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第三章 『翔馬の温かい眼差し』
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しおりを挟む練習終了後、夕暮れいつものように片付けを終え、まず舞子ちゃんを家に送り届ける。
そしてにきと二人なると、俺はそっとにきの手を握って歩き始めた。
一瞬ピクッと反応して、にきはこちらを見たが、そのままスルーして歩調を進める。
にきのことが好き。宝先輩とペアを組むと分かってから、独占欲が生まれ、ムシャクシャしている。今までにきに色恋沙汰など皆無だったからこそ、不安だった。
十分歩いてにきの家の前まで来ると、暫く小さなにきを見つめ、ゆっくり唇を重ねる。
今度も、振り払われなかった。だから、このままもう付き合おう……と手話で話すが、にきは眉を下げたまま、黙り込む。
『俺じゃ、ダメ?』
『好きって言ってもらえて、色々考えたんだけれど……まだ、実感なくて』
『俺はもう、子供じゃない』
だから、と言う俺に、にきは複雑な表情を変えないため、これ以上言っても無理かと一旦諦める。
にきは逃げるわけじゃなく、ずっとここにいるんだから、結果を急いで撃沈はしたくない。
『もう少し、時間がほしい』
『うん、そっか、分かった』
にきの頭をポンポン撫でると、俺ははぁーっと大きな溜め息をついて自宅に帰っていく。
部内で、顔も、実力もNo.1の宝先輩だからと、せかせか急いでしまうのはあれか。自分は自分のペースで頑張ろう。
──俺は、飾らず有りのままのにきが好きなんだから。
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