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第1章 舞踏会
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「どうしたんだ、アプリコット侯爵令嬢、私の顔に何かついているのか」
まじまじとペリウィンクル殿下の顔を見ている私に、ペリウィンクル殿下が言った。
「い、いえ、初めてペリウィンクル殿下からお声を掛けて頂いたと思って……」
「それはそうであろう、私とアプリコット侯爵令嬢は、今日初めて会ったのだから」
ペリウィンクル殿下は、少し怪訝な表情を浮かべる。
「まあ、よい。今日は、私との初めての舞踏会を楽しんでくれ、マグノリア」
ペリウィンクル殿下は、「また後でな」と言って向こうに行った。
私は、ペリウィンクル殿下の言い回しが気になったが、ペリウィンクル殿下が笑っていたこともあり、冗談だと受け止めた。
「マグノリア、すごいじゃない、今の、ペリウィンクル王太子殿下よね?」
私の横に、幼い頃からの知り合いであるミレットが近寄ってきた。
ミレットの父は、私の父と同じ侯爵であったが、ミレットの父親の方が王宮内での地位は上であった。
通常、同じ爵位の令嬢であっても、父親の権勢により、序列をつけるのだが、ミレットは違っていた。
ミレットは、どの人生でも、最後まで親友として私と接してくれるのだ。
「でも、気を付けた方がいいわよ」
少し声を落としたミレットは、目配せをしてくる。
私としたことが、ペリウィンクル殿下から声を掛けられたことで舞い上がってしまっていたようだ。
羨望の眼差しの中に、悪意の視線が混じっていた。
「ミレット、またね」
私は、ミレットにまで彼女たちの悪意が向かないように、小声で別れを告げてその場を離れた。
舞踏会会場に、厳格な雰囲気が漂う。
国王陛下と王妃様が、会場に入ってきたのだ。
ペリウィンクル殿下は、2人の側に並ぶ。
ファンファーレと共に、舞踏会は始まった。
会場にいた貴族の子息、令嬢ちは、互いにパートナーを見付けて踊り始める。
私に手を差し出された手を、悪意に満ちた視線を向けた令嬢が取る。
ついに、私はパートナーを見付けることが出来なかった。
皆、音楽に合わせて踊っている。
「溢れたのは、やはりそなたか」
そう言って声を掛けてきたのは、ペリウィンクル殿下であった。
ペリウィンクル殿下の動きを見て、一旦楽団は音楽を止める。
私に差し出された手を取った令嬢は、悔しそうに私を見ていた。
今までの人生では、私は必ず最後までパートナーを見付けられず、同じように溢れた男爵の子息と踊っていたのだ。
男爵の子息は、侯爵令嬢の私に驚くほど緊張するのだ。
私も、逆の立場なら、おそらく同じようになるであろう。
男爵と侯爵では、同じ貴族とはいえ、身分の差が大きいからである。
「せっかくなので、楽しく踊りましょう」
私が言うと、男爵の子息はようやく硬い笑顔をほころばせるのだ。
その姿を見たペリウィンクル殿下が、その後に、私に手を差し出すのがお決まりであったが、今回は違った。
会場に入った時といい、今までの人生とは違うのだ。
「いつまでも、私を溢れたままにしないでくれ」
ペリウィンクル殿下が私の手を取ると、楽団が音楽を再開する。
私は、覚悟を決めてペリウィンクル殿下の手を握り返した。
「せっかくなので、楽しませて頂きます、ペリウィンクル殿下」
私は、楽団の音に合わせて、第一歩を踏み出した。
まじまじとペリウィンクル殿下の顔を見ている私に、ペリウィンクル殿下が言った。
「い、いえ、初めてペリウィンクル殿下からお声を掛けて頂いたと思って……」
「それはそうであろう、私とアプリコット侯爵令嬢は、今日初めて会ったのだから」
ペリウィンクル殿下は、少し怪訝な表情を浮かべる。
「まあ、よい。今日は、私との初めての舞踏会を楽しんでくれ、マグノリア」
ペリウィンクル殿下は、「また後でな」と言って向こうに行った。
私は、ペリウィンクル殿下の言い回しが気になったが、ペリウィンクル殿下が笑っていたこともあり、冗談だと受け止めた。
「マグノリア、すごいじゃない、今の、ペリウィンクル王太子殿下よね?」
私の横に、幼い頃からの知り合いであるミレットが近寄ってきた。
ミレットの父は、私の父と同じ侯爵であったが、ミレットの父親の方が王宮内での地位は上であった。
通常、同じ爵位の令嬢であっても、父親の権勢により、序列をつけるのだが、ミレットは違っていた。
ミレットは、どの人生でも、最後まで親友として私と接してくれるのだ。
「でも、気を付けた方がいいわよ」
少し声を落としたミレットは、目配せをしてくる。
私としたことが、ペリウィンクル殿下から声を掛けられたことで舞い上がってしまっていたようだ。
羨望の眼差しの中に、悪意の視線が混じっていた。
「ミレット、またね」
私は、ミレットにまで彼女たちの悪意が向かないように、小声で別れを告げてその場を離れた。
舞踏会会場に、厳格な雰囲気が漂う。
国王陛下と王妃様が、会場に入ってきたのだ。
ペリウィンクル殿下は、2人の側に並ぶ。
ファンファーレと共に、舞踏会は始まった。
会場にいた貴族の子息、令嬢ちは、互いにパートナーを見付けて踊り始める。
私に手を差し出された手を、悪意に満ちた視線を向けた令嬢が取る。
ついに、私はパートナーを見付けることが出来なかった。
皆、音楽に合わせて踊っている。
「溢れたのは、やはりそなたか」
そう言って声を掛けてきたのは、ペリウィンクル殿下であった。
ペリウィンクル殿下の動きを見て、一旦楽団は音楽を止める。
私に差し出された手を取った令嬢は、悔しそうに私を見ていた。
今までの人生では、私は必ず最後までパートナーを見付けられず、同じように溢れた男爵の子息と踊っていたのだ。
男爵の子息は、侯爵令嬢の私に驚くほど緊張するのだ。
私も、逆の立場なら、おそらく同じようになるであろう。
男爵と侯爵では、同じ貴族とはいえ、身分の差が大きいからである。
「せっかくなので、楽しく踊りましょう」
私が言うと、男爵の子息はようやく硬い笑顔をほころばせるのだ。
その姿を見たペリウィンクル殿下が、その後に、私に手を差し出すのがお決まりであったが、今回は違った。
会場に入った時といい、今までの人生とは違うのだ。
「いつまでも、私を溢れたままにしないでくれ」
ペリウィンクル殿下が私の手を取ると、楽団が音楽を再開する。
私は、覚悟を決めてペリウィンクル殿下の手を握り返した。
「せっかくなので、楽しませて頂きます、ペリウィンクル殿下」
私は、楽団の音に合わせて、第一歩を踏み出した。
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