー」と軽く流してくれる友達ができた。高校生になって席が隣だったことから仲良くなったやつだ。
 好きなものも価値観も見えてるものも違うけど、一緒にいると楽しいと思う。一人で本を読んだり、壁とサッカーしてるのと同じくらい。
 あの日、飛び降りなくてよかった。あのお姉さんに感謝しないと。生きてないのに、本当に生き生きした人だったな、嫌味ではなく。
 今頃、もう生まれ変わってるのかな……なんて、考えているとランドセル背負った一年生くらいの小さな子どもがおそらく幽霊だろうなと思わしき子どもに「あなた何小?」と話しかけているのを見つけた。視えてるのか、と少し驚く。


「その子は幽霊だよ」


 僕がそう声をかけると、くるりとこちらを振り返り大きな目をまんまるにして「しってる!」と答えた。知ってたのか、チャレンジャーだな。


「お兄ちゃんも、視えるの?」

「え、うん」

「すごぉい! 同じひと、初めて会った!」


 それは僕も、と答える前ににこにこと見上げられる。その笑顔はどこか見覚えがある気がした。


「わたしと友達になって!」


 その言葉にあのお姉さんを思い出す。ああ、お姉さんと会ってから、そういえばもう七年も経つ。すごいな、と笑ってしまうのを止められなかった。


「ほんとに約束破らないんだな」
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