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3.暗い夢の中
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暗い暗い闇の中。ぽつん、と一筋の光が灯っていた。
けれど、例えばここで暮らすにして、それだけに頼るにはあまりに頼りない小さな光だ。
その光に埋もれるようにして、小さな人影が二つあった。
それは最初うっかり一つと数えてしまいそうなほどに寄り添いあっていた。
まるで一つになりたいとでも言うように、二人は互いを深く深く抱き締めている。
お世辞にも綺麗とは言えない粗末な着物を身に纏った二人の顔は青白く、そして怖いほどにそっくりだった。
違うところなど一つもない、鏡に映した合ったかのように似通った二人。
誰も入る隙間がないほどに近く、そして互いのことしか見えていないかのように見つめ合っていた二人が唐突にぐるりと顔の向きを変えた。
その動作はまるで壊れかけた人形のように不気味で人間離れしていた。
慎司は人通りが多い場所に行くことを好まなかった。昔からよく人に見られていたからかもしれない。
私も見られることも人通りが多い場所も好きではないから、慎司の気持ちはよく分かる。
でも今は人通りの多い所に行きたくないなんて言っていられない。
早く、早く慎司を探さないと、そんな想いに急き立てられて、大学にも行かず私は闇雲に人が多い場所を探し回っている。
今朝は昨日より更に早く慎司を探さなければという気持ちが高まったのだ。だからなんの確証もないのに、こうして慎司を探している。
こんな所にいるはずがないと分かっていながらも、何故かここに足が向かったのだから仕方ない。
なんだかおかしい、とは少し思っていた。慎司が自分からこんな場所に来ることはないだろうし、もし何かの事件に巻き込まれていたとしてもこんな場所をうろつける余裕があるなら家に帰るだろう。
それに例の男女の双子を探すなら、こんな所より学校の近くや住宅街の方がいい。こんな平日の歓楽街にはいないだろう。
それでも、どうしてもこちらに来いと心が騒ぐのだ。それは昨日おかしな夢を見たからかもしれない。
「……なんだったの、あの夢」
昨日の夢の不可解さに思わず声が漏れた。何を取ってもおかしなところしかない夢だった。
そしてとても怖い夢でもあった。あの二人は人間のようでいて、それ以外の何かに見えた。
私があの場にいたはずがないのに、私は気づいていたのだ。二人の目線が明確にこちらを向いていると、何故か気づいていた。それは確かなことだと私は確信していた。
ああ、それにしても、あの二人は明らかに双子だった。間違いない。
だから目が覚めた時、あり得ないと思いながらもこう考えてしまったのだ。
あれは慎司が会ったという双子だったのではないだろうか、と。
けれど、例えばここで暮らすにして、それだけに頼るにはあまりに頼りない小さな光だ。
その光に埋もれるようにして、小さな人影が二つあった。
それは最初うっかり一つと数えてしまいそうなほどに寄り添いあっていた。
まるで一つになりたいとでも言うように、二人は互いを深く深く抱き締めている。
お世辞にも綺麗とは言えない粗末な着物を身に纏った二人の顔は青白く、そして怖いほどにそっくりだった。
違うところなど一つもない、鏡に映した合ったかのように似通った二人。
誰も入る隙間がないほどに近く、そして互いのことしか見えていないかのように見つめ合っていた二人が唐突にぐるりと顔の向きを変えた。
その動作はまるで壊れかけた人形のように不気味で人間離れしていた。
慎司は人通りが多い場所に行くことを好まなかった。昔からよく人に見られていたからかもしれない。
私も見られることも人通りが多い場所も好きではないから、慎司の気持ちはよく分かる。
でも今は人通りの多い所に行きたくないなんて言っていられない。
早く、早く慎司を探さないと、そんな想いに急き立てられて、大学にも行かず私は闇雲に人が多い場所を探し回っている。
今朝は昨日より更に早く慎司を探さなければという気持ちが高まったのだ。だからなんの確証もないのに、こうして慎司を探している。
こんな所にいるはずがないと分かっていながらも、何故かここに足が向かったのだから仕方ない。
なんだかおかしい、とは少し思っていた。慎司が自分からこんな場所に来ることはないだろうし、もし何かの事件に巻き込まれていたとしてもこんな場所をうろつける余裕があるなら家に帰るだろう。
それに例の男女の双子を探すなら、こんな所より学校の近くや住宅街の方がいい。こんな平日の歓楽街にはいないだろう。
それでも、どうしてもこちらに来いと心が騒ぐのだ。それは昨日おかしな夢を見たからかもしれない。
「……なんだったの、あの夢」
昨日の夢の不可解さに思わず声が漏れた。何を取ってもおかしなところしかない夢だった。
そしてとても怖い夢でもあった。あの二人は人間のようでいて、それ以外の何かに見えた。
私があの場にいたはずがないのに、私は気づいていたのだ。二人の目線が明確にこちらを向いていると、何故か気づいていた。それは確かなことだと私は確信していた。
ああ、それにしても、あの二人は明らかに双子だった。間違いない。
だから目が覚めた時、あり得ないと思いながらもこう考えてしまったのだ。
あれは慎司が会ったという双子だったのではないだろうか、と。
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