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第六章 『ずっとにきを想ってた』
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しおりを挟む“三保は、何で轟が部活辞めるって言ったか、知ってる?”
それは……私が宝君のことを好きで、翔馬曰く宝君も私のこと想ってくれていて、それで、同じ気持ちだから……とは言えず、口籠る。
“辞めたい理由は分からないけど、轟が部活を辞めるのは、勿体ないと思う”
“私も引き止めたいと思ったけれど、何て言っていいのか、分からなくて……”
“まだ退部届は出していないみたいだから、部長と会いに行ってみようって話してる”
私はもうこれ以上何もできなくて、後は宝君と部長に任せるしかないのか……。
“三保にとって、轟は大事な人だからね”
大丈夫だよ、と言って笑ってくれる宝君に、胸がキュッと切なくなる。
好きだと言いたいのに、まだ言えない。
暫く二人で話をしていたのだが、やがて発表がやって来たようで、宝君は立ち上がると私の腕を握って中に入った。
第三位から発表があり、呼ばれたペアは中央に出てきて頭を下げる。
ボヤボヤドラムロールのような音が響き、マイクで誰かの名前を呼ばれる。
そしたら、中年のおじさまとおばさまのペアが腕を組んで真ん中にやってきた。
次に、第二位……踊ったわけではないのに、ドキ、ドキ、と私の鼓動も早くなる。
再びマイクで誰かの名前が呼び上げられた後、まだ小学生のような小さな子供のペアが走りながら中央に出てきて、周りに手を振る。
──そして、第一位……。
どうか、どうか、うちの部のペアでありますよう。宝君と鷲尾さんでありますよう、願っていると……。
ドンッと音が響いた後に、隣にいた宝君が、鷲尾さんと手を取って真ん中へ出て行った。
や、やった! 優勝だ……!
今日は赤い色のミニドレスを身に纏った鷲尾さんが、とても嬉しそうに手を振ってくる。
あぁ、頑張ってたもんな。二人とも、部活が終わっても毎日の子って練習していたもんな。
自分のことのように嬉しくなって、私も大きな拍手を送った。
あんな風に、人前で自信をもって踊れるって凄いことだと思う。私ももっと沢山練習して、自信をつけて、今度は人前でも踊れるように頑張りたい。
各ペアのインタビューと、賞状・トロフィー授与が終わると、再び部員全員で体育館の端に集まった。
どうやら今度の発表の舞台は、二週間後に行われる街の産業祭に決まったらしい。
これからはそのお祭りに向けて練習をしよう、という話が終わって現地解散になると、部長が私の元へとやって来た。私の持っていたノートに文字を書くと、歯を見せて笑う。
“産業祭では、三保ちゃんも宝と踊ってもらうから”
えっ、私も……?
“頑張ってね”
文字の後にスマイルマークを描いた部長に、私も嬉しくて笑みが零れた。
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