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第五章 『ゆらり揺れるタチアオイ』
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しおりを挟む二階建てのデパート広さはそこまでなく、いつも見ている洋服ショップを見ていく。
スポーティーな美知佳と、基本シンプルな服装の私。
ブラウスにミモレ丈のパステルグリーンのスカート。足を出す自信がなく、ミニスカートはNGだ。
「環菜はさ、もっと色んなジャンルの服着た方がいいよ」
「着こなし方、分からなくて」
「とりあえずミニ履いてたら、椎川ドキッとするんじゃないの」
「いいよそんな」
洋服ショップを出た後、その隣にある本屋さんに立ち寄るのがお決まりのパターンである。
いつもバスケ関連の雑誌を、長い間立ち読みする美知佳。
だから、私は途中で別れて違うコーナーへ向かおうとしていると……
「あぁっ!」
美知佳がやたら大きな声を上げるものだから、急いで立ち戻ると、美知佳はある集団を指差していた。
そして、男の子達もまた、美知佳を見て嬉しそうに近付いてくる。
「大堂先輩、お久しぶりです」
「皆久しぶり、元気だったー?」
誰だろう、先輩って言われているから、バスケ部の後輩だろうか? 久しぶりならば、中学の時の……?
分からず彼らの様子を見ていると、その中にいた一人から、グッと腕を掴まれた。
誰だと思っていると──
「梓君」
「環菜先輩も一緒だったんですね」
輪から離れると、笑顔で話しかけてくる。
「中学の時のバスケ部で集まってたんです」
「あぁ、そういうことだったんだね」
美知佳は慕われていたのだろう、彼等とワイワイ話だし、すっかり本屋さんだということを忘れ、全員お店から追っ払われてしまった。
前を歩く美知佳は、異性に囲まれているのに、へっちゃらのよう。
ワイワイ話しながら、エスカレーターで一階に下りると、後で入りたいね、と言ったアイスクリームショップに入っていく。
「勝手に入って行ってるけど、大丈夫なんですか」
苦笑する梓君に、私も同じ表情をして頷く。
中に入ると、20種類くらいのアイスが並べられており、ゴクリと唾を飲む。
「美味しそう……」
「あ、環菜、ちょっと食べながら喋ってもいい?」
「うん、いいよ」
とは言いつつ、今更嫌って言えないよ……。
「じゃあ、ヨーグルトと、マンゴーで」
じっくり悩みながら最後に注文を終えると、五人掛けの椅子には、美知佳と男の子三人。残り一席空いている。
でも、隣の違うテーブルの椅子に、梓君が一人座っている。
「梓君、あっち座っていいよ」
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