君は唯一無二の愛しい子

蒼キるり

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1.いなくなる恋人

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 恋人の慎司と連絡が取れなくなって、もう三日が経とうとしていた。
 電話をしても出ないし、メールの返信も来ない。住んでいるアパートにも帰っていないし、念の為に実家に確認を入れても帰っていないみたいだった。
 それどころか誰も慎司を見ていないというのだから、もう探しようがない。
 慎司は私の連絡にはすぐに返してくれていたし、いつだって私を一番に考えてくれていた。
 今までこんなことは一度もなかったのに、どうしてこんなことになってしまったのだろう。

 そんなことをぐるぐると思いながら、慎司と連絡が付かないのだと、同じ大学の友人に告げた。
 学食で人気のカレーを口に運んでいた友人は私の言葉にカラカラと笑い声を上げた。


「心配性だなぁ、真由は」


 失礼な話だと思う。私はこうして学食に足を運んでも食欲が全く湧かないほど心配しているのに。
 私がムッと眉をひそめるのを気にもとめず、友人はペラペラと言葉を続けた。


「もういい年なんだから、ちょっとどっかで遊んでるだけでしょ。そのうち帰って来るって」


 なんでそんなに軽く言えるんだ、と怒りさえ込み上げて来るけど、ここで怒ったらもっと笑われてしまうのだろうからぐっと堪える。
 所詮他人事だからこんな風に思えるのだ。自分の立場になって考えればそんなこと口が裂けても言えないはずだ。
 恋人がいなくなったと考えてみろと怒れないことが悔しくて仕方ない。
 ああ、もう、周りの些細な話し声にさえイライラとしてしまう。


「真由もちょっとは慎司くん離れしないと」


 揶揄うような言葉になんとかぎこちない笑みを浮かべて頷く。上手く出来ている自信はない。離れる、なんてそんなの馬鹿馬鹿しい。
 もしも何か分かったら教えてね、となんとか言うことは忘れなかった。
 相談なんてするんじゃなかったな、と思いながら私は無理やり水だけを空っぽの胃に流し込んだ。
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