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最終章 『貴方と一緒に、踊りたい』
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しおりを挟む~三保にき~
季節はすっかり夏、八月。お盆休み前にと三日間の合宿が組まれ、私達は海辺の合宿場に来ていた。
九月にはまた大きな大会があり、宝君は鷲尾さんと出場するため、毎日練習に励んでいる。
ちょっとマネージャー化しそうな私だが、練習できなかった分は、こうして夜誰もいない体育館で二人で踊っている。
1、2、3、4、1、2、3、4……。
踊っているのはタンゴ、ほぼ宝君が振付を考えてくれたダンス。
バックコルテ、ファイブステップ、オープンプロムナード。
まだまだ宝君にリードされっぱなしだが、早く踊れるように頑張りたい。
ロックターンにプログレッシブリンク、ライトランジ。
1、2、3、4、1、2、3、4……。
“三保、ちょっと休憩しようか”
一頻り練習した後、私は宝君と気分転換にと外へと出た。
田舎の闇は深いが、その分星が綺麗。海辺へ出ると、夜風が頬を撫でる。
砂場に座って、暫く黙って二人星を眺めていると、キラッと流れ星が夜空を流れた。
パッと宝君の見ると、彼も私の方を見ている。
そしてゆっくり近付いてきた唇に目を瞑ると、ふっと、優しく振れた。
“宝君、流れ星だったね。見た?”
携帯の画面を見せると、宝君もすぐに返事をする。
“見た。三保と、これからもダンス頑張れますようにって、願ったよ”
“……私も同じ”
宝君に笑い返すと、暗闇の中でも彼が笑っているのが肌で伝わった。
社交ダンス部に入部したこと、宝君に出会えたこと、全てに感謝したい。
踏み出した一歩は大きくて、私はこれからも宝君と一緒に踊りたいと思っている。
できない、できないと決めつけないで、踏み出すことが怖くても、挑戦してみることの大切さを知ることができた。
私、これからも踊りたい。宝君と、踊れるようになりたい。
どちらかともなく握った手は温かく、顔を見合わせた私達は星降る夜の下、もう一度二人で笑い合った。
─了─
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