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『エピローグ カラフル』

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~奈古千隼~

 お盆に鳰さんの家族と会い、それからも鳰さんとは割と頻繁に会っていたのだと思う。

 学生と社会人ではあっても、なんせ毎日通う場所も、住む場所同じだというのは、利点であった。

 季節は夏から秋を過ぎ、クリスマス前日、俺は鳰さんとカラオケに来ていた。

 イブの夜なのに、街の綺麗なイルミネーションを見に行くのではなく、カラオケに行きたいと言ったのは鳰さんで、声が出る今の時間を鳰さんは楽しもうとしているのが分かった。

 最近声の調子がすごく良い、と鳰さん本人が言う通り、彼女は見違えるくらいスラスラ言葉を述べている。

「……はぁ、歌えるって、楽しいですね」

「鳰さんって、歌上手いんですね」

「えっ、いや、そんな、褒めてもらえるような歌声じゃ……」

「楽しそうに歌っている姿を見るのが、嬉しいです」

 テーブルにはウーロン茶のコップが二つ、交互に歌いながら、既に二時間の時を過ごしていた。

「奈古君、次歌っていいですよ」

「俺はもういいかな。歌い過ぎて、喉枯れそうです」

「……そうですか?」

「鳰さん、どうぞ遠慮なく」

 鳰さんは若干焦りを見せたものの、じゃあ……と次の歌を入れて、マイクを持つ。この姿を見る限りじゃ、元々歌うことは好きなんだろうな。

 でも、楽しいな。付き合って初めてのクリスマスだから、と構えていたものの、これはこれで有りなのかも。

 俺は自分が思っていたよりも、型にはまったロマンチストであること最近気づきつつあり、それが少々恥ずかしかった。

 桃園と風上さんはまだ二人ともフリーで友達同士だが、今日は街で会うと言っていた。もしかしたら、この先もしかする……可能性もあるのかも。

 結局、三時間大学近くのカラオケ店で歌いきると、鳰さんはこれからどうしようか……と言い始め、ここで俺は、街のイルミネーションは諦めても、せめてもと近くのレストランを予約していたことを告げ、鳰さんはパァッと笑顔を見せた。

「奈古君、すごい。……予約してくれてたんですね」

「イブですしね。今、結構時間ギリギリなので、急ぎましょう」

 ハラリ、ハラリ、雪が降る中、いつものように手を繋いで、小走りでレストランへ急ぐ。

 以前、鳰さんは道路が広ければ広い程、俺から距離を取って歩いていたのに、もう別人のようだ。

 あの頃を懐かしみながら、握った手にギュッと力を込めて、足を踏み出す。

 今、ここに二人、一緒にいる。

 今、俺達は手を繋いでいる。

「急ぎましょう」

 笑顔の俺は鳰さんの手を引いて、お店ではやはり型にはまったような形でプレゼントを渡し、でも、鳰さんは微笑みを浮かべて包みを受け取ってくれた。

 アクセサリーなんて誰にも渡したことなく、我ながら結構戸惑って桃園に相談したり、沢山のお店を回って選んだことは、恥ずかしいから秘密にしておいてもいいな。






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