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第1章 偽装結婚
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私は、スノーフレーク様の屋敷の前に立っていた。
今日は、昨日の返事をするために私は屋敷を訪れたのだ。
私が玄関の扉を叩こうとした時に、後ろから声がする。
「クランベリー殿、よかった、間に合わないかと思った」
スノーフレーク様は、額の汗を拭った。
「どうされたのですか、そのように慌てて」
私は、スノーフレーク様がなぜ走って帰ってきたのか分からなかった。
「それは、クランベリー殿との約束に間に合わないからであろう」
スノーフレーク様は、当然の事のように言う。
私は、スノーフレーク様の答えに驚いた。
なぜなら、伯爵家であるスノーフレーク様が、子爵家の私を待たしても、何も問題はないのである。
実際、私は男爵家の三男からは、よく待たされていた。
ひどい時には、その場に現れない事すらあった。
「済まない、今日は、急な任務が入ってしまい、あまり時間が取れないのだ。申し訳ないが、ここで返事を聞かせてくれないか」
スノーフレーク様は、本当に申し訳なさそうに言った。
「スノーフレーク様、1つだけ聞いてもよろしいでしょうか。スノーフレーク様には、この結婚に何の得が有るのでしょうか」
私は、メープルメイド長に聞かれてもいいように、「偽装」という言葉を使わなかった。
「得と言われるとあれだが、まず、メープルを喜ばせることが出来る。そして、周りにとやかく言われる事も無くなるだろう。あとは、……」
スノーフレーク様は、一旦言葉を止めて私を見つめる。
「私は、初老の婦人のために男に謝るように言っていたクランベリー殿を見た時、もし結婚をするとしたら、この様な女性がいいと思ったのだ。家に帰ったら、クランベリー殿が居たことにとても驚いたが、運命だとも思った。そして、気が付いたら私は、クランベリー殿に結婚を申し込んでいた」
スノーフレーク様は、少し頬を赤らめていたが、真っ直ぐ私の瞳を見ている。
「スノーフレーク様は、私に慕う方が出来たら、離縁をしてもよいと言われました。私も、スノーフレーク様にその様な方が出来れば、離縁に応じると言うことでよろしいですか」
スノーフレーク様の表情が、みるみるうちに明るくなる。
「と言うことは、私の申し出を受けてくれるのだな、私の伴侶になってくれるのだな」
「はい、条件が魅力的過ぎます、スノーフレーク様。なので、お給金は、半分でいいです」
私は、ここまでスノーフレーク様が喜んでくれるとは思っていなかった。
「クランベリー殿、いや、もう名前で呼ばないと不自然だな。オーキッド、ありがとう」
スノーフレーク様は、玄関の扉を開けて中に向かって叫んだ。
「メープル、オーキッドが私のプロポーズを受けてくれた。私たちは、夫婦になる」
屋敷の中から、メープルメイド長が出てくる。
「クインス様、おめでとうございます。オーキッド様、これからよろしくお願いします」
メープルメイド長は、目に涙を浮かべている。
スノーフレーク様は、そんなメープルメイド長の事を、優しい笑顔で見ている。
「メープル、私は、そろそろ行かなければならない。私の代わりに、屋敷のことや、他の者たちの事を、オーキッドに紹介してもらえないか」
「はい、クインス様。お任せ下さい」
「オーキッド、明日は1日屋敷にいるようにするから、今後の事を話し合おう。それでは、また明日」
スノーフレーク様は、私と明日の約束をすると、急いでどこかに向かわれた。
早速、私は、メープルメイド長に屋敷の中の案内をしてもらう。
そして、執事のハートシードと、料理人のマシュマロウを紹介してもらった。
メープルメイド長が紅茶の準備をすると言ったので、私はみんなで飲むことを提案した。
メープルメイド長たちは、スノーフレーク様の結婚を心から喜んでおり、私の事をとても歓迎してくれている。
私は、両親への報告をするために、スノーフレーク様の屋敷を後にした。
今日は、昨日の返事をするために私は屋敷を訪れたのだ。
私が玄関の扉を叩こうとした時に、後ろから声がする。
「クランベリー殿、よかった、間に合わないかと思った」
スノーフレーク様は、額の汗を拭った。
「どうされたのですか、そのように慌てて」
私は、スノーフレーク様がなぜ走って帰ってきたのか分からなかった。
「それは、クランベリー殿との約束に間に合わないからであろう」
スノーフレーク様は、当然の事のように言う。
私は、スノーフレーク様の答えに驚いた。
なぜなら、伯爵家であるスノーフレーク様が、子爵家の私を待たしても、何も問題はないのである。
実際、私は男爵家の三男からは、よく待たされていた。
ひどい時には、その場に現れない事すらあった。
「済まない、今日は、急な任務が入ってしまい、あまり時間が取れないのだ。申し訳ないが、ここで返事を聞かせてくれないか」
スノーフレーク様は、本当に申し訳なさそうに言った。
「スノーフレーク様、1つだけ聞いてもよろしいでしょうか。スノーフレーク様には、この結婚に何の得が有るのでしょうか」
私は、メープルメイド長に聞かれてもいいように、「偽装」という言葉を使わなかった。
「得と言われるとあれだが、まず、メープルを喜ばせることが出来る。そして、周りにとやかく言われる事も無くなるだろう。あとは、……」
スノーフレーク様は、一旦言葉を止めて私を見つめる。
「私は、初老の婦人のために男に謝るように言っていたクランベリー殿を見た時、もし結婚をするとしたら、この様な女性がいいと思ったのだ。家に帰ったら、クランベリー殿が居たことにとても驚いたが、運命だとも思った。そして、気が付いたら私は、クランベリー殿に結婚を申し込んでいた」
スノーフレーク様は、少し頬を赤らめていたが、真っ直ぐ私の瞳を見ている。
「スノーフレーク様は、私に慕う方が出来たら、離縁をしてもよいと言われました。私も、スノーフレーク様にその様な方が出来れば、離縁に応じると言うことでよろしいですか」
スノーフレーク様の表情が、みるみるうちに明るくなる。
「と言うことは、私の申し出を受けてくれるのだな、私の伴侶になってくれるのだな」
「はい、条件が魅力的過ぎます、スノーフレーク様。なので、お給金は、半分でいいです」
私は、ここまでスノーフレーク様が喜んでくれるとは思っていなかった。
「クランベリー殿、いや、もう名前で呼ばないと不自然だな。オーキッド、ありがとう」
スノーフレーク様は、玄関の扉を開けて中に向かって叫んだ。
「メープル、オーキッドが私のプロポーズを受けてくれた。私たちは、夫婦になる」
屋敷の中から、メープルメイド長が出てくる。
「クインス様、おめでとうございます。オーキッド様、これからよろしくお願いします」
メープルメイド長は、目に涙を浮かべている。
スノーフレーク様は、そんなメープルメイド長の事を、優しい笑顔で見ている。
「メープル、私は、そろそろ行かなければならない。私の代わりに、屋敷のことや、他の者たちの事を、オーキッドに紹介してもらえないか」
「はい、クインス様。お任せ下さい」
「オーキッド、明日は1日屋敷にいるようにするから、今後の事を話し合おう。それでは、また明日」
スノーフレーク様は、私と明日の約束をすると、急いでどこかに向かわれた。
早速、私は、メープルメイド長に屋敷の中の案内をしてもらう。
そして、執事のハートシードと、料理人のマシュマロウを紹介してもらった。
メープルメイド長が紅茶の準備をすると言ったので、私はみんなで飲むことを提案した。
メープルメイド長たちは、スノーフレーク様の結婚を心から喜んでおり、私の事をとても歓迎してくれている。
私は、両親への報告をするために、スノーフレーク様の屋敷を後にした。
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