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第二章 『思い出には、目を伏せて』

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 体育館にて、レクリエーションは何なのか、と不思議に思っていると、案外体育系のクラス対抗ゲームだった。

 バスケボールをドリブルしながらコースを回り、次の生徒にパス。

 中学ではバスケ部だったため、俺はドン、ドンと、素早くドリブルをして他クラスを追い越すと、クラスメイトから歓声が沸く。

 何か恥ずかしいな、と思いながら次の八重樫にボールを渡すと、一番に長谷部が近寄ってきた。

「嶌君、すごい」

「ありがと」

「そういえば、中学の頃バスケ部って言ってたね」

「もう大分、体が鈍ってるけど」

「ううん、誰よりも早くて、ビックリしたもん」

 そんなに興奮することか? と思いながらも、笑顔の長谷部に、自分も笑いかける。

 環菜先輩は、今頃何してるんだろ。

 椎川先輩とは、同じクラスなのだろうか。毎日連絡を取っているのだろうか。

 二人の間の当たり前が、俺にとっては手の届かない距離。

 あれから一度も別れていないらしいから、もう一年半以上付き合っているのか。

 その間、俺はポッカリ心に穴の開いたまま、馬鹿みたいに毎日を過ごしていた。

 それが、とても悔しかった。







 翌日はまた行進から始まり、午後からはこの地域の歴史についての講義、だが行進の疲れでウトウト。

 夜は薄暗い教会の中で、ロウソクに火を灯して、礼拝。

 そして二日目の就寝時、俺はこっそり持ってきていた携帯を、二段ベットの上で弄っていた。

 でも、環菜先輩の連絡先など知らず、ぼんやり考えるだけ。

 俺のこと、ちっとも見てくれようとしないし、気まずさを全身から醸し出している。

 俺があの時、環菜先輩の気持ちに応えられなかったから?

 でもあの後、俺は環菜先輩のことが好きだったよ。

 好きのタイミングが違い、完全に空回りに終わってしまった。

 そして最終日、クラス写真を撮ると、無事にバスに乗って高校に戻って行く。

 クラスメイトとはそれなりに話すようになったし、八重樫や長谷部とも前より仲良くなった気がして、まぁ得る物はあった、という感じ。

 窓から施設の人に手を振りながら門を出ると、バスは東に向かって走り出す。

 そして、暫くすると、隣に座る八重樫が眠り始めて、俺の肩に頭を預けてきたではないか。

 男だし、好きな人でもないから、全然嬉しくないわぁ……。

 俺は静かに窓から景色を眺めて、地元にいるはずのあの人のことを考えていた。




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