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プロローグ
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まるで鏡に映したかのようにそっくりな顔をした二人が溶けそうなほどに潤んだ瞳で互いを見つめていた。
隅から隅まで全く同じに見える二人の唯一違うところといえば、片方が男で片方が女だということくらいだろうか。
ほんの数年前ならば誰もが見分けがつかなかっただろう二人が男女で分かれていることすら不思議に思える。
けれど、それさえも些細なことに思えるほどに二人はそっくりだった。姿形だけでなく、心の奥深くまで。
「……いいのかな、こんなことして」
女の方がぽつりと呟いた。しかし言葉に反して大して気にしているような素振りは見せていない。
念のため、例えば男の気持ちを確かめるためだけに発した言葉のようだった。その証拠に女は悪戯っぽく笑っている。
なにが? と男が笑いながら問いかける。何を言いたいかなんて全部分かっていると言いたげに。
「だって、私たち兄妹なのに」
気にしていない証拠のように女はひっそりと笑みを浮かべている。男はそんな女に手を伸ばしながら、全く同じように口角を上げる。
「いいよ、だって、好きなんだから」
仕方ないよね、そう答えながら、二人の身体が重なる。
どちらがどちらか分からないほどに、二人は一つだった。
隅から隅まで全く同じに見える二人の唯一違うところといえば、片方が男で片方が女だということくらいだろうか。
ほんの数年前ならば誰もが見分けがつかなかっただろう二人が男女で分かれていることすら不思議に思える。
けれど、それさえも些細なことに思えるほどに二人はそっくりだった。姿形だけでなく、心の奥深くまで。
「……いいのかな、こんなことして」
女の方がぽつりと呟いた。しかし言葉に反して大して気にしているような素振りは見せていない。
念のため、例えば男の気持ちを確かめるためだけに発した言葉のようだった。その証拠に女は悪戯っぽく笑っている。
なにが? と男が笑いながら問いかける。何を言いたいかなんて全部分かっていると言いたげに。
「だって、私たち兄妹なのに」
気にしていない証拠のように女はひっそりと笑みを浮かべている。男はそんな女に手を伸ばしながら、全く同じように口角を上げる。
「いいよ、だって、好きなんだから」
仕方ないよね、そう答えながら、二人の身体が重なる。
どちらがどちらか分からないほどに、二人は一つだった。
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